ちゅう年マンデーフライデー

ライク・ア・ローリングストーンなブログマガジン「マンフラ」

ラブ&ピースの欺瞞をぶち壊したマイルス

2005年12月21日 | 音楽
 1970年8月イギリス南部のワイト島で60万人を集めて開かれたロック・フェスにマイルス・ディビスが出演したときの38分のライヴを収めた「miles electric:a different kind of blue」をBSで見た。演奏プラス当時マイルスにかかわったミュージシャンのインタビューで構成したもので、DVDも出ているらしいが、この伝説的なマイルスのライヴを完全収録した映像は貴重であり、感動的だ。

 ラブ&ピースをうたって前年のウッドストックの熱狂を再びと開かれたコンサートだが、マイルスはそんな白人たちの浮ついたお遊び気分のコンサートを一発のトランペットの音で粉砕すべく、戦闘的に前衛的に闘い、ロック野郎たちを屈服させた。まさに帝王マイルスの誕生だ。

 マイルスは69年に20世紀音楽の最高峰に輝くといってもよい最高傑作にして時代への戦闘宣言「ビッチェズ・ブリュー」を発表する。ワイト島ではそのアルバムに収録された曲目を中心にメドレーで休むことなく演奏し続ける。しかもたった7人で。まさに7人のサムライだ。
 
 ドラムス:ジャック・ディ・ジョネット、ベース:デイヴ・ホランド、エレピ:チック・コリア、オルガン:キース・ジャレット、パーカッション:アイアート・モレイラ、サックス:ゲイリー・バーツという布陣。マイルスは音のジャブ、フック、ストレート、アッパーを自在に繰り出し、トランペットの短いフレーズでアジテーターの役割を果たしながら過激な音と闘争の渦へと演奏者と観衆を扇動する。マイルスは何と闘っているのか。世界のすべてとだ。そして一気にJAZZからも突き抜ける。
 
 次第に陶酔していくキース、アイアートの表情、どうだ参ったかといわんばかり不敵な笑みを浮かべながら過激なリズムを紡ぎ出すディ・ジョネットとホランド。演奏の最後は、マイルスのライヴでおなじみの「Theme」で締めくくるウイットと余裕。35年前!のライヴだが、ここで演奏されている音楽は、「ビッチェズ・ブリュー」というアルバムも含め時代を超えてストレートに心に突き刺さる。いまもなおマイルスは真の前衛なのだ。

 だから私は言いたい。すべての人がまず、「ビッチェズ・ブリュー」を聴け!と。

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