ソプラノ歌手 中川美和のブログ

ソプラノ歌手 中川美和のブログ

「モーツァルトの旅」舞台裏② サリエリとレオポルドの事。

2015-08-11 23:24:22 | コンサートのご案内&ご報告
女声に続いて、男声の話。

モーツァルトのライバル・・・的なイメージがある、サリエリ役はバリトンの杉野正隆先生。
このサリエリという人は、皆さまご存知、映画「アマデウス」で有名な方ですが。

でもそのライバル役なイメージのままに脚本を書いてしまったら、ストーリーが「アマデウス」みたいな方向にしか行かないし。
どうしようかなーと思って、「アマデウス」のサリエリとは逆に、逆に…と描くことにしました。
尤も、それでもやはりお客さまのイメージのサリエリ像がありますから、
あまりに強く違和感を出さないように考えて、最初のうちは、モーツァルトと敵対しつつ音楽は認める、というスタンスで。

「アマデウス」のサリエリに近い状態から登場させて、あとはそこからどんどん変化させて、ひたすら人格者で、いい人、という方向に作っていきました。

そして、演じられた杉野先生にはあふれんばかりの真面目な雰囲気があって・・・だから逆に、ギャップを期待して、コミカルな部分をお願いしたら面白いかも・・・と、思ったりして。

そこで、少々コミカル部分を担当して頂きました・・・ありがとうございます!
台詞稽古の時から、他のキャスト達から
「久しぶりに『アッパラパー』って言葉きいたんだけど」とか
「杉野先生に、この台詞言わせんのか・・・!笑」
などのお言葉を頂きました・・・笑

杉野先生、ありがとうございました!あそこまで一気に笑いを取って下さるとは思わなかったです・・・
でもですね。時間の都合でカットした台詞があったのですが・・・実はそれがあると、めちゃくちゃかっこいいんだけどな…サリエリ。
無念…

で、サリエリのテーマ曲はコンサートアリア「彼を振り返りなさい」。
これを歌った歌手の名前忘れちゃったんですが(ごめんorz)、
その人はモーツァルトがすごく評価していた人なんだなーというのは、楽譜を見ればよくわかります。

改めて「彼を振り返りなさい」の楽譜を見ると、派手な音の跳躍、細やかな技巧・・・とにかく華やか。
そしてそうとはきこえない複雑な進行。一見ただの繰り返しに聞こえる所も、そうではない。
私がバリトンだったら、この曲絶対歌いたい!
で、今さらこんな事を言うのは失礼なんですが、杉野先生の声は本当に気品があって、美声で・・・
私、杉野先生の声でどうしてもこれ聴きたくて・・・どうしてもこれ歌ってほしくて、キャー(゜∀゜)ノみたいなノリでお願いしてしまいました・・・笑

そして、“Rivolgete a lui lo sguardo”と後半、“Bella Bella~”以降の歌詞は、ちょっと劇の中身とひっかけてます(´ω`)

あと、お気づきのお客様も多かったと思いますが。
劇中でサリエリがヨーゼフ二世に対して歌うアリア、「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」は、
サリエリがフィガロ、モーツァルトがケルビーノのポジション、という二重構成になってます。
ちなみにヨーゼフ二世は伯爵、ダポンテはバジリオです。
私はケルビーノを演じてるみたいで楽しかったな―

ちなみに余談ですが、実在のサリエリとモーツァルトは6歳しか違わないんです。

映画「アマデウス」のサリエリも、もう少し歳上てイメージありますよねー。
で、今回のサリエリはイメージはもっと年が離れてる設定で、完全にモーツァルトの保護者状態…笑
師と弟子、みたいな関係性でした。
実はサリエリの性格づけのモデルに、ちょっとだけ私の先生の雰囲気も入れてるのです。ふふふのふー

さて、モーツァルト一家のパパ、レオポルドについて。
彼は子供時代に登場しますが、すぐに死んでしまいます・・・
レオポルドは象徴的な役なので、そうでもしないと目立ち過ぎてしまう。バスの声はやはりえらい存在感が出てしまうから。

しかもレオポルド役の下瀬太郎さんは、身体もすごく大きいし、とにかく圧倒的な存在感。
なので、レオポルドと騎士長をリンクさせての、『地獄落ちの場』をお願いしました。
『地獄落ち』は私のお気に入りなので、演奏できて嬉しいー!迫力ですよねぇ、この場面・・・
通常のガラコンサートなどではなかなか演奏されないのですが、あまりクラシックを聴いた事のない方にも、この場面を違和感なく聴いて頂けたようで、すごく嬉しかったです。

アンケートにも「鳥肌が立った」と書いていただけたりして、嬉しかった。
『ドンジョヴァンニ』を一本観なければ、なかなかこの場面を聴く機会はないものね。
このオペラで一番好きな場面です!絶対かっこいいものー。

で、下瀬レオポルドには、最初と最後に『後宮からの誘拐』のオスミンの歌をお願いしました。
この曲は、この作品の中でとても大事な、一つの象徴となる曲なのです。

これは、本当に不思議な曲で。ちょっときくと明るかったりするのだけど、めちゃくちゃ寂しくなる。コミカルなのに切なくて。とてもシンプルな旋律で。
明るい場面にも、悲しい場面にも、心にすとんと残る、モーツァルトの凄さがよくわかる曲です。
でも、これをガラコンサートで演奏する事はまずないから・・・

お客さまには、このオスミンの歌と、先ほどの地獄落ちの場、この二つの曲を聴いていただきたくて下瀬さんにお願いする事にしました。
モーツァルトが死ぬ場面では、死んだ父レオポルドがこのオスミンの歌を歌いながら、息子を迎えにきます。
この場面は泣いているお客様がたくさんいらしたから、この歌の素晴らしさはお客さまの心に届いたのだと思います。
下瀬さん、ありがとうございます~!

ところでちょっと書きましたが、下瀬さんは、とにかく身体が大きいんですわ。
で、私は皆さまご存知の通り、とにかく小さいんですわ。

お稽古の時、姉ナンネル加地さん、父レオポルド下瀬さん、そしてモーツァルトの私、の三人が並んでいたら。

コンスタンツェ末吉さんとソプラノ歌手紗綾子ちゃんが、ウフフキャッキャとか何とか、なんか盛り上がってんな―、と思ってよく見てたら、
手を上げたり下げたりして、
(加地さん) (下瀬さん) (私)

と、やっていた。

うん、まあ、わかりやすいサイズだよね・・・笑

私と下瀬さん、本人同士も向かい合った時
「・・・でかっ。」「・・・ちっちゃっ。」と、思わず呻いてしまったしね・・・

・・・どっちも規格外です・・・

長くなったので、二人の台本作家、ダポンテとシカネーダーの話はまた次回~。



コメント欄開きました♪一言下さるとうれしいですブログランキングに参加してます。ポチっと!クリックして下さいね~。