獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

本末転倒の丸山穂高代議士へのパッシング

2019-05-19 09:36:23 | ロシアについて
 元日本維新の会所属(5月14日の党除名処分により現在無所属)の丸山穂高代議士が、今月10日からの北方4島交流事業、いわゆるビザなし交流で行われた元島民の国後島訪問に参加し懇親会で行った発言が大変な物議をかましている。多くの報道によると、懇親会の場で酔った丸山代議士は、今回の訪問団の団長に以下のように尋ねたとのことである。

  丸山穂高「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?」
      「ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか?」
  訪問団の団長 「戦争はするべきではない。戦争なんて言葉は使いたくない」
  丸山穂高「でも取り返せないですよね?」
      「戦争しないとどうしようもなくないですか?」
 以上を動画サイトでも確認したが、上の通りの会話だった。

 確かに、酒に酔っていたとはいえ丸山代議士の言葉はビザなし交流の場で行うべきではなかった。しかし、昭和31年(1956年)の日ソ共同宣言以降63年間、北方領土交渉に全くの進展がないことに対して苛立ち、丸山代議士はついこの発言をしてしまったのではないかと思う。その苛立ちは私も同様である。しかも、国後島、択捉島、色丹島及び歯舞群島の北方4島を取り返したければ武力で取り返しに来いと言ってきたのは元々ロシア側である。
 我国の北方領土について、「第2次世界大戦の結果として得た正当なロシア領である」とのロシア政府は旧ソ連時代から一貫して主張している。しかし、歴史の事実は以下の通りである。
 日本は昭和20年8月15日にポツダム宣言受諾を発表、千島方面軍には同年8月18日までに戦闘行為を停止するよう、命令を発した。そして、9月2日に戦艦ミズーリ号の艦上で降伏文書に署名している。一方、ソ連軍は日本軍の戦闘停止の8月18日を待って千島列島に侵攻し、8月29日から9月4日にかけて北方4島を軍事占領した。従って、日本のポツダム宣言受諾後、日本軍が抵抗できない時期にソ連軍は千島列島に軍事行動を起こしたのであり、北方4島への軍事進攻は明らかな侵略である。それを第2次大戦の正当な結果と言うのはロシアの横暴さ以外の何物でもない。このロシアの態度に対して、これまで一貫して外交交渉で北方領土の返還を求めているのが日本政府であり、この互いの姿勢の大きな違いが北方領土返還を全く進展させない最大の原因である。この絶望的な状況に憂いているのはなにも丸山代議士だけではないし、見方を変えると丸山代議士は北方領土返還を少しでも進展させたいと思っていたからこそ今年のビザなし交流に参加したのである。
 丸山代議士は、懇親会の翌日に懇親会での発言を撤回し、団長を含め今回の訪問団全員に謝罪している。しかし、現在、丸山代議士の発言を聞きつけたマスコミと丸山代議士を目障りとしていた野党議員が一緒になって丸山代議士に議員辞職を迫っている。しかし、領土は戦争によって決まると主張しているのは元々ロシア政府で、それを日本政府の立場にはない一議員が言っただけであり、そのことで丸山代議士に議員辞職をせまるのは余りにも大げさ過ぎるのではないか。この日本国内の異常さこそ北方領土返還交渉を進展させない最大の要因であり、日本が武力で北方4島を取り返そうとすることは絶対ないからロシア側は安心して今まで通りの姿勢を続ければ良く、時が過ぎていけばロシアの侵略行為もいつかは誰もが受け入れる、当たり前の事実に置き換わってしまうのである。丸山代議士に議員辞職を迫っているマスコミや野党議員こそ、実はロシアからの北方領土返還を妨害しようとする連中である。その証拠に丸山代議士に議員辞職を迫っている輩が、「北方4島は、第2次世界大戦の結果として得た正当なロシア領である」とのロシア側の主張に反論や非難したことは一度もない。
 今回の件は、丸山穂高という一代議士が、ビザなし交流の懇親会で酒に酔ってしまい、北方領土返還に対する熱い気持ちを不適切な言葉で言ってしまった、というそれだけのことである。この程度のことで優秀な国会議員を辞職させたら日本国にとっての大きな損失であり、ロシア側にとっては明らかな好都合である。国際法を無視したロシアによるクリミア併合で明らかになったように、仮にロシアの国会議員が武力による領土返還を主張したら、間違いなくその国会議員はロシア国内で圧倒的な支持を受ける、それがロシアである。そのロシアに好都合になるよう、丸山代議士に議員辞職をせまることは利敵行為以外の何物でもない。