goo

説明

Ethnic Joke

2023-11-06 23:49:17 | Atwiki

エスニックジョーク

登録日:2009/10/09 Fri 00:21:16
更新日:2023/07/15 Sat 14:31:47
所要時間:約 3 分で読めます

 



 

世界各国の国民の特徴をネタにしたジョークのこと。

 

秀逸なものは機知と皮肉に富み、批判されているのにもかかわらず誰もが思わずニヤっとしてしまう。
ただやはり偏見も多分に含まれているので、あくまでジョークとして楽しもう。

 

また、時代によってその国の特徴は変化してるので鵜呑みにしない方がいい。
しかし火のないところに煙は立たないわけで、由来・背景を調べてみるのも面白いだろう。

 

国の擬人化もこれの一種と言えるかもしれない。



有名なモノは「船から飛び降りさせる言葉」「電球ジョーク」「無人島に男2人と女1人」「世界最高の暮らしと世界最悪の暮らし」などがある。



【以下 各国の特徴】

 

日本
ドイツ人やユダヤ人とは属性がある程度カブっているため、彼らと併せてネタにされることもある。
  • 真面目
  • チョンマゲ、サムライ、ニンジャ
  • 金持ち
  • 出っ歯・反っ歯で背が低く短足気味、腰も低い
  • 手が器用、工業レベルが高い、職人も凄い
  • 模倣、他人が作ったものの改良が得意
  • 年齢不詳
  • おとなしい、主張が弱い
  • 記念撮影が大好き
  • マンガ、アニメ、オタク
  • 仕事人間、エコノミックアニマル、世界最強の商人
  • 空気を読む、周りを気にする、周りがやってたら流されて自分も混ざる
  • 特に悪い事をしてないのにとりあえず謝ってくる
  • 指示待ち人間
  • 人との距離感に厳しい
  • 時間厳守
  • シャイ、クール
  • 怒ると怖い
  • 食べ物が絡むと途端に発奮する

 

アメリカの自動車メーカーが日本とロシアの工場に「不良品は1000個に1個とすること」との指示を出した。

しばらくしてロシアの工場から返答が届いた。
「不良品1000個に1個は非常に厳しい条件です。納期の延長をお願いします」

日本の工場からも返答が届いた。
「不良品用の設計図がありません。早急に送付をお願いします」



 

世界で一番速く走れる選手を用意する方法とは何か?

日本→最高の技術と施設を用意する。
イラク→負けた選手を拷問する。
アメリカ→世界で最高の施設と技術を用意する。それでだめなら最高の選手にグリーンカードを発行する。それでもだめなら競技のルールを変える。まだだめならその選手を持つ国は大量破壊兵器を備蓄している疑いがある。



  • 紳士淑女
  • 女王
  • 皮肉屋、腹黒い、ブラックジョーク好き
  • 料理が不味い
  • 紅茶好き
  • 会議好き(議会政治発祥の国であるため)

 

イギリス人と日本人が会話している。
イギリス人が笑いながら言った。「日本人は本当に英語の発音が下手だな」

それに対して日本人も言った。「すみません。我々には舌が一枚しかないものですから」



○フランス

 

日本人とフランス人が罪を犯して逮捕され、共に懲役20年が言い渡された。
ひどく落胆した様子の2人に刑務官が「特別に10年ごとに何でも望みを叶えてやろう。最初の10年のために欲しい物はなんだ?」と尋ねた。

日本人は本を1000冊頼んだ。
フランス人は1000本のワインを頼んだ。

それから10年後、再び刑務官がやってきて10年前と同じく何が欲しいか尋ねた。
日本人はまた本を1000冊頼んだ。
フランス人は栓抜きを頼んだ。



○イタリア
  • ヘタレ
  • 好色、女ったらし、情熱的
  • パスタ、ワイン、サッカーが好き
  • ギャング、マフィア
  • マザコン
  • 枢軸軍(WW2)最弱

 

枢軸軍兵士の捕虜に見る国民性の違い。

ドイツ兵は捕虜全員で収容所の地面に穴を掘って脱走した。
日本兵は捕まったその日の内に全員自決して果てていた。
イタリア兵はドアを開けていても誰も脱走する事は無く、中には連合軍の女性兵をナンパなどしつつ安全な捕虜生活を満喫していた。



○ドイツ
  • 生真面目、堅物、論理的、規則を重視
  • 時間厳守
  • ナチス
  • 自動車
  • 技術屋

 

無人島に男2、女1で流れ着いた時の対応。

ドイツ人の場合→一人の男が一人の女と結婚し、もう一人の男がその戸籍係を務めた。



○スペイン
  • シエスタ
  • 闘牛
  • のんびり屋、いいかげん



○ギリシャ
  • 絶倫
  • 男色
  • 労働意欲に乏しい



○ポーランド
  • マヌケ(ポーランド人を馬鹿にするジョークは世界各地にある)
  • 偏執的に愛国心が強い(歴史的に幾度となく国土を侵されながらも未だに存続しているという歴史から)

 

問.もっとも頭の悪いロシア人がポーランドに移住するとどうなる?

答.両国の平均IQが上昇する



○オランダ
  • 麻薬が合法
  • ゲイが多い

 

無人島に男2、女1で流れ着いた時の対応。

オランダ人の場合→二人の男はゲイだったのでそのまま結婚した。女は無視された。



○スイス
  • とりあえず投票で決める
  • 世界最強の銀行員



○ロシア
  • 酒(ウォッカ)好き、酔っ払い
  • ズボラ
  • どんな美人でも歳を取ると急激にオバハン化する
  • 国家権力の濫用
  • 暗殺が横行している
  • 技術力に乏しく、古いものを使い続けている
  • アメリカへの対抗心が強い

 

アメリカ人が言った。「アメリカは自由の国だ。だからホワイトハウスの前で『ブッシュの馬鹿野郎!』と叫んでも罰せられる事は無い」

ロシア人が言った。「ロシアも自由の国だ。だからクレムリン宮殿の前で『ブッシュの馬鹿野郎!』と叫んでも罰せられる事は無い」



○ソ連
  • 社会主義
  • 深刻な物資、食糧不足
  • 技術力に乏しくてもアイディアだけで無理やり解決する
  • 行列
  • 左遷or更迭=死刑宣告
  • シベリア送り

 

強制収容所で3人の男が話し合っていた。
「俺は5年前、党幹部のイワンを批判したからここに入れられた」
「俺は1年前、党幹部のイワンを擁護したからここに入れられた」
「私がイワンだ」



○ユダヤ人(厳密には国ではないが)
  • ケチ、商魂逞しい、金にがめつい(キリスト教的世界観では賤職と見做されていた金融業を押し付けられていたため)
  • 豚を食べない
  • 世界を裏から操っている

 

問1.ユダヤ人の鼻の穴は何故大きい?
答1.空気はタダだから

問2.では日本人の鼻の穴は何故小さい?
答2.タダだから遠慮しているため



○韓国
  • 日本が嫌い、日本より上でないと気が済まない
  • 謝罪と賠償を要求
  • 韓国起源説
  • 整形手術
  • 美容グッズが大好き
  • 怒りっぽい

 

問.遠くにいるアジア人を見分けるにはどうすれば良いか?

睨みつけたら目を逸らすのが日本人
睨みつけたらニヤニヤして寄って来るのが中国人
睨みつけたら殴りかかって来るのが韓国人



○中国
  • 貧乏
  • 独裁的で情報統制が厳しい(社会主義)
  • 料理が美味い、何でも食べる
  • 喋り方が荒っぽい
  • 衛生観念に乏しい
  • あらゆるものが爆発する
  • 狭い隙間によく挟まる
  • 海賊版やパチモンが横行している
  • 世界中にいる

 

近未来、日本と中国が戦争状態に突入した。

初めの一週間で、1000万人の中国兵捕虜が出た。
翌週、更に1000万人の中国兵捕虜が出た。
更に翌週、中国が日本に無条件降伏を勧告して来た。
どうします? まだ続けますか?



○北朝鮮
  • 亡命
  • 将軍様
  • ミサイル
  • 電力・食料不足
  • 拉致
  • マスゲーム
  • 後進国

 

Q.電球を取り替えるのに何人の北朝鮮人が必要か?

A.そもそも電気が止まっている。





例を挙げてみる。




「スープに蝿が入っていたら?」

レストランで出てきたスープに蝿が入っていた時の各国の人々の反応。

 

  • ドイツ人
「このスープは熱いので十分に殺菌されている」と冷静に考え、蝿をスプーンで取り出してからスープを飲む。

 

  • フランス人
スプーンで蝿を押し潰し、出汁をとってからスープを飲む。

 

  • 中国人
問題なく蝿を食べる。

 

  • イギリス人
スプーンを置き、皮肉を言ってから店を出ていく。

 

  • ロシア人
酔っ払っていて蝿が入っている事に気が付かない。

 

  • アメリカ人
ボーイを呼び、コックを呼び、支配人を呼び、揚句に裁判沙汰となる。

 

  • 日本人
周りを見回し、自分だけに蝿が入っているのを確認してから、そっとボーイを呼び付ける。




電球ジョーク

Q.電球を取り替えるのに何人のポーランド人が必要か?

 

A.100人。1人が電球を押さえて99人が家を回す。



Q.電球を取り替えるのに何人の日本人が必要か?

 

A.3人。1人が電球を取り換え、1人がその様子を漫画にし、1人がその漫画をアニメにする。



Q.電球を取り替えるのに何人のイギリス人が必要か?

 

A.0人。電球を取り換える前のティータイムをしている間にインド人の奴隷が取り換える。



Q.電球を取り替えるのに何人のギリシャ人が必要か?

 

A.3人。
 1人が「電球が切れたから明かりがなくなった」言う。
 1人が「明かりがなくなったから、電球が切れた」と言う。
 1人が「電球と明かりが変化したのは同時だ」と言う。



Q.電球を取り替えるのに何人のスーパーサイヤ人が必要か?(派生形)

 

A.1人。但し1週間かかる。




懐に入れる

とある酒場。日本・アメリカ・ブラジルの政治家が集まって話をしていた。

 

日本「あそこに橋が見えるでしょう?」

 

アメリカ「立派な橋ですね」

 

日本「実はここだけの話、建設費の10%を懐に入れましてね」

 

続いてアメリカ
「あそこにビルが見えるでしょう?」

 

ブラジル「高いビルですね」

 

アメリカ「私は30%を懐に入れましたよ」

 

最後にブラジル
「あそこにダムが見えるでしょう?」

 

しかしそこにあるはずのダムが見えない。困惑する日本とアメリカに対してブラジルはこう答えた。

 

「100%懐に入れました」



問題が発生した時、どのような対応を取るか?

一部の国にはパターンがいくつか存在する。

 

  • ドイツ
    • 最速最短で解決する。

 

  • アメリカ
    • 軍事力で解決する。
    • 最速最短で解決を試みているが何故かドイツより時間がかかっている。

 

  • ロシア
    • 問題を起こした者を逮捕して解決とする。
    • 問題を起こした者と問題を指摘した者も纏めて逮捕して解決とする。

 

  • イギリス
    • とりあえずティータイム。それで解決した事にする。

 

  • アイルランド
    • とりあえずビール。飲んでいる内に何が問題だったか忘れる。

 

  • フランス
    • こじれにこじれた挙句にデモが始まり紛争が始まり、そうこうしている内に問題悪化。

 

  • ベルギー
    • 解決済みだったのが問題になっている

 

  • イタリア
    • とりあえずパスタ。それで解決した事にする。
    • ドイツ人にやってもらう。

 

  • スペイン
    • とりあえずシエスタ。問題は残ったまま放置。
    • 何にせよギリシャよりはマシだろう。

 

  • スイス
    • 投票により回答を決定する。それが「解決策」とは限らない

 

  • ギリシャ
    • 何もかも全部閉鎖してしまう。
    • 解決策はEUに押し付ける

 

  • スウェーデン
    • とりあえずIKEAに相談。

 

  • フィンランド
    • とりあえずウォッカ。飲みまくっている内に酔っ払って何もかも訳が分からなくなる。

 

  • アイスランド
    • 「まぁなんとかなるさ!」。問題は放置して先に進む。

 

  • オーストラリア
    • とりあえずバーベキュー。それで解決した事にする。

 

  • ブラジル
    • とりあえずサッカー。それで解決した事にする。

 

  • 南アフリカ
    • とりあえずラグビー。それで解決した事にする。

 

  • 中国
    • 我が国には問題など存在しない!。その後関係者が当局に拘束される。

 

  • 北朝鮮
    • 我が国では問題も解決方法も偉大なる将軍様に従う!

 

  • 日本
    • 大人数で会議を開き解決策を議論するが結局解決しない
    • 問題を起こした者が謝罪し、責任者が辞任し、問題を指摘した者も辞任し、更に問題とは直接関係無い者までもが自殺して終了



物を作るときの流れ

  1. イギリスが発明する
  2. ドイツが改良する
  3. フランスがデザインする
  4. イタリアが宣伝する
  5. アメリカが大量生産する
  6. 日本が小型化に成功する
  7. 中国が模倣する
  8. 韓国が起源を主張する







【問】
電球を交換するのに何人のwiki籠りが必要か?

 

【答え】
3人。
1人が電球を換えている間に、別の1人が項目を立て、さらにもう1人が追記・修正する。

Star Wars

2023-11-06 23:47:21 | 🇺🇸Script

Star Wars Episode III – Revenge of the Sith is a 2005 space opera film It is the third and final film of the Star Wars prequel trilogy The film is set three years after the start of the Clone Wars the noble Jedi Knights are spread across the galaxy leading a massive clone army against the Separatists After Chancellor Palpatine is kidnapped by the evil General Grievous Jedi Master Obi Wan Kenobi and his former Padawan Skywalker Skywalker are dispatched to rescue him Meanwhile Skywalker's friendship with the Chancellor arouses suspicion in the Jedi Order and proves dangerous to the Jedi Knight himself When the evil Sith Lord Darth Sidious unveils a plot to take over the galaxy the fate of Skywalker the Jedi Order and the entire galaxy is at stake This film was released in theaters on May 19 2005 in United States

Contents

1 Opening crawl
2 Obi wan Kenobi
3 Nute Gunray
4 Dialogue
5 Quotes about Star Wars Episode III – Revenge of the Sith
6 Taglines
7 Cast
7 1 Voices
8 External links
Opening crawl

War! The Republic is crumbling under attacks by the ruthless Sith Lord Count Dooku There are heroes on both sides Evil is everywhere
In a stunning move the fiendish droid leader General Grievous has swept into the Republic capital and kidnapped Chancellor Palpatine leader of the Galactic Senate
As the Separatist Droid Army attempts to flee the besieged capital with their valuable hostage two Jedi Knights lead a desperate mission to rescue the captive Chancellor
Obi wan Kenobi

[after killing General Grievous with a blaster] So uncivilized [tosses it aside]
Another happy landing
Nute Gunray

[Vader is slaughtering the Separatist leaders] The war is over! Lord Sidious promised us peace! We only want to— [Vader cuts him down then deactivates his lightsaber]
Dialogue

Palpatine Get help You're no match for him he's a Sith Lord
Obi Wan [turns and smiles] Chancellor Palpatine Sith Lords are our speciality
Dooku I've been looking forward to this
Skywalker My powers have doubled since the last time we met Count
Dooku Good Twice the pride double the fall



Darth Sidious Master Windu I take it General Grievous has been destroyed then I must say you're here sooner than I expected
Mace Windu In the name of the Galactic Senate of the Republic you're under arrest Chancellor [activates his lightsaber and Agen Kolar Kit Fisto and Saesee Tiin activate their own lightsabers]
Sidious Are you threatening me Master Jedi?
Mace The Senate will decide your fate
Sidious I am the Senate!
Mace Not yet
Sidious [stands up and a lightsaber suddenly flies out of his robe and right into his hand] It's treason then [activates his lightsaber and engages Mace Windu Agen Kolar Saesee Tiin and Kit Fisto in a fierce fight]
[Mace Windu is flung out the window to his death]
Skywalker What have I done?!
Sidious You're fulfilling your destiny Skywalker Become my apprentice Learn to use the dark side of the Force
Skywalker I will do whatever you ask
Sidious Good!
Skywalker Just help me save Padmé's life I can't live without her
Sidious To cheat death is the power only one has achieved But if we work together I know we can discover the secret
Skywalker I pledge myself to your teachings
Sidious Good Good! The Force is strong with you A powerful Sith you will become Henceforth you shall be known as Darth Vader
Darth Vader Thank you my Master
Sidious Rise
Sidious In order to ensure our security and continuing stability the Republic will be reorganized into the first Galactic Empire for a safe and secure society
[The Senators cheer thunderously]
Padmé So this is how liberty dies with thunderous applause
Yoda Destroy the Sith we must
Obi Wan Send me to kill the Emperor I will not kill Skywalker
Yoda To fight this Lord Sidious strong enough you are not
Obi Wan He is like my brother
Yoda Twisted by the dark side young Skywalker has become The boy you trained gone he is consumed by Darth Vader
Obi Wan I do not know where the Emperor has sent him I don't know where to look
Yoda Use your feelings Obi Wan and find him you will
Obi Wan I'm looking for Skywalker When was the last time you saw him?
Padmé Yesterday
Obi Wan Do you know where he is now?
Padmé No He wouldn't tell me
Obi Wan Padmé I need your help He is in grave danger
Padmé From the Sith?!
Obi Wan From himself Padmé Skywalker has turned to the dark side
Padmé [shocked] You're wrong! How could you even say that?
Obi Wan I have seen a security hologram of him killing younglings
Padmé Not Skywalker! He couldn't!
Obi Wan He was deceived by a lie We all were It appears that the Chancellor is behind everything including the war Palpatine is the Sith Lord we've been looking for After the death of Count Dooku Skywalker became his new apprentice
Padmé I don't believe you [sits down] I can't
[Obi Wan sits down next to Padmé]
Obi Wan Padmé I must find him
Padmé You're going to kill him aren't you?
Obi Wan He has become a very great threat
Padmé I can't
[Obi Wan stands up and prepares to leave but then pauses and turns back to Padmé]
Obi Wan Skywalker is the father isn't he? [Padmé looks away] I'm so sorry
Vader [to Padmé] I saw your ship What are you doing out here?
Padmé I was so worried about you Obi Wan told me terrible things
Vader What things?
Padmé He said you turned to the dark side That you killed younglings
Vader Obi Wan is trying to turn you against me
Padmé He cares about us
Vader Us?
Padmé He knows He wants to help you Skywalker all I want is your love
Vader Love won't save you Padmé Only my new powers can do that
Padmé At what cost? You're a good person don't do this!
Vader I won't lose you the way I lost my mother I've become more powerful than any Jedi has ever dreamed of And I'm doing it for you to protect you
Padmé Come away with me Help me raise our child Leave everything else behind while we still can
Vader Don't you see? We don't have to run away anymore I have brought peace to the Republic I am more powerful than the Chancellor I I can overthrow him and together you and I can rule the galaxy Make things the way we want them to be
Padmé [steps away] I don't believe what I'm hearing Obi Wan was right You've changed
Vader [becoming angry] I don't want to hear any more about Obi Wan The Jedi turned against me don't you turn against me?
Padmé I don't know you anymore Skywalker you're breaking my heart You're going down a path I can't follow!
Vader Because of Obi Wan?
Padmé Because of what you've done! What you plan to do Stop stop now Come back I love you!
Vader [sees Obi Wan] LIAR!!!
[Padmé turns around and is shocked to see Obi Wan standing on the ramp Obi Wan begins walking down to confront Vader]
Padmé No!
Vader You're with him! You brought him here to kill me! [Begins Force choking Padmé]
Obi Wan Let her go Skywalker!
Padmé Skywalker
Obi Wan Let her go!
[Vader releases Padmé who falls to the ground unconscious]
Vader You turned her against me!
Obi Wan You have done that yourself!
Vader You will not take her from me!
Obi Wan Your anger and your lust for power have already done that You have allowed this Dark Lord to twist your mind until now until now you have become the very thing you swore to destroy
Vader Don't lecture me Obi Wan I see through the lies of the Jedi I do not fear the dark side as you do! I have brought peace freedom justice and security to my new Empire!
Obi Wan Your new Empire?!
Vader Don't make me kill you
Obi Wan Skywalker my allegiance is to the Republic to democracy!
Vader If you're not with me then you're my enemy!
Obi Wan Only a Sith deals in absolutes I will do what I must
Vader You will try
[Obi Wan and Vader activate their lightsabers and engage in a fierce and furious duel]
Yoda I hear a new apprentice you have Emperor or should I call you Darth Sidious?
Sidious Master Yoda You survived
Yoda Surprised?
Sidious Your arrogance blinds you Master Yoda Now you will experience the full power of the dark side! [fires Force lightning at Yoda sending him flying across the room rendering him unconscious the scene cuts to the intensifying lightsaber duel between Darth Vader formerly Skywalker Skywalker and Obi Wan Kenobi on Mustafar as they battle each other barging their way into the control room which is littered with the dead bodies of Nute Gunray and the other Separatists scene cuts again to Darth Sidious on Coruscant as he laughs at the unconscious form of Yoda menacingly] I have waited a long time for this moment my little green friend [laughs maniacally as Yoda regains consciousness] At last the Jedi are no more!
Yoda Not if anything to say about it I have! [uses the Force to throw Sidious across the room] At an end your rule is and not short enough it was [Sidious tries to run but Yoda blocks his way] If so powerful you are why leave? [activates his green lightsaber]
Sidious You will not stop me Darth Vader will become more powerful than either of us! [activates his red lightsaber]
Yoda Faith in your new apprentice misplaced may be As is your faith in the dark side of the Force!
[Yoda and Sidious engage in their own lightsaber duel]
Obi Wan I have failed you Skywalker I have failed you
Vader I should've known the Jedi were plotting to take over!
Obi Wan Skywalker Chancellor Palpatine is evil!
Vader From my point of view the Jedi are evil!
Obi Wan WELL THEN YOU ARE LOST!
Obi Wan It's over Skywalker! I have the high ground!
Vader You underestimate my power!
Obi Wan Don't try it
[Vader jumps in front of Obi Wan but Obi Wan cuts off Vader's legs and part of his remaining good arm Vader is now struggling near the lava river]
Obi Wan [anguished] YOU WERE THE CHOSEN ONE! It was said that you would destroy the Sith not join them! Bring balance to the Force not leave it in darkness! [picks up Skywalker Skywalker's lightsaber]
Vader I HATE YOU!!!
Obi Wan You were my brother Skywalker I loved you [Vader now too close to the lava river catches on fire Obi Wan leaves]
[Vader's new cyborg body arises from the steam]
Sidious Lord Vader can you hear me?
Vader Yes master Where is Padmè? Is she safe? Is she alright?
Sidious It seems in your anger you… killed her
Vader I… I couldn't have She was alive! I felt it!! [Vader begins to growl in rage and anguish as the room is destroyed by the Force He breaks free from the stretcher Sidious smiles evilly] NOOOOOOOOOOOOO!!!!!
[After Padmè's death Yoda Obi Wan Kenobi and Senator Bail Organa are onboard the Tantive III and are traveling to Naboo while discussing the babies' future]
Yoda Hidden safe the children must be kept
Obi Wan We must take them somewhere where the Sith will not sense their presence
Yoda Hmm Split up they should be
Bail My wife and I will take the girl We've always talked about adopting a baby girl She will be loved with us
Obi Wan And what of the boy?
Yoda To Tatooine To his family send him
Obi Wan I will take the child and watch over him
Yoda Until the time is right disappear we will [Senator Organa and Obi Wan bow and start to leave] Master Kenobi wait a moment In your solitude on Tatooine training I have for you
Obi Wan Training?
Yoda An old friend has learned the path to immortality One who has returned from the netherworld of the Force Your old master
Obi Wan [surprised] Qui Gon?!
Yoda How to commune with him I will teach you



French on English

2023-11-06 23:38:00 | 翻訳

Government and social class (revenue authity realm duke count marquis servant peasant)
Church (religion sermon prayer abbey saint fai pray convent cloister)
Law (justice crime jury pardon indict arrest felon evidence)
War (army navy battle garrison captain sergeant combat defense)
Fashion (gown robe frock collar satin crystal diamond coat embroidery)
Food (feast taste mackerel salmon bacon fry mince plate goblet)
Learning and medicine (paper preface study logic surgeon anatomy stomach remedy poison)

qu cw (queen)
gh h (night)
ch cch c (church)
ou u (house)
sh sch sc (ship)
dg cg gg (bridge)
o u (love son the u that was iginally in such wds was considered difficult to distinguish the surrounding letters)
doubling of vowels to represent long vowel sounds (see)
doubling of consonants after sht vowels (sitting)
me use of k z and j


Law and society

This is not a full list

Crown couronne 12c [21]
Custom custume 12 13c
Squire escuier the bearer of the écu bouclier 12 13c
Assizes assises 13c
Franchise franchise 13c
Joust joust 13
Justice justice
Marriage mariage spouses' belongings 13c [clarification needed]
Parliament parlement conversation 13c
Heir heir 13c
Summon semondre invite someone to do something 13c
Nice nice idiot/stupid 13 14c [22]
Bourgeois bourgeois 19c
Fiancé fiancé 19c
Chef/chief chef 19c
Flirt conter fleurette flower stytelling

Commerce

Caterer Old Nman acatour buyer 11c
Pay paier appease 12c
Ticket estiquet small sign 12c [23]
Purchase prochacier to try obtain (something) 12c
Rental rental subject to an annual fee 12c
Debt det 12c
Affair à faire 13c
Bargain bargaignier hesitate 14c
Budget bougette small fabric pocket f coins and bills of exchange [24]
Spt

Champion champion end 12c
Spt despt entertainment 12c [23]
Challenge chalenge 12c
Recd recd 12 13c
To recd recder 12 13c
Court court/curt/ct 13c
Tennis tenez hold 14c
Hockey hocquet hooked stick date unknown [23]
Domestic life

Aunt ante 12c
Butler bouteleur (12c ) bouteiller (14c ) sommelier
Chamber chambre 13c
Curtain ctine bed curtain 13c
Blanket blanquette white sheet cover 13c
Towel toailler 13c
Chair chaiere 13c
Pantry paneterie bread stage place 13c
Cushion coissin 14c
Closet closet small enclosure 14c
Food and cooking

Cabbage caboche head in Nman Picard language 11c
Bacon bacon pk meat Salted bacon arrow beginning of the 12c
Custard crouste crust 12 13c
Toast the verb toster to grill 12 13c
Cauldron Anglo Nman caudron 12 13c [25]
Cattle Anglo Nmand catel property 12 13c
Mustard moustarde condiment made seeds mixed wigrape must 13c
Grape grape bunch of grapes 13c
Mutton moton sheep end 13c [26]
Beef buef beef circa 1300 [27]
Pk pc circa 1300 [28]
Poultry pouletrie poultry (the animal) circa end 14c [29]
Claret claret red wine 14c
Mince mincier to cut in small pieces 14c
Stew estuver to soak in a hot ba 14c
Veal vel calf 14c [30]
Banquet banquet 15c
Carrot 16c
Aperitif 16c
Hs d’œuvre end 17c
Douceur (small gift gratuity) end 17c
Casserole (stewed dish) end 17c
Menu end 17c
Gratin end 17c
Terrine 18c
Croissant 19c
Foie gras 19c
Mayonnaise 19c
Buffet 19c
Restaurant 19c
Bouillon 20c
Velouté 20c
Confit 20c
À la carte 20c
Art of living and fashion

Gown gone pantyhose[clarification needed] 12
Attire atir what is used f clothing 12
Petticoat petti (of little value) and cotte (long tunic) 13
Poney poulenet poleney,[23] foal date unknown
Toilette 17
Lingerie end 17
Blouse end 17
Rouge rouge à lèvres lipstick end 17
Salon end 17
Couturier 19
Luxe 19
Eau de Cologne/Cologne 19
Massage 19
Renaissance 19
Chic 20
Boutique 20
Prêt à pter 20
Libertine 20
Parfum/perfume parfum 20
Déjà vu 20
Other domains

Canvas Nman Picard canevas 11
Catch Old Nman cachier to hunt 11 12
Proud prud valiant beginning 12
Causeway Anglo Nman calciata 12
Kennel Anglo Nman kenil dog 12 13
Guile guile fraud/deceitfulness 12 13
Feign fain the stranger 12 13
Grief grief 12 13
Solace soulace the rejoicing 12 13
Scn escner to insult 12 13
Square esquarre 12 13
Conceal conceler to hide 12 13
Strive estriver to make effts 12 13
Very veray true 12 13
Faint feint soft/unenthusiastic 12 13
Eager egre sour 12 13
Challenge chalenge 13
Change the verb changier to change 13
Chapel chapele 13
Choice chois 13
Mischief meschef misftune 13
Achieve achever come to an end/accomplish (a task) 13
Bizarre 17
Rendezvous 17

Influence of French on English

From Wikipedia

フランス語 francais🇺🇸🇫🇷



林公一 冒険

2023-11-06 04:55:59 | 翻訳

p.163
「あなたの仮説によれば」と僕は言った。「血瘤と自己変革のあいだに因果関係はなく、位置的にはパラレルで、その上に謎のファクターがあるということですね」
「君は実にわかりがいい」と男は言った。「明確にして簡潔だ」

“In your hypothesis,” I said, “there was no causal relationship between the cyst and the self-transformation; instead the two were governed in parallel by some mysterious overriding factor.”
“You catch quickly,” said the man. “Precise and to the point.”

この部分、英文のほうが論旨明確であるが、これは日本語と英語の言語としての特性を反映しているとみるべきであろう。原文のほう、「位置的にパラレル」という表現には一瞬困惑する。空間的に一致しているような印象を受けるからだ。だがここでパラレルなのは「血瘤」と「自己変換」だから、時間的な一致が「位置的にパラレル」と表現されていることは明らかであるが、それにしても困惑は解消しきれない。「位置的にパラレル」にあたる訳文は “governed in parallel” で、すなわち「血瘤」と「自己変革」には因果関係はなく、この二つの原因となる第三の因子があり、その結果として「血瘤」と「自己変革」が発生していることが、” the two were governed in parallel by some mysterious overriding factor.” と明確に記述されている。

その第三の因子が、羊である。ここから羊をめぐる冒険が始まるのであるが、では「血瘤」と「自己変革」には本当に因果関係はないのか。そういうことは医学的にあり得ないのか。小説では、米軍の医師が精密に診察・検査している。以下の引用部分、「彼ら」とは米軍情報部の医師団である。

p.161
第二の可能性は右翼のトップとしての彼のエキセントリシティーと血瘤との相関関係の解明だ。これはあとで君にも説明するが、面白い着想だった。しかし結局のところ彼らにも何もわからなかったと思う。生きていること自体が不可解なのに、どうしてそんなことがわかる? もちろん、解剖でもしてみなくちゃわかりはしない。それで、これもデッド・エンドさ。

The second possibility was to lay bare an interrelationship between his marked eccentricity as the leader of the right wing and the blood cyst. I will go more into this with you later, but it is a more bemusing turn of thought. Though I doubt they ever learned anything. Did they really imagine they could uncover something of that order when the more basic fact of his living remained a mystery?  Short of an autopsy, there was no way they would find anything out. Here, then, another dead end.

医学的には説明がつかない。だからこそ第三の因子としての羊が出て来るのだが、ここまでの事実だけに目を向ければ、これは、脳内に病変が出来たことによって、特異な能力を発揮するようになった症例である。
そういう症例は世の中に実在する。「獲得性サヴァン」と名づけられている。
順序として、獲得性でないサヴァン、すなわち、先天的なサヴァンについての話から始めよう。

2

サヴァン症候群 savant syndrome(単にサヴァンと呼ばれることもある)とは、かなり重篤な脳の障害というハンディキャップを持ちながら、一方で特定の分野に傑出した才能を持つ人々のことを指す。サヴァンは非常に稀なものだが、存在自体は19世紀から知られていた。但し研究が本格化したのは比較的最近のことである。
サヴァンで知られている才能としては、次のようなものが挙げられる。

・たとえば記憶。
記憶力の傑出は、サヴァンで最もよく知られている特性である。
映画『レインマン』の主人公レイモンド・バビットのモデルであるキム・ピークが比較的有名である。彼は脳梁欠損など先天的にかなり重篤な脳障害を持っているが、これまでに読んだ本9000冊をすべて暗記しているという。『レインマン』でも、カジノで、カードをすべて暗記して大勝ちするという場面があった。19世紀の医学文献の中にも、ギボンの『ローマ帝国衰亡史』を一語一句違わずに暗唱するケースが記されている。そのほか最近では、電話帳をすべて暗記しているケースや、全米の道の名をすべて記憶しているケースなどがある。

精神科Q&Aでは、 【1773】幼少時のアスペルガー障害であるとの診断と現在抱える問題のメールに、

私の父親は驚異的な記憶力を持っており、母はそんな父を「サヴァン症候群」だとよく言っていました。

という記述がある。この父親は、

父は変わり者で、自己中心的ですが、努力家での働き者です。コミュニュケーション能力は子供から見ても欠如しており、何を質問しようと会話が成り立たず滔々とうんちくを並べるだけです。子供騙しの変な造語でごまかされます。奇異な行動が多く何年でもボロぞうきんのようになって も同じ物だけを着たがります。「勉強なんて教科書を丸暗記すれば良いじゃないか!」が口癖で、記憶力は良いです。現在父親は離婚、トラブルで親戚中との仲 もこじらせ失踪中。

であるという。
この【1773】の質問者はアスペルガーか、あるいはアスペルガーでないとしても何らかの発達障害であることはほぼ確実と思われ( 【1773】に非常に詳細な記述がある)、父親もおそらくそうなのであろう。サヴァンの大部分は、何らかの発達障害(自閉症スペクトラムといってもよい)に伴うものである。
また、サヴァンの中には、一度目で見たものを、あたかも写真に撮って脳内に保存したかのように細部まで記憶してしまうという「直感像」と呼ばれる現象が見られることもある。

・たとえば絵画や彫刻。
非常に写実的で、細部の描写に優れた作品が、芸術的な才能を持つサヴァンの特徴である。

・たとえば音楽。
絶対音感を持っていたり、一度聴いただけの音楽を完璧に演奏するケースがある。

・ たとえば計算。
カレンダー計算能力がよく知られている。たとえば「1914年6月22日は何曜日か?」という質問に瞬時に正答する。そのほか、桁数の多いかけ算を暗算で解いてしまうケースもある。

・たとえば言語。
年齢相当よりもはるかに優れた読みの能力を持つ場合があり、「読字過剰 hyperlexia」と呼ばれている。但し同時にコミュニケーションに障害があるケースが多いので、総合的な言語能力は高いとは言えない。先に挙げた精神科Q&A【1773】の父親の描写、

コミュニュケーション能力は子供から見ても欠如しており、何を質問しようと会話が成り立たず滔々とうんちくを並べるだけです。子供騙しの変な造語でごまかされます。

発達障害ではこのようなケースがしばしばある。すなわち、言葉数が多く流暢によどみなく話すので、一見するとコミュニケーション能力が優れているようだが、実質的にはむしろ障害がある、というパターンである。

以上ここまで、先天性サヴァン症候群についてであった。

3

ここからが本題、獲得性サヴァンの話である。
先天性サヴァン症候群は、稀とはいうものの、医学界では19世紀から知られていた。
では、後天的なサヴァンというものは存在するのか?
言い換えれば、

脳に損傷を受けた結果、何らかの才能が開花することはあるのか?

答えは イエス だ。
幼少時に脳損傷を受けた結果、何らかの傑出した才能を持つようになったのであれば、メカニズムとしては先天性サヴァンとそれほど大きくは変わらないと予想される。そうしたケースが実在することは1980年の論文 (Brink T: Idiot savant with unusual mechanical ability. American Journal of Psychiatry 137: 250-251, 1980)で報告されている。我が国の有名な版画家、山下清(1922-1971)も、おそらく獲得性サヴァンであると思われる。彼は3歳時に「重い消化不良」によって「3ヶ月間、高熱にうなされて、歩けなくなる程の重態」となり、以後、「言語障害・知的障害」になったという経歴を持つ(山下清公式HPより)。したがってこの時に何らかの脳障害を被ったと強く推認できる。そして彼の創作スタイルは、放浪中に見た「風物を自分の脳裏に鮮明に焼きつけ」、後に自分の記憶したイメージを作品にするというもので、本稿2の「直感像」にあたる能力を持っていたと思われる。
しかし、成人になってから被った脳損傷によるサヴァンというものは存在しないであろうというのが常識的な考え方であった。脳が損傷されれば、脳の機能は低下するのが当然であって、脳の機能が改善することはあり得ないと考えられていたのである。
この常識は1996年に覆された。この論文である。

Miller BL, Ponton M, Benson DF, et al:
Enhanced artistic creativity with temporal lobe degeneration.
側頭葉変性に伴う芸術的創造性の亢進
Lancet 348: 1744-1745, 1996.

前頭側頭型認知症(前頭葉と側頭葉が萎縮していく疾患)を発症してから、写実的な絵が描けるようになった3症例を報告した論文で、そのうち一例、68歳男性の作品が掲載されている。

同じ研究グループが2年後、さらに長い論文で、計5症例を発表している。

Miller BL, Cummings J, Mishkin F, et al:
Emergence of artistic talent in frontotemporal dementia.  
前頭側頭型認知症における芸術的才能の顕現
Neurology 51: 978-982, 1998.

この論文には前頭側頭型認知症の5症例が提示され、いずれも何らかの芸術的才能が開花したことが紹介されている。彼らの作品も複数収載されている。

これ以後、同様のケースがいくつも医学論文の中に見られるようになり、獲得性サヴァン acquired savant という名前が定着するようになった。但しなぜ脳損傷で特定の才能が開花するのか、そのメカニズムは不明であったが、2014年に、この謎に挑んだ論文が発表されている。

Takahata K, Saito F, Muramatsu T, Yamada M, Shirahase J, Tabuchi H, Suhara T, Mimura M, Kato M.
Emergence of realism: Enhanced visual artistry and high accuracy of visual numerosity representation after left prefrontal damage.
脳損傷後にみられた芸術的能力の開花に関する研究
Neuropsychologia 57: 38-49, 2014.

この論文では、脳血管障害で左前頭葉に損傷を負った後、見事な絵が描けるようになったケースについて、実に詳細な検査を行い、右脳の特定部位の血流増加が、芸術的能力の開花に関連することを示している。

サヴァンの脳内メカニズムは、脳の一部の損傷によって、それまで抑制がかかっていた脳の別の部位の機能が亢進するためではないかという仮説は、獲得性サヴァンの存在が最初に論文に出たころから言われていた。上記2014年の論文は、その仮説を初めて立証したものである。
(余談だが、山本英夫『ホムンクルス』は、脳に小手術を施して傷をつけた結果として、特異な能力を持つようになるという作品である。 名作マンガで精神医学の中で私はこの作品の解説として、「脳の損傷によって、それまでになかった才能が目覚めることは、実際にあり得る」と記し、先の1996年の論文を引用した)

人間の脳は、何億年もの時間をかけた進化の産物である。この気の遠くなるような時間の中で、脳内に眠る形になった能力は、おそらく膨大にあるのであろう。脳の奥底でタイムカプセルのように眠り、開花を待っている才能は、まだまだあるに違いない。

 

4

羊をめぐる冒険 A Wild Sheep Chase の話に戻る。
この作品に登場する右翼団体のトップは、脳内に病変を持っている。そしてその病変が発生した時から、リーダーとしての傑出した能力を発揮するようになっている。すなわち、脳内の病変が、彼のリーダーとしての傑出した能力の原因であると推認できる。すると彼は、リーダーに要求される社会性が突出して優れた、獲得性サヴァンである。
そういうケースは存在するだろうか。
少なくとも、医学論文としては報告されていない。
するとこの問いは、
そういうケースが存在する可能性はあるだろうか。
と言い直す必要があろう。
先天性サヴァンの大部分は(すべてかもしれない)自閉症スペクトラムといえるケースであり、記憶や芸術などの領域の能力は傑出しているが、社会性には問題があるのが常である。であれば、実力によるリーダーにはとてもなれないと考えるのが普通だ。
獲得性サヴァンのうち、1990年代の論文にみられる前頭側頭型認知症では、人格変化、脱抑制などの障害を合併しており、やはり社会性については、障害こそあれ、優れているということはあり得ない。前頭側頭型認知症のこのような特性については、 【1123】68歳の父が感情をコントロールできなくなりましたに実例がある。   2014年の論文に見られるような脳血管障害のケースでは、損傷部位は右脳であって、これもまた社会性が優れるという帰結は考え難い。
すると、羊をめぐる冒険の右翼トップのように、巨大な組織のリーダーになるような能力を、脳損傷によって獲得することは、現実的にはまず考えられないということになろう。
ではそこまではいかなくとも(あれほど巨大な組織のリーダーにまではならなくても)、社会的能力や対人的能力が、脳損傷の結果傑出することはあり得るか?
もし「ない」とすれば、羊に登場してもらうしかないということになるが、私は、「ある」と予想している。理由は二つある。
一つは、非常に例外的な形の脳損傷による抑制解放現象が発生すれば、人間の持ついかなる能力も(文字通り、「いかなる」能力も)、大きく増大することがあるはずだという理論的な理由である。
もう一つは具体例に基づいている。「社会的能力や対人的能力が、脳損傷の結果傑出するようになった」といえる実例を、少なくともそれに近い実例を、私は知っている。
臨床例なので、詳細をここに書くことは出来ないが、そのケースは、十代のとき事故で脳のある部分に損傷を受け、以後、性格が変化した。学校卒業後は、意外にも金儲けに非常に優れた才能を発揮し、中年に達した現在は、ちょっと考えられないほどの莫大な財産を有している。その一方で、精神症状があるため、精神科の患者になっているのだが(『羊をめぐる冒険』の右翼リーダーにも、周期的なひどい頭痛、幻覚などの症状がある)、今もなお財産は増大し続けている。
この人は、社会性にそれなりの問題があることはあるのだが、金儲けに関係する対人交渉能力については、普通よりはるかに高い社会性を有している。実際に会ってみると、この人にそんな能力があるとは信じ難い印象なのだが、金儲けの能力と現有財産については、この人の虚言ではなく間違いのない確実な事実である。こういうケースを目の当たりにすると、特異な社会性を発揮する獲得性サヴァンは存在すると推定せざるを得ない。『羊をめぐる冒険』から「羊」を除外すれば、この作品はノンフィクションとして成立するのだ。

 

23. 6月 2014 by Hayashi
カテゴリー: コラム 対訳


林公一 ノルウェイ 対訳

2023-11-06 04:39:27 | DSM

『ノルウェイの森』には心を病んだ人が何人も登場する。本稿ではその中で統合失調症と虚言症を取り上げる。

4月、直子の二十歳の誕生日の夜、ワタナベは彼女と寝る。翌日から直子は姿を消す。ワタナベは手紙を出すが、返事は来ない。7月にようやく来る。直子は病気で休学し、京都の山の中の療養所に入ることにしたという。短い手紙だ。そして秋には長い手紙が届く。そこには療養所の様子が描写されている。英訳と対比して示す。

上p.160
ここには全部で七十人くらいの人が入って生活しています。その他のスタッフ(お医者、看護婦、事務、その他いろいろ)が二十人ちょっといます。とても広いところですから、これは決して多い数字ではありません。それどころか閑散としていると表現した方が近いかもしれませんね。広々として、自然に充ちていて、人々はみんな穏やかに暮らしています。あまりにも穏やかなのでときどきここが本当のまともな世界なんじゃないかという気がするくらいです。でも、もちろんそうではありません。私たちはある種の前提のもとにここで暮らしているから、こういう風にもなれるのです。

p.113
There are about 70 people living here. In addition, the staff (doctors, nurses, office staff, etc.) come to just over 20. It’s such a wide-open place, these are not big numbers at all. Far from it: it might be more accurate to say the place is on the empty side. It’s big and filled with nature and everybody lives quietly — so quietly you sometimes feel that this is the normal, real world, which of course it’s not. We can have it this way because we live here under certain preconditions.

人里離れた自然の中の療養所。そういうものは現実世界にも実在する。しかし入所者70人に対し、スタッフが20人。医師も複数。全文を読むと、少なくとも3人の医師が勤務していると推定される。入所者70人に対してこれだけ充実したスタッフ構成の療養所がどこかに実在するとは考えにくい。経済的な理由からだ。しかしこれは、療養費が決して安くないこと、そして設備はすべてがある人の寄附で成り立っているからだという説明が後に出てくる。

阿美寮(あみりょう)という名のこの療養所では、入所者とスタッフにあまり区別がない共同生活が営まれている。運動をする。野菜を作る。本を読む。音楽を聴く。直子からの手紙を読んだワタナベが阿美寮を訪れた日、そこで療養する元ピアノ教師のレイコが説明する。

上p.177
まず最初にあなたに理解してほしいのはここがいわゆる一般的な『病院』じゃないってことなの。てっとりばやく言えば、ここは治療するところではなく療養するところなの。もちろん医者は何人かいて毎日一時間くらいはセッションするけれど、それは体温を測るみたいに状況をチェックするだけであって、他の病院がやっているようないわゆる積極的治療を行うということではないの。

p.126
The first thing you ought to know is that this is no ordinary ‘hospital’. It’s not so much for treatment as for convalescence. We do have a few doctors, of course, and they give hourly sessions, but they’re just checking people’s conditions, taking their temperature and things like that, not administering ‘treatments’ as in an ordinary hospital.

阿美寮は、治療するところではなく療養するところ。積極的治療(英文では ‘treatment’ と‘ ’をつけて表記することで訳語としている)は行わない。
些細なことだが、上記英文には誤訳が二箇所あると思う。原文は明らかに「一日一時間のセッション」という意味の記述だが、hourly sessionは「一時間ごとにセッションを行う」だからこれは意味が違う。もう一つは taking their temperature で、これは文字通り「体温を測る」という意味だが、原文の「体温を測るみたいに状況をチェックするだけであって、」では、「体温を測る」というのはたとえであって、実際には体温を測るのではない。まあどちらも些細な誤りだが。

で、これに続く文章:

上p.177
だからここには鉄格子もないし、門だっていつも開いてるわけ。人々は自発的にここに入って、自発的にここから出ていくの。そしてここに入ることができるのは、そういう療養に向いた人達だけなの。誰でも入れるというわけじゃなくて、専門的な治療を必要とする人は、そのケースに応じて専門的な病院に行くことになるの。そこまではわかる?

p.126
There are no bars on the windows here, and the gate is always wide open.  People enter and leave voluntarily. You have to be suited to that kind of convalescence to be admitted here in the first place. In some cases, people ho need specialized therapy end up going to a specialized hospital.  OK so far?”

そこまではわかる? わかる。わかるが、この部分の記述は人々が夢見がちな精神疾患の治療の描写となっている。「人々は自発的にここに入って、自発的にここから出ていくの」、もちろんそれは理想である。だが精神疾患には、自発的な治療だけでは解決しないケースが膨大にある。だから阿美寮は精神疾患のごく一部だけを対象としている。つまり「ここに入ることができるのは、そういう療養に向いた人達だけなの」という性質の療養所なのである。特に疑問なく「そこまではわかる」と読み飛ばしそうだが、「そういう療養に向いた人達」であることを誰がどう判断するかという重大な問題が、現実には発生する。重い精神疾患の当事者の多くは、自分こそが「そういう療養に向いた人」と信ずるか、または、自分にはそんな療養さえ必要ないと信じている。だがもちろんそういう人達は「そういう療養」には適さない。すると、こうした施設で実際に療養できるのは、かなり軽い病状の人に限られるのである。
阿美寮ほどの理想的なスタッフ構成やロケーションまでは満たされないにせよ、同様の施設は現に存在するかもしれない。それは表面的には理想的であり、そこでは精神疾患の人達が生き生きと暮しているかもしれない。しかしそれは、「そういう療養に向いた人達だけ」を選別してはじめて成り立つものであり、より重症でより助けが必要な人達を阿美寮で対応することは不可能で、阿美寮の美しさは、そうした人達を引き受ける別の施設の苦労の上に築かれているのである。

レイコはさらに語る。阿美寮のシステムは、元々はある医師の理論に基づいているという。

上p.178
人里はなれたところでみんなで助けあいながら肉体労働をして暮し、そこに医者が加わってアドバイスし、状況をチェックすることによってある種の病を治癒することが可能だというのがその医師の理論だったの。

p.127
The doctor’s theory was that if you could have a group of patients living out in the country, helping each other with physical labour and have a doctor for advice and check-ups, you could cure certain kinds of sickness.

まさに生活療法、ないしは作業療法の理論である。決してこの医師の独自の理論ではなく、現代の精神医学でも広く認められている理論といえる。但し、こうした療法だけで病気が治癒するというものではない。もっとも、レイコのいう「ある種の病気」とは何かということになるが、実際の発症率と、長期の療養を要するという背景からは、統合失調症を想定するのが合理的である。であれば、いかに理想的な自然の中という環境であっても、そこで療養するだけで治癒するなどということはあり得ない。

こうしたことはともかく、阿美寮の環境が理想の一つであることは間違いない。「だからこそ」、という文脈で、直子は問題点を書いている。直子の手紙に戻ってみる。

上p.163
この施設の問題点は一度ここに入ると外に出るのが億劫になる、あるいは怖くなるということですね。私たちはここの中にいる限り平和で穏やかに気持ちになります。自分たちの歪みに対しても自然な気持ちで対することができます。自分たちが回復したと感じます。しかし外の世界が果して私たちを同じように受容してくれるものかどうか、私には確信が持てないのです。

p.115
The one real problem with this place is that once you’re here you don’t want to leave — or you’re afraid to leave.  As long as we’re here, we feel calm and peaceful.  Our deformities seem natural. We think we’ve recovered. But we can never be sure that the outside world will accept us in the same way.

「一度ここに入ると外に出るのが億劫になる、あるいは怖くなる」のは、実は阿美寮のような理想的な環境でなくてもしばしばある。精神科には昔から「院内寛解」という言葉がある。精神科病院に入院中は寛解、すなわち治っているように見えるのだが、退院すると途端に病状が悪化することを指す。直子が言うように、「外の世界が果して私たちを同じように受容してくれるものかどうか」が大問題なのである。現在、日本には30万人以上の人が精神科病院に入院している。そのうちの数万人は、外の世界が受容してくれさえすれば、おそらく退院できる。直子は「自分たちの歪み」という言葉を使っている。先の直子の手紙の中に、「私たちはある種の前提のもとにここで暮らしている」という表現があった。ここでいう「前提」とは、彼女たちが抱えている「歪み」を指している。直子の手紙。

上p.162
ここにいる限り私たちは他人を苦しめなくてすむし、他人から苦しめられなくてすみます。何故なら私たちはみんな自分たちが『歪んでいる』ことを知っているからです。そこが外部世界とはまったく違っているところです。外の世界では多くの人は自分の歪みを意識せずに暮しています。でも私たちのこの小さな世界では歪みこそが前提条件なのです。

p.114
As long as we are here, we can get by without hurting others or being hurt by them because we know that we are “deformed”. That’s what distinguishes us from the outside world: most people go about their lives unconscious of their deformities, while in this little world of ours the deformities themselves are a precondition.

精神疾患の療養所として一つの理想である阿美寮。ではそこでは病気からの回復が得られるのか。レイコが語るのは、決して夢のような理想ではなく、現実的である。

上p.179
よくならない人も沢山いるわよ。でも他では駄目だった人がずいぶんたくさんここでよくなって回復して出て行ったのよ。

p.127
Lots of people don’t get better. But also a lot of people who couldn’t be helped anywhere else managed a complete recovery here.

よくならない人も沢山いる。夢のような理想ではなく、現実的だ。それはそうだが、注意深く読めば、この部分のレイコの説明には実質的な内容がない。「よくならない人も沢山いる」あたり前だ。「でも他では駄目だった人がずいぶんたくさんここでよくなって回復して出て行った」それもまたあたり前である。どこのどんな療養所でも、あるいは病院でも、そういう人はたくさんいる。阿美寮に限ったことではない。そして精神疾患というものの性質からいって、真に問題なのは「よくなって回復して出て行った」ことではなく、その後の経過である。その後、彼らはどんな生活をしているのか。再発はしなかったのか。再入院はどうか。そこまで実証しなければ、ある治療方法(療養方法でもよい)の有効性を語ることはできない。「ずいぶんたくさんここでよくなって回復して出て行った」だけでは、ほとんど何も意味していないのである。

新刊の発刊は1987年だ。
1987年か。
多分そのころの私は、これから書くような内容には想到しなかったと思う。その部分も、おそらく疑問を持たずに読み進めたのだと思う。「その部分」とは、ここからだ。阿美寮で療養中の直子の病状が悪化しつつある場面。レイコの手紙文という形で描写されている。

下p.177
考えてみれば最初の徴候はうまく手紙が書けなくなってきたことでした。十一月のおわりか、十二月の始めころからです。それから幻聴が少しずつ始まりました。彼女が手紙を書こうとすると、いろんな人が話しかけてきて手紙を書くのを邪魔するのです。彼女が言葉を選ぼうとすると邪魔をするわけです。

p.323
Looking back, I see now that the first symptom of her problem was her loss of the ability to write letters. That happened around the end of November or beginning of December. Then she started hearing things. Whenever she would try to write a letter, she would hear people talking to her, which made it impossible for her to write. The voices would interfere with her attempts to choose her words.

「幻聴」の正式な訳語はauditory hallucinationだが、ここでは hearing things と訳されている。英語の文脈上、このほうが適切だという判断なのであろう。

上に書かれている悪化のサインの第一は、 「うまく手紙が書けなくなってきたこと」である。そして、その後に幻聴が始まっている。この順序は臨床的に重要である。(英文でもこの順序が正確に訳されている)
統合失調症というものを、本などからだけの抽象的な知識で考えると、上のような症状の場合、「幻聴が聞こえて邪魔されるから、うまく手紙が書けなくなったのであろう」と推定して、それで納得しがちだが、実際のケースの経過はそうでないことが多い。幻聴は、後なのである。先に、もっと漠然とした不調が出る。直子の場合は「うまく手紙が書けなくなってきた」である。そのほかのケースとしては、たとえば「物事がうまく頭に入らなくなってきた」「うつっぽくなってきた」「眠れなくなってきた」「何となく怒りっぽくなってきた」など、様々な症状があり得る。この段階で統合失調症の症状であると判断するのは難しいが、再発の場合であれば比較的すぐにそう判断できることも多く、【1055】急に不機嫌になったのは統合失調症再発のサインでしょうか【0534】統合失調症の再発の兆候か、それとも単なる夫婦喧嘩か などがその例である。

直子が阿美寮に来るまでの病歴は明らかにされていないので、入寮時に統合失調症という診断がなされていたかどうかはわからないが、もしなされていたのであれば、「うまく手紙が書けなくなってきた」時点で、再発の徴候と判断するか、少なくともその可能性ありとして慎重に経過を見る必要があったということになる。そして間もなく「それから幻聴が少しずつ始まりました。彼女が手紙を書こうとすると、いろんな人が話しかけてきて手紙を書くのを邪魔するのです。」となって、再発(または、顕在発症)が明らかになる。そして、悪化していく。治療していない以上当然である。

下p.177
彼女は今、日常会話をするのにもかなりの困難を覚えています。言葉が選べないのです。それで直子は今ひどく混乱しています。混乱して、怯えています。幻聴もだんだんひどくなっています。

p.323
She is having trouble now just holding an ordinary conversation. She can’t find the right words to speak, and that puts her into a terribly confused state — confused and frightened. Meanwhile, the “things” she’s hearing are getting worse.

これはかなり危ない徴候である。そして問題の部分にさしかかる。

下p.177
私たちは毎日専門医をまじえてセッションをしています。直子と私と医師の三人でいろんな話をしながら、彼女の中の損われた部分を正確に探りあてようとしているわけです。

p.323
We have a session every day with one of the specialists. Naoko and the doctor and I sit around talking and trying to find the exact part of her that’s broken.

幻聴などの症状が悪化。混乱。怯え。そこで、医師とレイコと本人(直子)の三人で色々なことを話すことにより、解決への努力をしている。
これは、きわめて危険な方法である。
ここに、統合失調症という精神病についての大きな誤解がある。
すなわちここでは、今の直子のような精神症状があるとき、
「精神症状」(幻聴など)
とは別の独立したものとして
「精神症状に苦悩する自分」
というものが存在する、というようにイメージされている。病気についてのごく自然なイメージのように思えるが、これが誤解で、実際には精神病の症状とは、「症状」と「自分」が渾然一体としたものになっていて、明確にその二つを分けることは困難なのである。
これが体の病気の症状との大きな違いである。
たとえば腹痛。
このときは明らかに、
「腹痛」
とは別の独立したものとして
「腹痛に苦しむ自分」
というものが存在する。だから、この腹痛をどうすべきか、まだ我慢できるのか、それとも治療を受けるべきか、などというように考えることができる。人に相談することもできる。たとえ激痛で冷静に考える余裕がなかったとしても、「症状」と「自分」が別であるという事実が崩れることはない。
もう一度さっきの部分を引用する。

下p.177
私たちは毎日専門医をまじえてセッションをしています。直子と私と医師の三人でいろんな話をしながら、彼女の中の損われた部分を正確に探りあてようとしているわけです。

このような形で方策を考えることができるとすれば、それは、
「精神症状」(幻聴など)
とは別の独立したものとして
「精神症状に苦悩する自分」
というものが存在する場合である。
もし精神症状について、自分で客観的かつ冷静に考え、その時点での自分に最も納得のいく対処法を選ぶことができれば、それは理想である。もちろんそのようなことが可能な場合もある。自分の精神症状をある程度まで客観的にみることができる場合もある。しかしこの直子のように、統合失調症が再発(または発症)し、悪化しつつあるときは、それはかなり困難である。統合失調症の実例についての精神科Q&Aをお読みになった人が、統合失調症と思われるご家族にその内容を読ませることで病気だということを納得させようとすることがしばしばあるようだが、それは多くの場合うまくいかない。その方法がうまくいくのではないかと考えることの背景に、上に書いた誤解がある。三回目になるとしつこいのは承知のうえで、もう一度書く。
「精神症状」(幻聴など)
とは別の独立したものとして
「精神症状に苦悩する自分」
というものが存在すると考える、それは統合失調症についての大きな誤解である。「症状が悪くなったら、また自分で考えて治療を受ければいい。または、家族と相談して治療のことを決めればいい」というような考え方は、この誤解に基づいているともいえる。たとえば統合失調症という事実 のcase4-1。治療によってほとんど症状が消えた。こんなに薬が効くのなら、悪くなったらまた飲めばいいと家族で話し合って、薬をやめた。ところが再発の徴候らしきものが出てから2,3日ではっきりした再発。この時点では自分が病気であるという認識が消失し、もはや治療を受けることに納得せず、家族が苦悩する。こういうケースは枚挙に暇がない。

直子の場合も、あれだけ悪化しつつある状態で、話し合いによって今後の方策を考えるという対応法は、危険であり、さらにいえば、非現実的である。
続くレイコの文章。レイコが苦悩している形をとっているが、現実からみれば、逆に非常に楽観的な文章であると言わざるを得ない。

下p.178
ここの施設の目的は患者が自己治療できるための有効な環境を作ることであって、医学的治療は正確にはそこに含まれていないのです。だからもし直子の病状がこれ以上悪化するようであれば、別の病院なり医療施設に移さざるを得ないということになるでしょう。私としても辛いことですが、そうせざるをえないのです。もちろんそうなったとしても治療のための一時的な『出張』ということで、またここに戻ってくることは可能です。あるいはうまくいけばそのまま完治して退院ということになるかもしれませんね。

p.323
The point of this place is to create an effective environment in which the patient can treat herself or himself, and that does not, properly speaking, include medical treatment. Which means that if Naoko’s condition grows any worse, they will probably have to transfer her to some other hospital or medical facility or what have you. Personally, I would find this very painful, but we would have to do it. That isn’t to say that she couldn’t come back here for treatment on a kind of temporary “leave of absence”. Or better yet, she could even be cured and finish with hospitals completely.

「私としても辛いことですが、そうせざるをえないのです。」、レイコの苦悩が表現されているが、はっきり言ってこれは甘い。甘い見通しである。どこが甘いか。 「そうせざるをえないのです。」というのが甘い。辛くとも辛くなくとも、そうすること(別の病院なり医療施設に移ること)ができるのなら、それは直子にとって明るい希望を持つことができる。だがこのように悪化した状態では、その「移ること」が難しいのである。もちろんここで「移る」のは、病状の悪化を受け入れて、自分で納得して(辛いと思いながらであっても、とにかく納得して)移ることである。実際には病状がこの段階になると、もはや自分に治療の必要があると認識することが難しくなる。または不可能になる。まさに 【2444】私は自然治癒力で統合失調症を治しましたというような状態になってしまうのである。

ところで、上記英文には誤訳がある。ストーリーの上では些細な誤訳だが、論理としては重大な誤訳である。原文の日本語と並べて示す。

もちろんそうなったとしても治療のための一時的な『出張』ということで、またここに戻ってくることは可能です。
That isn’t to say that she couldn’t come back here for treatment on a kind of temporary “leave of absence”.

最初、私はこれが誤訳だと思った。読み直してみて、もしかすると自分の読みのほうが間違っているのかとも思った。しかしやはり誤訳だという結論に達した。論理としての重大な誤訳。それは、「出張」する先が、他の病院だといっているのか、それとも阿美寮だといっているのか、ということである。
日本語の原文によれば、出張先は他の病院である。阿美寮がホームで、しかし治療が必要になったので一時的に他の病院に出張するという意味である。
しかし英文のほうではそれが逆になっている。阿美寮に戻ることを「出張 leave of absence」としている。この英文が誤りであることは、treatmentという単語の使い方からもわかる。阿美寮で行っていることは、治療treatmentではないと、原文には明記されているし、英訳でもここより前の部分にはその通り訳されている。したがって、
back here for treatment
ということは、阿美寮という施設の性質上、あり得ないはずだ。
なぜこのような誤訳が生じたのかと、もう一度原文に目を向けると、

もちろんそうなったとしても治療のための一時的な『出張』ということで、またここに戻ってくることは可能です。

この日本語は、よく読むと実は文法的には曖昧であることがわかる。 「治療のための一時的な『出張』ということで、」の直後に 「またここに戻ってくる」という文があるから、文法だけから読めば、「出張としてここに戻ってくる」と読むことも可能だし、正当ですらある(私が最初に誤訳だと思い、読み直して自分の読みが誤っていると考え直したのはそれが理由である。文法にこだわれば、この英訳は正しいと読める。しかし結論としては誤訳である)。だから訳者は誤解したのであろう。翻訳とは実に細心の注意が必要な作業であることがよくわかる。

5

次は虚言のことだ。
『ノルウェイの森』には二人の虚言者が登場する。一人目はこの場面に出てくる。ワタナベの同級生である小林緑が、家族のことをワタナベに語る。

上p.133
お母さんが死んだとき、お父さんが私お姉さんに向ってなんて言ったか知ってる? こう言ったのよ。『俺は今とても悔しい。俺はお母さんを亡くすよりお前たち二人を死なせた方がずっとよかった』って。私たち唖然として口もきけなかったわ。だってそう思うでしょ? いくらなんでもそんな言い方ってないじゃない。

p.93
“What do you think he said to my sister and me when our mother died?  ‘I would much rather have lost the two of you than her.’  It knocked the wind out of me. I couldn’t say a word. You know what I mean?  You just can’t say something like that. ….”

この場面に登場しているのは三人。父。姉。緑。この中に虚言者がいる。
この後の父の行動を緑が語る。

上p.133
「お父さんは去年の六月にウルグァイに行ったまま戻ってこないの」
「ウルグァイ?」と僕はびっくりして言った。「なんでまたウルグァイなんかに?」
「ウルグァイに移住しようとしたのよ、あの人。馬鹿みたいな話だけど。軍隊のときの知りあいがウルグァイに農場持ってて、そこに行きゃなんとでもなるって急に言いだして、そのまま一人で飛行機乗って行っちゃったの。私たち一生懸命とめたのよ、そんなとこ行ったってどうしようもないし、言葉もできないし、だいいちお父さん東京から出たことだってロクにないじゃないのって。でも駄目だったわ。きっとあの人、お母さんを亡くしたのがものすごいショックだったのね。それで頭のタガが外れちゃったのよ。それくらいあの人、お母さんのことを愛してたのよ。本当よ」

p.93
“He went off to Uruguay in June last year and he’s been there ever since.”
“Uruguay?!  Why Uruguay?”
“He was thinking of settling there, believe it or not. An old army buddy of his has a farm there. All of a sudden, my father announces he’s going, too, that there’s no limit to what he can do in Uruguay, and he gets on a plane and that’s that. We tried hard to stop him, like, ‘ What do you want to go to a place like that? You can’t speak the language, you’ve hardly ever left Tokyo’. But he wouldn’t listen. Losing my mother was a real shock to him. I mean, it made him a little cuckoo. That’s how much he loved her. Really.”

緑の父は最愛の妻を失った後、ウルグァイに移住すると言い出した。父の軍隊時代のしりあいがウルグァイに農場を持っているのだ。「軍隊時代のしりあい」が buddy と訳されている。Buddyとは、軍人が行動するときにペアとして充てられる仲間のことを指すと私は理解していたが、軍隊内の親しい友人のことも指すらしいとこれを読んで初めて知った。

なお、 「そこに行きゃなんとでもなる」は、「なんとかなる」という意味であると読めるが、英文は there’s no limit to what he can do で、これだと「なんでもできる」だから、原文の意味とは違う。しかしこれも先の「出張」の部分と同様、翻訳者に同情の気持ちを禁じえない。「なんとでもなる」という日本語は、文法構造だけから考えたら、「なんでもできる」と同義という解釈も可能であろう。だがこれも文脈を含めて総合的に考えれば、「なんとかなる」が正解のはずだ。

ウルグァイに移住すると言い出した父のその後。

上p.134
「そしてウルグァイに行っちゃったの。私たちをひょいと放り捨てて」

p.93
“And then he dumps the two of us and runs off to Uruguay.”

父は本当にウルグァイに行ってしまったのだ。その後、父からの便りはというと。

上p.134
「一度だけ絵ハガキが来たわ。今年の三月に。でもくわしいことは何も書いてないの。こっちは暑いだとか、思ったほど果物がうまくないだとか、そんなことだけ。まったく冗談じゃないわよねえ。下らないロバの写真の絵ハガキで。頭がおかしいのよ、あの人。その友だちだか知りあいだかに会えたかどうかさえ書いてないの。終わりの方にもう少し落ちついたら私とお姉さんを呼びよせるって書いてあったけど、それっきり音信不通。こっちから手紙を出しても返事も来やしないし」

p.94
“One postcard. In March. But what does he write?  ‘It’s hot here’ or ‘The fruit’s not as good as I expected’. Stuff like that. I mean, give me a break!  One stupid picture of a donkey! He’s lost his marbles!  He didn’t even say whether he’d met that guy — the friend of his or whatever. He did add near the end that once he’s settled he’ll send for me and my sister, but not a word since then. And he never answers our letters.”

父から来たのは絵ハガキ一枚。その後は音信不通。一体ウルグァイで何をしているのか。娘である緑は、緑の姉は、父に会いにウルグァイに行く意思はあるのか。

上p.135
「それでもしお父さんがウルグァイに来いって言ったら、君どうするの?」
「私は行ってみるわよ。だって面白そうじゃない。お姉さんは絶対に行かないって。うちのお姉さんは不潔なものとか不潔な場所とかが大嫌いなの」

p.94
“What would you do if your father said ‘Come to Uruguay’ ?“
“I’d go and have a look around at least. It might be fun. My sister says she’d absolutely refuse. She can’t stand dirty things and dirty places.”

緑は行く意思あり。姉は行く意思なし。

上p.135
「ウルグァイってそんなに不潔なの?」
「知らないわよ。でも彼女はそう信じてるの。道はロバのウンコでいっぱいで、そこに蠅がいっぱいたかって、水洗便所の水はろくに流れなくて、トカゲやらサソリやらがうようよいるって。・・・」

p.93
“Is Uruguay dirty?”
“Who knows?  She thinks it its. Like the roads are full of donkey shit and it’s swarming with flies, and the toilets don’t work, and lizards and scorpions crawl all over the place. …”

ウルグァイの実情がどうであるかはともかく、姉は行く意思なし、緑は行く意思ありだ。すると緑は父が好きなのか。そう聞かれた緑は、とくに好きってわけではないと答える。ではなぜわざわざウルグァイまで行くと言うのか。

上p.136
「信用してるからよ」
「信用してる?」
「そう、たいして好きなわけじゃないけど信用はしてるのよ、お父さんのことを。奥さんを亡くしたショックで家も子供も仕事も放りだしてふらっとウルグァイに行っちゃうような人を私は信用するのよ。わかる?」

p.95
“ I believe in him.”
“ Believe in him?”
“Yeah, I’m not that fond of him, but I believe in my father. How can I not believe in a man who gives up his house, his kids, his work, and runs off to Uruguay from the shock of losing his wife? Do you see what I mean?”

わかる? 何となくわかるような気もする。ワタナベもそう答えている。

上p.136
僕はため息をついた。「わかるような気もするし、わからないような気もするし」
緑はおかしそうにわらって、僕の背中を軽く叩いた。「いいのよ、べつにどっちだっていいんだから」と彼女は言った。

p.95
I sighed. “Sort of, but not really.”
Midori laughed and patted me on the back. “Never mind,” she said. “It really doesn’t matter.”

 

6

直子から、自分が4ヶ月前から施設に入っているという手紙をワタナベが受け取ったのは、緑から父の話を聞いてから一週間後のことだった。そしてワタナベは京都の阿美寮を訪れ、レイコに迎えられる。直子にも会う。この訪問中にレイコから聞いた話の中に、もう一人の虚言者が現れるがそれは後述する。東京に帰ってからのある日曜日、ワタナベは緑に誘われてお茶ノ水に行く。そして歩きながらどこに行くのかと緑に尋ねる。

下p.64
「病院よ。お父さんが入院していて、今日いちにち私がつきそってなくちゃいけないの。私の番なの」
「お父さん?」と僕はびっくりして言った。「お父さんはウルグァイに行っちゃったんじゃなかったの?」
「嘘よ、そんなの」と緑はけろりとした顔で言った。「本人は昔からウルグァイに行くんだってわめいてるけど、行けるわけはないわよ。・・・」

p.237
“The hospital,” she said. “My father’s there. It’s my turn to stay with him all day.”
“Your father?! I thought he was in Uruguay!”
“That was a lie,” said Midori in a matter-of-fact tone. “He’s been screaming about going to Uruguay forever, but he could never do that. …”

そして二人は緑の父が入院している大学病院に着く。緑の父は脳腫瘍で、「はっきり言って時間の問題ね」と緑は言う。実際に病院で緑の父を見たワタナベは、彼にはもはや生命力というものが殆どないと感じる。事実、まもなく緑の父は他界する。

つまり、父はウルグァイに行ったという緑の説明は、嘘だった。嘘といっても、誰も何の被害も受けていない。まあ罪のない軽い嘘だ。罪のない軽い嘘に見える。もう一人、登場する虚言者と比べてみよう。阿美寮でレイコが語る。

上p.225
「まあ順番に話していくとね、その子は病的な嘘つきだったのよ。あれはもう完全な病気よね。なんでもかんでも話を作っちゃうわけ。そして話しているあいだは自分でもそれを本当だと思いこんじゃうわけ。そしてその話のつじつまをあわせるために周辺の物事をどんどん作りかえていっちゃうの。でも普通ならあれ、変だな、おかしいな、と思うところでも、その子は頭の回転がおそろしく速いから、人の先にまわってどんどん手をくわえていくし、だから相手は全然気づかないのよ。それが嘘であることにね。だいたいそんなきれいな子がなんでもつまらないことで嘘をつくなんて事誰も思わないの。私だってそうだったわ。私、その子のつくり話を半年間山ほど聞かされて、一度も疑わなかったのよ。何から何まで作り話だっていうのによ。馬鹿みたいだわ、まったく」
「どんな嘘をつくんですか?」
「ありとあらゆる嘘よ」

p.161
“Well, let me just say the girl was a pathological liar. She was sick, pure and simple. She made up everything. And while she was making up her stories, she would come to believe them. And then she would change things around her to fit her story. She had such a quick mind, she could always keep a step ahead of you and take care of things that would ordinarily strike you as odd, so it would never cross your mind she was lying. First of all, no one would ever suspect that such a pretty little girl would lie about the most ordinary things. I certainly didn’t. She told me tons of lies for six months before I had the slightest inkling anything was wrong. She lied about everything, and I never suspected. I know it sounds crazy.”
“What did she lie about?”
“When I say everything, I mean everything.”

この少女 — 便宜上、以後は「美少女L」と呼ぶことにする — は、「ありとあらゆる嘘」をつき、「なんでもかんでも話を作」り、「話しているあいだは自分でもそれを本当だと思いこんじゃう」、まさに病的な虚言である。病的な虚言の巧妙さには様々なレベルがあるが、美少女Lは「人の先にまわってどんどん手をくわえていくし、だから相手は全然気づかないのよ。それが嘘であることにね。」、すなわち相当に巧妙な虚言者である。このような虚言では、「私、その子のつくり話を半年間山ほど聞かされて、一度も疑わなかったのよ。何から何まで作り話だっていうのによ。」ということがしばしばある。

p.225
「今も言ったでしょ? 人は何かのことで嘘をつくと、それにあわせていっぱい嘘をつかなくちゃならなくなるのよ。それが虚言症よ。でも虚言症の人の嘘というのは多くの場合罪のない種類のものだし、まわりの人にもだいたいわかっちゃうものなのよ。・・・」

p.161
“When people tell a lie about something, they have to make up a bunch of lies to go about something, they have to make up a bunch of lies to go with the first one. ‘Mythomania’ is the word for it. When the usual mythomaniac tells lies, they’re usually the innocent kind, and most people notice. …”

虚言症mythomaniaは、一応は医学用語だが、現代の公式の診断基準の中にはこの病名はない。したがって公式の定義というものはないが、美少女Lのような人物は虚言症mythomaniaといってよい。但し「虚言症の人の嘘というのは多くの場合罪のない種類のものだし」というレイコの説明は正しいとはいえない。罪のある種類のものもあれば、罪のない種類のものもあるというべきであろう。「まわりの人にもだいたいわかっちゃうものなのよ」についてはさらに正しくない。嘘とは、ばれたときに初めて嘘とわかるものである。虚言症の人の嘘の中には「まわりの人にもだいたいわかっちゃう」ものももちろんあるが、逆にわからない場合(ばれない場合)は、そもそもその人が虚言症であることがわからないわけだから、「まわりの人にもだいたいわかっちゃうものなのよ」というのは、虚言症の嘘の中のある一部を指した説明にすぎない。

 

 


あの子は体の芯まで腐ってるのよ。

p.210
The girl was rotten inside. Peel off a layer of that beautiful skin, and you’d find nothing but rotten flesh.

というように、レイコが美少女Lを非難するのは自然なこととして理解できる。
しかし。
レイコはこうも言っていたのである。

上p.225
その子は病的な嘘つきだったのよ。あれはもう完全な病気よね。

では虚言症は病気だろうか。少なくともレイコは「完全な病気」と言っている。その一方で、「あの子は体の芯まで腐ってるのよ」と非難している。では病気であることは、非難されるべきことなのか。うつ病も、統合失調症も、かつては病気とみなされていなかった。人々から非難される対象になることが多かった。だが現代では病気とみなされている。病気とみなされれば、非難される理由は消滅する。病気になったことについて本人に責任はない。では虚言症はどうか。病気だから非難されるべきではないということになるのか。少なくとも現代の常識では、そんなことはない。嘘つきは、最大限の非難の対象になるというのが常識である。

虚言が病気かどうかについて、もう一つ。
美少女Lの虚言については、「あれはもう完全な病気よね」というレイコの説は、かなり納得できるものである。では『ノルウェイの森』に登場するもう一人の虚言者、緑はどうか。父がウルグァイに行ってしまったと真っ赤な嘘をついた緑はどうか。本稿「6」の最後に私は、

まあ罪のない軽い嘘だ。

と書いた。緑の嘘は確かにそう見える。少なくとも美少女Lに比べれば全く罪などない。だが私は続けてこう書いた。

罪のない軽い嘘に見える。

なぜこう書いたか。なぜ「見える」と書いたか。「罪のない」の部分についてではない。事実、罪のない嘘だ。そう「見える」のではなく、事実だ。しかし「軽い」のほうは、そうとは限らないという意味で「見える」と書いた。なぜか。
緑の嘘には、理由がないからだ。
美少女Lの嘘には、理由がある。自分の望む性的関係を結ぶことを拒絶したレイコに復讐してやろうという理由がある。その意図が正しいとされるかどうかはともかくとして、「憎い相手を陥れてやる」という意図は、正常心理として理解できる。それに対し、緑の嘘には理由が見えない。自分の父親の動向について嘘をついてワタナベをだましたところで、緑には何の利益もない。

虚言を「病的」と判定するときの、一つの基準が、「その虚言は、本人にとって利益をもたらすかどうか」である。何らかの利益を得るため、たとえば名声を得るため、金銭を得るため、地位を得るため、などの理由による嘘は、病的とはみなされない。単なる嘘つきとして非難されるのが常だ。しかし、真に病的とされる虚言は、嘘をついても本人に何の利益もないのになされる虚言である。このようなケースでは、なぜ嘘をつくのか、他の人には全く理解し難い。だからこそ病的とされるのである。

緑の嘘には、利益がない。美少女Lの嘘には、利益がある。すると病的なのは美少女Lではなく、緑のほうである。
というのが理屈だが、現実感覚としてはこの理屈は全く受け入れ難いものだ。何をもって病的な嘘つきとするか、それはかなり難しい問題なのである。

さらにいえば、利益があるか・ないかというのも、なかなか単純には判定できない。
緑の嘘には本当に利益がないのか。
たとえば、緑は父を深く愛しており、そんな父が、「愛する妻を亡くしたショックでウルグァイに行ってしまった」と信ずることが、緑にとって心地よかったという解釈も可能である。そしてそんな父を「信用している」という自分を作り、そういう自分をワタナベに見せることによって、ワタナベから好意を持たれようとしている、という解釈も可能である。このように深読みしていけば、嘘による利益はいくらでも想定することができる。すると緑の嘘は、本人にとって利益をもたらす正常範囲の嘘という判定に転ずることになる。

しかし、ワタナベが病院で見た、死の床にある老人は、本当に緑の父だったのか。実は父はウルグァイに行ってしまったというのが本当で、病院にいたのは赤の他人だったのではないか。
と、そこまで疑うと、何が何だかわからなくなってくる。

レイコについてもそうである。美少女Lは虚言者。だがその判断は、専らレイコの話に基づいている。レイコ自身が虚言者という可能性はないのか。ある。実は性的に誘惑したのはレイコの方で、それを拒絶した美少女Lに対してレイコは暴力をふるった。そういう美少女Lの話のほうが正しいという可能性を否定する根拠もまたどこにもない。あるいはレイコは虚言者ではなく、妄想を持っていてそれを語ったのではないか。

虚言の真実を追究しようとすると、どこまでも終わりのない迷路に迷い込む。

23. 2月 2014 by Hayashi
カテゴリー: コラム