獣医師インディ・ヤスの冒険!

家畜伝染病と格闘する獣医師インディ・ヤスさんのブログです。インディ・ヤスさんはロシア・東欧のオタクでもあります。

新型コロナウイルス性肺炎、私にも一つ言わせて下さい。

2020-02-16 23:21:16 | 健康・病気
今年の年明けから問題になっている新型コロナウイルス感染症(いわゆる新型肺炎又は武漢肺炎)について、厚生労働省による第1回専門家会議が本日(令和2年2月16日)行われた。その会議内容について、加藤厚生労働大臣と本専門家会議座長の国立感染症研究所(以下、感染研)脇田所長との記者会見が行われ、それを YouTubeで見た。その要点は、これまでは本病ウイルスを国内にできるだけ入れこまないようにして国内での流行を防ぐように努めてきたが、国内での流行はすでに始まり現在はその初期段階である。これからは国内での流行をできるだけ抑えていく段階で、国民各位も自ら本病ウイルス感染を受けない、又は感染を拡げないように努めてほしい。そのためには、これまで推奨してきたこと(帰宅時の手洗いやうがい、風邪をひいた時のマスク着用など)に加えて、不特定多数の人の集まりにはできるだけ行かない、不要不急の集まりは避けてほしいということであった。また、本病ウイルスの伝染力は強いが、病原性はそれほど強くなく健常人の感染では軽症ですむ。ただし、高齢者や重い持病のある人(糖尿病、心臓病、透析患者など)が感染した場合は重症になりやすい。高リスクの人たちへの感染を防ぐこと、及び重症患者への治療を優先することに体制を整えていくとのことであった。
 対策については今の時期に感染しやすいインフルエンザや他の呼吸器ウイルス感染症への対策と同じであり、新型コロナウイルスに限った特別なものはない。ただし、重要なことは、新型コロナウイルス感染症が日本国内でこれから拡がっていくであろうと正式に認めたことである。従って、本病の早期診断法や有効な治療の確立、予防のためのワクチン開発が必須事項となった。ここで生きてくるのが、先月31日に感染研が国内の患者の呼吸器の材料から分離したウイルスである。 
 分離とは、患者や自然界に存在する病原体をそこから取り出して人の管理の下で増殖させるようにすることである。本病について言えば、日本が自前の新型ウイルスを確保したことで、日本は検査キットやワクチンの開発、治療法の研究を自由に進めていけるのである。もし、日本に自前のウイルスがなく、外国が分離したウイルスを譲ってもらって研究する場合には、その使用範囲に厳しい条件を付けられてしまい日本の研究開発に大きな障害になる。このように自らが分離した、ウイルスや他の病原体を持つことは日本の国益から非常に重要なのである。さすがは我国が誇る国立感染症研究所である。
 ところで、今回の新型コロナウイルス感染症の報道やインターネットの情報によると、患者の症状の程度について、中国と他の国々ではかなり大きな違いがあるようである。中国では、他の国の患者に比べて重症患者がはるかに多い。それを裏付けたのが1,100万人都市である武漢の封鎖である。この違いは何であろうか。私の専門分野である家畜伝染病では、農場の飼育状況や衛生環境の違い、他の病原体との混合感染の有無で、同じウイルスの感染であっても被害が殆どないものから経済的に大きなダメージを受けるものなど様々である。中国の医療や衛生環境が日本や他の先進国の水準に未だ達していないから中国では重症患者が多い言う人もいるが、それでは今回の新型コロナウイルス感染症も畜産農場での感染症と同じということになる。曲がりなりにも中国は世界第2位の経済大国であり、畜産農場で起こる現象とは違うのでないか。陰謀論のようで申し訳ないが、何か中国にしかない大きな要因があり、その情報が中国から出されていないのではないか。