『不実な美女か貞淑な醜女か』で読売文学賞受賞、これがデビュー作、翻訳・通訳のメカニズムからその背景にある比較文化論というのか、真剣で中身も難しい。
バイリンガルどころかトライリンガルまで多言語を扱える人は増えているようだが、言葉の習得はまず母国語をしっかり身につけるのが何より先決というのが米原さんの持論。
「日本語の下手な人が学ぶ外国語は、日本語よりさらに下手にしか身につかない」
翻訳・通訳ギョウカイさん『通訳・翻訳ジャーナル』編集部サイトに、彼女の追悼特集・写真があった。
没後、この夏に出た「他諺の空似 ことわざ人類学」をナナメに読む。なにせ、わが日本の諺に寄せて世界中の似たような・似て非なることわざ...ここ3年ぐらいの雑誌への連載からのものだが、この本のなかで彼女は自分の残り時間を意識したのか、もう本気で鋭く怒ってくれた。なにに?
覇権大国の横暴と、無能な国家指導者・暴君、節操のない日本の指導者...
そして、大晦日の新聞には、イラクのフセイン絞首刑のニュース。これで、あのあたりの混迷の泥沼はいっそう深まるだろう。どこに大量破壊兵器があったの?劣化ウラン弾をばら撒いたのはだれ?日本では、捨てる神あれば拾う神あり、しかし一神教、宗派・民族の対立ではそう簡単にはいかぬのだ。
アメリカの現大統領も末期的症状、「Mad Emperors」にアメリカのひとは最近George Bush というのも入れるみたいだ。「帝政教育委員会」
こうなると、ジェフリー・アーチャーがすでに小説で実現させたように女性大統領が待たれる。
だいたい大昔から、ペルシャ・パルチア征伐などを思いついて、うまくいったためしはないのだ。 できたのはただひとり、天才・英雄アレクサンドロスのみであろう。ブッシュより、妻の鑑・オクタヴィアが従ったアントニウスのほうが、数段可愛げがあった。
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(「どんどんよくなるマリィの気炎」遺作に寄せて 阿刀田高 より)
...米原さんはロシア語を中心に多くの外国語に堪能な人であった。外国語を、ある程度の深さにおいて、つまりその背後にある民族の歴史・風俗・考え方をとりあえず知って理解するには、その人たちが日常的に用いていることわざのたぐいに通じることが良策なのである。...
言語感覚に優れていた米原さんは、たぶん無意識のうちにも、この方法を体得していたにちがいない。この『他諺の空似』を読むと・・・もちろん執筆のためにあらたに調査して学んだ部分が多々あることを疑わないが、それより先に知らず知らず長い年月をかけて培った知恵があって、それが鮮やかに開花していることがよくわかる。
...一行のことわざでは一面しか示しえない。対立する考え、視点の異なる見方、いろいろあって当然。それがいくつものことわざに反映されているわけだ。
考えてみれば、小説もその通り、たとえば、一人の実在の人物を書いても、まったくちがう人格、まったくちがう作品、いろいろあって当然だし、事実、いろいろ実在している。それが、小説というジャンルの面白さである。...
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ことしも、「終わりよければ全てよし」としたいなあ、きょうも母を「ビョ―インに連れてってやって」と妹からの電話。昨日まであっちの近くの整形で電気マッサージなど?やってたはずだが、ン、今日も?聞き返せば..なんと「美容院」、しかも行き着けのところでないとダメとがんばって予約まで入れていた。
「こんなあたまじゃねえ、病院でもみんな見てるのよ」「だーれも見てないって!」
ま、しょうがないので、白髪染め・パーマに連れてって結局半日がかり。こんなトコのパーマ屋に来てたんだ、そばに「西御城下」の道しるべ石。このあたりも古い街。
でも一時どうなるかと思った母もヨチヨチ歩いてはいる、あたまじゃなくて髪に気を遣うぐらいだから、本年の終わりは(ブログ総集編で?)よしとするか。
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「不実な美女か貞淑な醜女か 米原万里 新潮文庫 ISBN4-10-146521-5」
「他諺の空似 ことわざ人類学 米原万里 光文社 ISBN4-334-97504-6」
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