ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

先生といっても、あのセンセイではありません。

2007年05月18日 | 
 ヴィム・ヴェンダース監督「東京画」で、インタビューを受けた厚田雄春カメラマンが、小津監督の思い出を語りながら、感極まって「もう勘弁してください」と涙ぐむシーンは感動的である。原節子のいない小津映画はあっても、厚田雄春と笠智衆のいない小津映画は考えられない(もちろんそれは存在するのだけれど)。笠智衆著「小津安二郎先生の思い出」(朝日文庫)には、厚田カメラマンと同様、小津監督に連れ添ってきた笠さんならではのエピソードが、かなり補足され、編集されているとはいえ、独特の語り口を生かした文体で訥々と語られ、一気に読了してしまう。

「東京物語」で、老夫婦が熱海の海岸の防波堤に腰掛けているシーン、笠智衆は背中を丸めて年寄りらしく見せるために、座布団を背中に入れたのだという。なるほど、そのシーンの写真を観ると、そんな感じがする。笠さん自身の小津映画ベスト1も「東京物語」なのだとか。監督ではなく先生と呼ぶ、純心とでも言えるような敬愛の念にあふれたこの本は、読み手の心にも静謐をもたらしてくれるのだった。

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