Storia‐異人列伝

歴史に名を残す人物と時間・空間を超えて―すばらしき人たちの物語

葡萄美酒夜光杯

2007-09-16 20:01:42 | 東洋のひと/中国
庭の葡萄が実ってきた。「たわわに」といいたいところだが、小鳥がつついたり、傷のついた玉は落ちたりで、たった「一房のぶどう」。まあそれでも、「西域」の感じはでるかなあ。これでも「巨砲」だから、「弥助砲」より上だ!?イチジクはいやになるほど成るが、葡萄は簡単じゃないな。何も手入れせずだから、しょうがないか。

くだものといえば、ボクの住む宮城の利府というところは梨の産地、昔ながらの長十郎や、幸水など、さて、二十世紀という梨は、名前どうなったかな。今年の台風でも、風あたりの強い場所では落果して売り物にならず、お天道様の下での生産はたいへんだ。古くからの谷間の梨畑は無事、毎年いまごろから十月いっぱい、幹線道路沿いに梨売りの店が並ぶ。

その梨を買って、隣町にある老母がお世話になっている介護施設に行ってきた。春先、胸椎圧迫骨折で入院した病院では毎日帰ると大騒ぎ、親切な介護施設の半年で車椅子で動き、歩行訓練もするまでになった。が、排泄から入浴まですべて四六時中手助けが必要...この間バアちゃんが来てくれたのよ。(んっ???) あっ、そうね、七四で死んだんだっけね。(おっと、三十年前のことだ...)、いやなヒトもいるのよ、床にツバ吐いて、昔エライ人だったらしいけど...
敬老や介護、C社がどうのと、世の中やかましいが、月数十万、介護保険で三分の二ぐらいカバー、ケアマネさんはC社、ここよりいいところなさそう、空きもないし、どーするか…これが敬老の日、なってみての当事者しかわからぬ個別の実態。

そうだ、葡萄のことだった。葡萄は数年前、一房立派についた鉢植えからだが、葡萄の美酒 夜光の杯で… これが長大な目標、ボケないうちに完成させないと。

 
 涼州詞  王翰

葡萄美酒夜光杯   
葡萄の美酒 夜光杯
欲飲琵琶馬上催   
飲まんと欲して琵琶馬上に催す
酔臥沙場君莫笑   
酔うて沙場に臥すも君笑う莫れ
古来征戦幾人回   
古来 征戦 幾人か回る
 
  芳醇なワインを満たしたギヤマンの杯
  飲もうとしていると、馬上で琵琶をかきならして酒興を促してくれるものがある
  このまま酔いつぶれて沙漠に倒れ伏しても、君よ、笑ってくれるな
  昔からこの辺境に出征したものが、何人生きて帰れたというのだ
    (松枝茂夫 「中国名詩選」) 
      (「ひとりよがりの漢詩紀行」サイトより)
 
...「夜光杯」の解釈については、玉杯だという説もあれば、当時めずらしかったガラスの杯だという説もあります。「ギヤマンのさかずき」と訳したのを読んだおぼえもあります。...
王翰は、あとにもさきにもこの「涼州詞」一作しか作品がないのです。この詞をのこすために生まれてきたようなものです。...作者が無名なのに、作品がこれほど有名なのは、やはり結びの句が人の心をうつからでしょう。唐以降、なんど戦争があったかもしれません。出征前の軍人は、酒を飲むと、いつしかこの結びの句をくちずさんだでしょう。
始まりの句も忘れられません。葡萄の美酒は、当時としてはたいそうエキゾチックなものでした。それに、夜光の杯。
― いかにも妖しの光を放っているようではありませんか。...

(陳さんは、夜光杯の工場・夜光杯廠を訪れる。夜光玉という玉石から作られる、ということだった。)
いろんな色があって、共通しているのはところどころに透明な部分があって、暗いところであかりや月光をうけると、キラと光ります。(陳舜臣 「敦煌の旅」より)


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「敦煌の旅 陳舜臣 平凡社 0095‐826100‐7600」
「長安の夢 陳舜臣 読売新聞社 ISBN4‐643‐95120‐6」
コメント (2)
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