YOSHIの果てしない旅(人々との出会い、そして別れ)

ソ連、西欧列車の旅、英国滞在、欧州横断ヒッチ、イスラエルのキブツ生活、シルクロード、インド、豪州大陸横断ヒッチの旅の話。

ロンドンの旅~(その1)ヴィクトリア駅で捜し回る

2021-08-23 09:29:36 | 「YOSHIの果てしない旅」 第5章 イギリス
△シーラの自宅にて~1961年、15歳で高校1年の時の写真

          ロンドンの旅
  
・昭和43年8月24日(土)晴れ(ヴィクトリア駅で捜し回る)
 朝、早めに起きた。身体を拭いて頭を洗い、そして髭も剃った。今日、7年間文通を続けているSheila Morgan(シーラ・モーガン)に会う為、イギリスへ行く日であった。   
 午後0時30分の列車であるが、早めに出立する事にした。マサオの好意より部屋を無料で使わせてもらった上、とてもフレンドリーに接してくれて本当に有り難かった。そんな彼と別れるのは、名残惜しかったが、行かねばならなかった。
 別れる際に彼は、「私はもう少し経ったらこの部屋を去り、スペイン領の〝ある島〟(ヒッピーのユートピアの島)に行くが、良かったらヨシ(私の愛称)も来いよ。そこは別天地だ。モロッコも面白い所だから、行ければ行った方が良い。ヨシに又会えることを楽しみにしているよ」と言って、その島の場所を教えてくれた。
「有り難う。これがイギリスの彼女の住所ですが、私に後で手紙を下さい。機会があったら、その別天地やモロッコの方へ行って見たいと思っています。本当に有り難う御座いました。私はマサオに何も土産を持って来ず、すいませんでした。その代わりとは何ですけれども、この懐中時計を使って下さい」と言って彼に懐中時計を差し出した。彼は最初断ったが、「こんな大事な物を有り難う。元気で旅をして下さい」と言って有り難く受け取ってくれた。
「有り難う。マサオも元気で」握手をして私は部屋を出た。ドアの前で彼は見送ってくれた。薄暗い階段を下りながらマサオに、「マサオ、色々有り難う。元気で、さようなら」と手を振った。マサオも手を振って応えてくれたが、その顔は何故か憂い、寂しさを感じた。外へ出てからも何度も振り返り、彼のアパートメントハウスを見上げた。
 私はマサオが健康で、そして自分の〝アイデンテティ〟(自分が自分であると言う事)をいつまでも持って貰いたい、と願うであった。本当に名残惜しい人であった。
しかし、今日もパリは華やかであった。気分は既にロンドン、そしてシーラであった。北駅への歩行も軽やかであった。
 
 北駅前辺りで軽い食事をして、12時30分発の列車・ゴールデンアローに乗った。ジーゼル機関車が牽引する列車は、一路Calais(カレー)へ向かった。途中から牽引は、蒸気機関車に変わった。久し振りの汽車の旅であったが、フランスの主本線でまだ、蒸気機関車が走っているのにビックリした。 
 カレーから連絡船に乗り換えた。船は間もなく出航したのだが、船内は入国係官の入国手続きで、何となく騒然と緊張感が漂っている雰囲気があった。と言うのは、イギリスは西ヨーロッパの中で最も入国が厳しかったのだ。イギリスは観光目的の場合、査証なしで3箇月間滞在出来るのは承知していた。私は出来る限り長く滞在したいし、可能であれば外国人用の語学学校へ行きたいと漠然と思っていた。そんな訳で、Immigration Application(入国申請書)に滞在日数を『1年間』と記入して入国係官に渡した。
 しかし、滞在費用(入国係官が1人1人所持金をチェックする)や査証なしの観光目的の為、係官は3箇月しか許可してくれなかった。マサオの例でも分るように所持金不足であると、たとえ観光目的であっても上陸出来ず、そのまま送り返されてしまったのだ。イギリスは、ある意味でソ連より厳しい入国手続きであった。
 船の中で少々のフランスのお金とトラベラーズチェック10ドル分を両替して、£5.15s.6d(言い方~5ポンド15シリングアンド6ペンス=5,774円)のイギリスのお金を受け取ったが、イギリスのお金の計算方(換算)が他国と比較して大変複雑で、良理解出来なかった。余談ですがこの後、何日か、何回か買物をしてやっと慣れて来るのでした。
 イギリスのお金の単位は、1pound(1ポンドは約1,000円。正確には1,004円)は20shillings(1シリングは約50円)、20シリングは240pence(単数はペニー、複数になるとペンスと言う。それで1pennyは4円)、240ペンスは960farthings(1ファースィングは約1円)であった。通常の呼び方の他に硬貨の種類によって、sovereign(「ソヴリン」と言って1ポンドの金貨)、crown(「クラン」5シリング)、florin(「フロリン」2シリング)、half-crown(「ハーフクラン」2シリング6ペンス)等の言い方がある。普通の硬貨の種類は5s、2s、1sそして6d、3d、1/2d、1d、がある
 イギリスのお金でその他に注意する事は、£は数字の前に、sやdは数字の後に書く事や、ペンス(単数はペニー)の前に「アンド」を入れて読む等々がある。従って当分の間、私はイギリスのお金の計算方に悩まされるのです。何はともあれ、入国手続き、及び両替が済んだので、私はドーバー海峡の海を眺めて過ごした。
                *明日の(その2)へ続く