獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

中村哲医師の死を悼み心から哀悼の意を表します。

2019-12-07 21:41:40 | 国際・政治
今週、大変悲しいニュースが飛び込んできた。パキスタン北部とアフガニスタンで医療奉仕活動を行ってきた、中村哲医師がアフガニスタンのナンガルハル州の州都ジャララバードにテロリストに襲われて亡くなった。
今から30年ぐらい前であるが、私は中村先生のパキスタン北西辺境州ペシャワールでの医療奉仕活動の現地報告会を拝聴させて頂き、その場で講演会の主催であった熊本ペシャワール会に入会した。熊本ペシャワール会は、福岡市に本部があるペシャワール会とは別のグループで、熊本県在住の中村先生の活動を応援したい有志が集まってできた会であった。月に1回会合があり、普段の活動としては寄付を募ったり、バザーで得た収益金などをプールしたりして少しずつお金を貯め、中村先生が日本に帰国した時に合わせて催していた、中村先生の講演会でそのお金を中村先生に直接お渡していた。素人の有志が集めたお金など大した額でもないのだが、毎回中村先生から感謝して頂いた。
中村先生の講演会や中村先生から直接伺った話では、中村先生は、最初はハンセン氏病患者の治療と予防を目的として日本キリスト教団からペシャワールに派遣されたということであった。しかし、現地に赴いてみると医療活動をハンセン氏病患者だけに絞ることは無理で様々な病気やケガで診療所に来る患者は全て診ざるを得なかった。
また、診察の対象は当初はパキスタンの北西辺境州のペシャワールを中心とした一帯の住民であったが、当時、北西辺境州のアフガニスタンとの国境周辺にはソ連軍のアフガニスタン侵攻で発生したアフガンニスタン内戦から逃げてきた難民が最大時には300万人おり、彼らも医療活動の対象にしないとハンセン氏病の予防はできない、ということでアフガニスタン難民への医療活動も行うことになった。
中村先生は、ご自身が診療行為を行ってもやれることに限界があるため、現地の志ある人々への医学教育も並行して進められた。アフガニスタン難民の中には元医療関係者であった人々もおり、それらの人々を募って医療技術者の養成を行っていった。ソ連軍が撤退してアフガニスタンの内戦が終了すると、中村先生のもとで学んだアフガニスタン難民はアフガニスタンに戻って医療技術者としてアフガニスタンを復興させる、その活動に乞われて中村先生もアフガニスタンのダラエルール渓谷に活動の拠点を移した。これが、中村先生がアフガニスタンに深く関わることになった理由である。
中村先生の医療チームを襲撃したテロリストの一団に対して激しい怒りを感じる。一方でアフガニスタン人の大恩人を殺害する愚かさへの哀れみも感じてしまう。中村先生の講演の中でご自身の医療スタッフには以下に言葉を繰り返し伝えたそうである。
「誰かに何かされても決して仕返しをするな。仕返しをすると次は相手が仕返しにきて仕返しの応酬になり医療活動ができなくなる。そうなれば多くの患者が置き去りされてしまい不幸は患者に来る」
 今、この言葉を噛みしめたい。



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