ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

絲山秋子を読んでジム・ジャームシュを観にいこう

2006年05月17日 | 
絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」(文春文庫)を読む。小説との幸福な出会いに感謝だ。

妙な純愛ものを書いている最近の男性作家にうんざりしていたので、この絲山秋子さんみたいな作品を読むと、いい小説に出会えたと安堵する。この力の抜けた感じはちょっと抜けられなくなりそうだ。凡庸な作家ならもっと書きすぎるところを、この小説に出てくる痴漢さんのように寸止めできるところがすごい。登場人物たちが蒲田(最高にシュールな街としか思えない)の中で見事に生きて完結しており、次にどうなるのだろうという読む側に未練を残さないところもいい。

「イッツ・オンリー・トーク」を原作に広木隆一監督で「やわらかい生活」として映画化が進んでいるらしいが、この世界を映像化するなら、オタール・イオセリアーニかジム・ジャームシュにしてほしい。この小説自体、「ストレンジャー・ザン・パラダイス」や「コーヒー&シガレッツ」だし、カメラ移動でワンシーンワンショットのような流れでシーンをつないでいくイオセリアーニのゆるいテンポがピッタリだと思う。そうだ、「ブロークン・フラワーズ」を観にいこう。
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コルトレーンとマイルスのライヴ盤

2006年05月17日 | 音楽
 タワレコでマイルスの「ミュンヘン・コンサート」3枚組みが1,480円とお得な値段だったので、コルトレーンの「ライヴ・アト・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード マスター・テイク」とあわせて買った。

 「ミュンヘン・コンサート」は1988年のコンサートライヴで、「ライヴ・イン・ミュンヘン」としてDVDでも出ていたし、WOWWOWでも以前放映していた。マイルスが亡くなる3年前のライヴだが、音もよく、かなり元気なマイルスが聴ける。ボーナストラックとして1970年のワイト島の35分マラソン演奏のライヴが収録されているが、これと比べるとマイルス自身のトランペッターとしての衰えは致し方ないにしても、吹かないことで存在感を示し、シンプルにして先鋭的なトランペットの1音でバンドの流れを変えるあたりに健在振りが示されていて、こんなジャズマンはマイルスしかいないと改めて感じたのだった。

 コルトレーンのアルバムは、従来の「アト・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」に「インプレッションズ」からインプレッションズとインディアの2曲を加えたものだから、1961年11月1日から4日までのライヴのうち、2日と3日のいいとこ5曲をまとめたアルバムというわけだ。2日は「朝日のようにさわやかに」「チェイシン・ザ・トレーン」、3日が「スピリチュアル」「インディア」「インプレッションズ」だ。4日間で22曲やったというからすごいライヴだ。
 
 チェイシン・ザ・トレーンが圧巻。コルトレーンがソロのときはピアノレストリオ状態になっていて、ほぼドラムのエルビン・ジョーンズとの一騎打ちの様相を呈していて、始まりはいまいち調子の出ないトレーンをエルビンが扇動して次第にトレーンが過激さを増していく過程を聴けば、このジャズ格闘技戦は引き分けだけれど判定でエルビンの勝ちとしたい。

 ライナーノーツの冊子にはコルトレーンの笑顔の写真が2枚掲載されていた。これまでは大体演奏中の眉間にしわ寄せた表情か、沈思黙考の修行者のような表情の写真が多い中で、この写真のコルトレーンはとてもいい顔、そうだ、朝日のようにさわやかな表情をしていたのだった。
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