「『草枕』変奏曲」読了後、もっと興奮する本に出会った。新関公子著「「漱石の美術愛」推理ノート」(平凡社・2,000円)だ。漱石に関する研究書は数多あるが、新関さんは美術史家といった具合に文学以外の分野からのアプローチのほうがとても新鮮で、漱石の世界を鮮やかに描き出してくれる。
漱石の小説には油絵から屏風絵に至るまで古今東西の絵画が頻繁に登場する。あの「坊ちゃん」でだって赤シャツがターナーを持ち出したりする。「草枕」あるいは「夢十夜」のジョン・エヴァレット・ミレー(写真:美しき土佐衛門?「オフィーリア」。この絵では憐れが足りないと漱石はいうが)、「三四郎」の青木繁など、こうした作中に登場する絵画を特定したり推理したりするのはもちろん、作品のイメージやシーンにも絵画から着想を得ているものが少なくないと推理していくのである。
小説に登場する絵画作品を実際に写真で見るだけでも楽しいが、「三四郎」の池の女の登場場面は藤島竹二の「池畔納涼」、美禰子や美禰子をモデルにした「森の女」は黒田清輝の「湖畔」の女やラファエル・コランの「帽子を持つ婦人」からイメージを得たのではないかといった推理は実に手際よく、その実際の画像を見せられると、漱石の世界が一段と魅力的に見えてくるのだった。
この本自体が「空想漱石美術館」であって、こんな美術展でも作品集でも企画したらさぞかし楽しかろう。それにしても漱石の博覧強記ぶりは、絵画への造詣をみただけでもすごいと改めて思うのだった。
漱石の小説には油絵から屏風絵に至るまで古今東西の絵画が頻繁に登場する。あの「坊ちゃん」でだって赤シャツがターナーを持ち出したりする。「草枕」あるいは「夢十夜」のジョン・エヴァレット・ミレー(写真:美しき土佐衛門?「オフィーリア」。この絵では憐れが足りないと漱石はいうが)、「三四郎」の青木繁など、こうした作中に登場する絵画を特定したり推理したりするのはもちろん、作品のイメージやシーンにも絵画から着想を得ているものが少なくないと推理していくのである。
小説に登場する絵画作品を実際に写真で見るだけでも楽しいが、「三四郎」の池の女の登場場面は藤島竹二の「池畔納涼」、美禰子や美禰子をモデルにした「森の女」は黒田清輝の「湖畔」の女やラファエル・コランの「帽子を持つ婦人」からイメージを得たのではないかといった推理は実に手際よく、その実際の画像を見せられると、漱石の世界が一段と魅力的に見えてくるのだった。
この本自体が「空想漱石美術館」であって、こんな美術展でも作品集でも企画したらさぞかし楽しかろう。それにしても漱石の博覧強記ぶりは、絵画への造詣をみただけでもすごいと改めて思うのだった。
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