人は近親者亡くした後、何か少しでも不可解なことを体験すると、どうも其の事に関連づけをしてしまうようです。
『お帰りなさい』
それは僕の母が亡くなって四十九日もとうに過ぎたある晩のことでした。実家で父ととりとめの無い話をしながら食事をしていた時、
「バタン!」
玄関の扉の閉まる音がしたのです。
「あれぇ、玄関は鍵閉めた筈やけどなぁ。」と父
「ふむ。さっき確かめたでぇ。」と僕
実は近所に泥棒が入ったことがあるので、少し用心深くなっています。
にも拘らず賊が侵入した・・・?
父は木刀を持って玄関に向かいました。
強気ですねぇ、
何せ剣道の有段者で、紀元二千六百年の地域の剣道大会では優勝しています。
とはいえ、年齢が年齢ですから一応僕が先に立ちます。
玄関に立ってみましたが、人の気配がしません。
『鍵』も確認しましたがしっかり掛かっています。
念のため玄関近くの部屋も人がいないか確認しましたが、
誰もいない。
扉の閉まる音が聞こえたことを二人で確認した後、父は呟きました・・・
「お母さん、帰ってきたんやわ。」