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ちゅう年マンデーフライデー

中・低音だけで聴かせるチェット・ベイカーのトランペット

 オランダの女性ジャズシンガー、レイチェル・グールドとチェット・ベイカーの1979年のコラボアルバム「all blues」がなかなかいい。両者とも結構下手くそな演奏なのに、なぜかいい。かなりレアなアルバムらしいが、実際このオランダの女性シンガーは知らなかった。音程ははずれるし、のりは悪い。素人っぽい初々しさくらいしかこれといった魅力はないのだが、それでもチェットがバックアップしていると、クールなジャズアルバムになってしまうから不思議だ。

 もちろんチェットも曲によって演奏のクオリティはばらばら。「ラウンド・ミッドナイト」は、テーマをトランペットでは吹かず、スキャットで演奏し、いい味を出しているのだが、むしろラッパでは、テーマを吹くほど音が出なかったのではないかと思う。アルバムのレヴューによるとアンニュイでデカダンなチェットのトランペットなどと書かれているけれど、むしろこのアルバムのチェットは、音は出ないけれど、ラッパを吹くことに喜びを感じている風な、明るく快活な印象ではないか。「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「ラウンド・ミッドナイト」とか沈む曲があるからかもしれないが、これらも決して暗くしずんでいるわけではない。中・低音だけでもトランペットのアドリブを聴かせることができる稀有な例かもしれない。ここで、もっと高い音を出してくれたらという場面は何度もあるけれど、よれよれのチェット・ベイカーを味わおう。

 そういえば、近々WOWWOWで1979年のチェットのライブを放映するらしい。1979年は、チェットがヨーロッパに移って間もない頃で、再出発でやる気になっていたのかもしれない。 

 このアルバムと一緒に購入したヤエル・ナイムのアルバム、例のマックのCFで使われている「New Soul」がよかったので買ったが、ネットでこの1曲だけダウンロードが正解なのだった。
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