獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

さて、どうなるか?北方領土交渉

2016-10-29 19:29:15 | 国際・政治
 この1、2カ月、北方領土交渉について新聞やテレビでやたら報道されている。それは、12月に日本の安倍首相とロシアのプーチン大統領が山口県で会談するため、その会談で北方領土問題が大きく進展することへの期待である。多くの記事は、最低でも歯舞群島と色丹島は日本に返還され、日本はその見返りとしてロシア極東への大規模の経済協力を行う。そして、日露の平和条約締結と向かう、というような内容である。はたしてそんなに上手く行くのだろうか。
 日露の領土問題となっている、国後島、択捉島、歯舞群島、色丹島について、日本は、「日本の固有領土で旧ソ連が不法に占拠したもの」とし、ロシアは、「第2次世界大戦の結果としてソ連が得た正統な領土」ということになっている。一見似たようなことを言っているようで実は全くかみ合っていない。と言うのは、日本にとっては、北方4島は本来日本に帰属するもの、ロシアは、領土問題自体が存在しない、という立場である。
 確かに、ソ連時代に比べればロシアは柔軟な対応をするようになっているが、公式の立場はソ連時代と殆ど変っていない。唯一の妥協点は、日露共に1956年の日ソ共同宣言は有効である、という認識である。すなわち、「日ソ間の平和条約締結後に歯舞群島と色丹島は日本に引き渡す」という合意は今でも生きている、ということだ。ただし、この合意を素直に読めば、平和条約締結が先で、歯舞群島と色丹島の返還はその後であり、今、新聞やテレビなどが言っている2島の先行返還というのは合意された交渉手順とも合っていない。
 一方で、日本の識者には、「ロシアは、2島を日本に返還してしまえばそれで終わりにする。北方4島は、日本が敗戦してからソ連軍が侵攻し占領したもの、明らかな国際法違反であり、日本は4島一括返還を要求するのが当然だ」という強い意見もある。
 領土問題と言うと、日本人としての心情からどうしても頭が熱くなりやすいため、少し別な観点から見てみたい。例えば、北方4島返還ははたして日本にとって本当必要なのであろうか。例えば、返還された場合、人が本土なみの生活を営むのに必要なインフラ整備には莫大は費用が必要で、仮にインフラ整備ができたとして北方4島に住みたいと思う日本人がいるであろうか。日本の本土である北海道でさえ、北方4島の対岸であるオホーツク海沿岸は大変な過疎地であり、それよりもっと不便な離島での生活を希望する日本人がいるとはとても思えない(極めて特殊な理由のために住む人はべつとして)。また、日本政府は、現在、北方4島に住むロシア人住民に対して、日本への返還後、希望すればそのまま住み続けても良いと言っており、インフラ整備しても日本人が住まないのであれば、ロシア人のためにインフラを整備しただけということになる。
 私は、ロシアとの友好は必要だと思うし、日本の安全保障、特に中国の脅威が非常に高まっている状況を考えると、日露間の平和条約締結は急ぐべきである。そして、日ソ共同宣言の手順に従って平和条約締結後の歯舞群島と色丹島の返還を実現する。その後、ロシアとの経済協力関係を強化し、また、互いの信頼関係を深めてから、国後島、択捉島の返還も実現するというスケジュールが一番現実的なものではないか、と素人ながら思うのである。