<5人に1人の割合で感染を見逃すリスクが。症状がない人ほど誤判定のリスクが高いという>
新型コロナウイルスへの感染の有無を手軽に確認できるとして、簡易検査キット(抗原検査キット)への需要が高まっている。日本でも厚生労働省が8月17日、外来医療の負荷軽減を目的として、簡易検査キットのネット販売解禁を決めた。
ところがこの簡易検査キットについて、米食品医薬品局(FDA)は8月11日、精度に注意が必要だとする内容の安全情報文書(セーフティ・コミュニケーション)を公開した。単体の簡易検査で陰性の結果が出たとしても、実際に感染していないとは限らないようだ。
文書によると、家庭用の簡易検査キットで陰性の結果が得られたとしても、日にちをおいて2〜4回実施する必要があるという。繰り返し陰性となるまでは、偽陰性のおそれがあるためだ。偽陰性とは、実際には感染しているにもかかわらず、誤って陰性の結果が出ている状態を指す。
一方、陽性の判定が出た場合、ほぼ陽性と考えてよいとFDAは説明している。
最低でも2回行いたい簡易検査 キットは複数用意を
精度を上げるためFDAは、最低でも2回の簡易検査を推奨している。1回目の簡易検査で陰性となった場合、48時間後に2回目の検査を実施すべきだという。
2回目の診断で再び陰性となった場合も、まだ感染の可能性が高いと本人が感じるのであれば、再び48時間後に3回目の簡易検査または本格的なPCR検査を受けるよう勧めている。
3回目を簡易検査とし、結果が陰性であっても、新型コロナウイルスに曝露した可能性が高いと考えられる場合は、最大で4回目の簡易検査を実施するよう促している。
いずれの段階であっても、一度でもウイルスが検出され陽性判定となった場合、「おそらく新型コロナに感染している可能性が高い」とFDAは説明している。
このように複数回の検査が必要な場合があることからFDAは、家庭で検査を行う場合、あらかじめ複数の検査キットを用意しておくよう案内している。買い占めは論外だが、1回の使用のみで誤った結果に流されることのないよう、適切な数を用意したい。
BA.5系統でとくに高い偽陰性リスク
偽陰性が出るリスクは、とくにここ最近猛威を振るっているBA.5系統で高いようだ。米ロサンゼルス・タイムズ紙は、「誤った結果が出るリスクは、以前のものと比較すると、最近優勢のオミクロン株亜種であるBA.5に感染した人々のあいだでより高くなっているとみられる。専門家らがこのように指摘しており、追加検査の重要性を改めて示唆している」と指摘している。
同紙によると研究室での解析を必要とするPCRテストは、結果が出るまでに丸1日以上を要するが、95%という高い検出精度を誇る。対照的に、家庭用の簡易検査は15分程度で結果が出る手軽さが利点だが、精度は最低で80%となっている。
厳密には偽陽性と偽陰性のリスクを別に考える必要があるものの、あくまで単純に考えた場合、1回きりのテストでは5人に1人の割合で感染が見逃されてしまう計算となる。
FDAは文書を通じ、「症状の有無にかかわらず、いかなる家庭用新型コロナ検査においても、陰性の結果が出た場合、繰り返しまたは連続して検査を実施してください」と呼びかけている。偽陰性により感染が見逃されるリスクを低減し、無意識のうちにほかの人々へと感染を広げるのを防ぐねらいがあるという。
無症状かつ陰性のときこそ、2回目の検査を
FDAは、1回目の簡易検査時に症状を呈していなかった人こそ、2回目の簡易検査を積極的に実施するべきだと説明している。症状もなく、さらに検査でも1度陰性となれば、安心してしまうのが人情だ。だが、それがかえって油断につながる模様だ。
家庭用の簡易検査は、新型コロナウイルス感染症の原因となるSARS-CoV-2ウイルスから、抗原と呼ばれる特定のタンパク質を検出する。しかし、ウイルスへの曝露の直後であり、まだ無症が出ていない段階では、抗原が検出されない可能性が比較的高まるという。このため無症状かつ陰性だったときは、なおのこと2回目の検査を実施するよう推奨されている。
もちろん今回の安全情報は、簡易検査を避けるべきだという趣旨のものではない。FDAは、新型コロナの検査が「依然として我が国における新型コロナとの闘いの拠り所です」と述べている。家庭用検査についても、「完全ではないものの、迅速で手軽な検査の選択肢になっている」として意義を評価している。
日本においてもネット通販の解禁により、手軽に行える簡易検査が普及するとみられる。精度の限界を正しく理解して、検査結果を適切に捉えたい。
コロナ簡易検査キット、2〜4回実施しないと陰性の確証得られない...米FDAが警告
<5人に1人の割合で感染を見逃すリスクが。症状がない人ほど誤判定のリスクが高いと...
Newsweek日本版