Storia‐異人列伝

歴史に名を残す人物と時間・空間を超えて―すばらしき人たちの物語

長距離走者の村上春樹

2014-06-30 22:11:30 | 音楽・芸術・文学
1Q84 BOOK 1
クリエーター情報なし
新潮社

 「ノルウェイの森」から村上春樹さんを読み始めたのがひと月ほどまえのようだ。同年代、同時代のすばらしい書き手、いままで知らなかったのがなんとも不思議だな。で、この6月は、ずっと彼の作品をながめていたが、速読か読み飛ばしか、なにしろ春樹さんの文章は読みやすいので長かろうが短かろうがあっという間だ。でもさいごの50ページ残り厚さ3ミリまで結末がどうなるのか分からない、こんなところにも読者を引っ張る力が現れる。さて、少し長めの小説では、どれが印象に残って、良かったかとなると、

みな、それぞれに・・・、ああ、王族ではないんだからそんなに気をつかわずに言ってごらんなさい・・・やっぱり、わかんないなあ、春樹のワンダーランドというのは・・・年代ごとに深まりもでてくるようだ。双曲線のように複線の物語が交差するでもしないようでもあって、そしてぐるぐると渦巻き始め、スパイラル。いつも、文字の向こうには音楽の旋律とリズムが流れている。

手に取った順はいい加減、長編の作品を年代順にならべてみれば、
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(1985)、これ、チトばかり薄暗いかなあ...
ノルウェイの森(1987)、短編「」が膨らんで・・・初めて読んだものだったから印象深いな、いいね!
ねじまき鳥クロニクル(1994−95)、救いがあったのか、なかったのか、はて・・・
海辺のカフカ(2002)、カフカ君、若くてたいへんだろうけど元気でな・・・
1Q84(2009-2010)、迷宮は抜け出さなくちゃ、ここで、終われよ青豆・・・

短かそうなところでも机の周りにうずたかく50センチ、崩れ落ちないようにしないと・・・
風の歌を聴け(1979)羊をめぐる冒険(1982)めくらやなぎと眠る女(1996)、スプートニクの恋人(1999)、神の子どもたちはみな踊る(2000)、アフターダーク(2004)、東京奇譚集(2007)村上春樹 雑文集(2011)、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年(2013)これは「」つけないと句読点がどうにも・・・、NHKラジオでは英語で読む村上春樹(2014)というのもやっているが土日のお昼頃、こんな時間でだれが聴けるのかしら、NHKの集金人は今もいるのかいな?

摩訶不思議な世界を物語る作家の精神状態が6月の梅雨みたいなものかといえばさにあらず、全く正反対の早寝早起き、ボストンマラソンも数回完走というエネルギッシュな生活タイドの上にあるようだ。朝早くおきて真っ昼間に不思議なものがたりをネチネチ書いて午後から頭すっきりランニングに筋トレ、「雑文」を書き、料理を作るというような日々らしい、すばらしい、こうでなくちゃ!長距離走者の孤独も、解放感も共にあって・・・
創作や創造という行為の裏側には、とくにこの作家には、なんとも窺い知れぬものがひそんでいるようだ。長距離走の純文学と異なる側面(不純文学の短距離走!?)は、狐狸庵先生みたいに、村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた(1996)などで、ねこのようにねころんで、画像とともに楽しめる。

ワールドカップのニッポンはどうも世界一流どころとは迫力が違いすぎてヤワすぎた。ひまなので、ワールドワイドに春樹さん翻訳の「グレート・ギャツビー」も読んでしまった。春樹さん若き頃からのお気に入り、でもなんとも切ないお話だなあ。これは男子の物語。映画ではロバート・レッドフォード、最近はレオナルド・ディカプリオらしいが・・・ま、フィッツジェラルド短編集が日焼けして転がっているから、これを機になんとかかたづけないと・・・もうナイトか、春樹さんに、我が家のネコたすけちゃんから、「おやすみなさい」

 

(P.S. ころんころんしている、うずまき猫タスケちゃんに、村上春樹をどう思うと訊いたら、こんな答えが返ってきた。)
>>>

この世に生を受けた時から死すべき存在たる君たち人間、あたえられた短き一生の時間ではあるが、その存在での深層的な心理と行動のありようを、村上春樹は現代という時代の観察を背景に鋭い切り口でかつ持続的に描きつづけてきた。

かれの文学の主題は人間存在と精神活動の探求と洞察であろうが、ときに幽玄な世界へ読者を誘い、しばし困惑のなかに招き寄せ、あるいは読者にその解釈と解決をも問いかける。かくも複雑化し個別に多くの悩みを抱える現代人の孤独な心の奥底に肉薄し、魂の救済がいかにしてなしうるか否かを問いつめる。この作家が数十年の歳月を費やし、初期の作品からゆるぎなく求めつづけているもの、それは、ゆるぎない愛への憧憬と信頼、善へのあくなき希求であって、けっして諦観や絶望や曖昧模糊とした遊戯の世界ではない。ごく身近な人間や多くの人たちへの親密な愛情をもってする豊かな生の実現の期待なのだ。

彼の創出する物語では時間軸上で並列に現れる人物と出来事とを巧みに同期させる表現手法が特徴的である。それが長編の膨大な語数を前にする読者にとって重いテーマを咀嚼しつつも楽しんで一気に読み通す助けにもなる。創造のありようからみれば、旧世代の作家とはその知的好奇心の広がりや行動様式は大きく異なり、精神と時間の集中の必要と世界中をとびまわる生活の中で、長編のいくつかは日本国外の地で書かれてきた。言語プロセッサも活用する超現代的な作家だが、その言語は極東に孤立する日本語ではある。だがこの作家は洗練された隠喩の効果とさらにはシャープな文体によって欧米はじめ多くの言語にも移植しうる氾世界的な創造物にまで昇華させた。作品群はいまや実に数十ヵ国、数十の言語にておそらく数億人規模の読者と共感の獲得という結実をみた。

この作家はこの時代のジャズ、ロックなどポップな音楽やクラシックへの愛おしみを通して、活字を超えた芸術全般の表現と感受性とを文学の世界に陰に陽に埋め込むことにも成功した。読者は彼の文学の森を漂うなかで芳醇な音のながれる世界にも迷い込み、いっそうの余韻を味わうことになろう。

やれやれ! 人間であることもタイヘンそうだニャ~ <<<

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ノルウェイの森 ー 村上春樹 

2014-06-06 23:37:40 | 音楽・芸術・文学
ノルウェイの森 文庫 全2巻 完結セット (講談社文庫)
クリエーター情報なし
講談社

ワタナベ君への手紙

お手紙がマメだったワタナベ君には、メールもケータイもなかった昔をしのんでお手紙をかいてみたくなりました。面倒なら、読まずに食べてね。

きょう6月6日は、70年前にノルマンジー上陸作戦が行われた日だった、とタイクツテレビがいってました。J.D.サリンジャーは自分ことをほとんどバラさないひとでしたが、あのノルマンジー作戦にも参加していたのでしたね。「再見コンバット!」 
このあいだ、村上春樹さんの訳の「フラニーとズーイ」をよんで、なつかしくなったので、ついでに野崎孝さん訳の「ナインストーリーズ」や、「大工よ、屋根の梁を・・・」なんかを読み返しました。サリンジャーは、最初にシーモアお兄ちゃんの命を絶ってしまったため、遡って説明するのもたいへんみたい。作家というのもご苦労なことだ、しみじみおもうなあ。村上さん訳の「ライ麦・・・」は、あとのお楽しみとして、じつは春樹さんのなにも読んだことがなかったので、お約束のとおり(自分にしかしてないけど)、まずは「ノルウェイの森」にいってきました。いまは「ねじまき鳥」あたりを徘徊している、というか深いカラ井戸の底でじっとしているみたいです。

すこしだけ、ノルウェイの森の近くのお話させてくださいな。ワタナベ君もギッチリ詰まった青春だったのですね。1949年のお生まれとするならば、僕の一つ上です。だからほっとするなあ。後輩ならば、なにかこうライバル心というか、出来のいい人へのやっかみというか、どうにも素直になれないのですが、生まれが少しでも上だと甘えられる気がするんです。でもよく考えればほとんど同級生ですね。全くの同じあの時代と時間をすごした、同じ空気を吸ってそれぞれの風を受けてきたわけで・・・ぼくはいまや実にさびしいボッチのこのごろですが、いまごろになってなんともすばらしい恋物語をきかせていただいて・・・もっとも30年近く前に書いて戴いたんだから、37歳のワタナベ君に向かってこのお手紙(Re:)書いてるのかなあ?・・・

むろん、あれは小説ですからワタナベ君の個人的な体験とは思いません。でも生々しさも感じてつい、ああ彼女は津田塾だななどと要らぬ想像をしてしまうのです。それにすこし濃密すぎて・・・。話飛べば、まったくの無縁な世界のように安田講堂攻防戦をボーっとテレビで観てたとき現れたのが髪の長い少女でした・・・七つの水仙、レモンツリー、パフ、500マイル、花はどこへ行ったの、こげよマイケル、全部おしえてもらった ...八月の光 もずっと借りてたな・・・一浪した同級生はこの年東大は受けられず一橋と東工大はすごい難関だったと聞きました。翌年ボクは東京郊外の学生寮に入ることができ、綿パンにスニーカーにカーディガンが大好きになった、十代の重苦しさは脱ぎ捨てたかったのかもしれません。新宿、紀伊国屋の裏手ですか・・・ジャズ喫茶、パドパウエル、ビルエバンス、マルウォルドロン、ダラーブランド・・・ミニスカートの時代、すらりとした若い足・・・ねえ、この子と?・・・だけど全くのウブで、途切れもなくなったのは、もすこしあとでしょう・・・差し支えがありすぎて・・・みんな、お手紙は焼き捨ててくれましたか?

ボクたちはビートルズ世代、もっともあの春樹さんはビートルズよりジャズのほうのようだけど。ま、ともかく数年前にはテレビを観て記録しましたよ。四人はアイドル? サイドマン - ビートルズに愛された男 あらためて「リボルバー」を思い出しました。ビートルズではなにがいちばん? ヒア・カムズ・ザ・サン、るるるる、と言ったのは、ずっとあとでTちゃん、・・・どうしてることか・・・

ワタナベ君のお話、ノルウェイの森の記憶がなんとも切ないですよね。なにか言ってあげたいけど、どうしようもないよね、ぼっちだもんね、誰でも、Nowhere Man。ラバーソウルのメロディアスなほうがリボルバーより好きだな。ミッシェル、ノーホエアマン、ジュリア、ノルウェイの森、・・そうそう、映画のこともでてくるよね、武蔵野館はどうなったやら・・・卒業、カサブランカ。サウンドオブミュージック・・・手を握っただけでドキドキが伝わってきたMちゃん・・・それにしても「I wonna hold your hand」が日本ではなんで「抱きしめたい」になるんでしょうか?

その少し前18.9歳のめまぐるしい、毎月と季節が今も鮮明にたどれるあの頃、まわりではいろんなひとが命をおとしました。2ヶ月一緒の部屋にいたD君も一年後屋上から飛び降りた、いつまでも19だ。海でおぼれたひとも感電事故でなくなったひともいた・・・そのあと20で東京にやっと出られて、それからもう40年以上もたったんですね、生きてれば、ボクみたいに、その後の面白くもあり、たいして記憶にも残らない、ながいながーい時間を持てたのでしょうに。そして、そのときどき好きだった人とも別れてゆくのでしょうか・・・いつまでたってもわかりません、だれもおしえてくれません。今夜も猫ちゃんのほっぺをなでながら、一緒に寝るのでしょうか。

ワタナベ君の読んでた本はなんだったけ。えーと、フィツジェラルドのグレイトギャツビイ、トルーマン・カポーティ、トーマスマン・・・なんてかいてありますね。「ライ麦」も出てきましたね。ずーっと一生すきなことがあるのはいいんじゃないかなあ・・・素敵だなあ、ボッチだったワタナベ君、今、どうしてますか?ボクは、ヘイジュードなどやりかけましたが、もう3ヶ月もサボって、なんでもやるけどすぐアキル、こりないのですね・・・リブート/再開処理/ねじ巻き が必要かなあ・・・

                      2014・6.6 のり坊

ワタナベ トオル君   机下

  

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スズメのパン屋さん

2014-06-01 23:22:10 | ローカルな話題

 

今度のはメロンパンだぜ、最初から出せよな~ チィチィチィ
だよね、さっきのは、食パンの耳だったわね
はさみで切ったみたい、食べにくいよ、ここの奥様のやりかただよ
でもね、イギリス食パンとかいう、ちっとおいしいやつだったわ
「石窯パン工房パンセ」のかな?サービスのコーヒー飲むため、要らぬパン買ってるようだぜ
ま、いいじゃない、それで、お下がりくるんだから 生協のとこの30分フィットネスに通ってるようね
そ、そ、でも隣がパンセなんで、せっかく消費したカロリー以上のパンで、モトのモクアミね、
ま、あのひと、思い込みハゲシイからな・・・ピュアピュアピュア(笑)
自家製カレーの牛肉ゴロゴロカレーパン、あんなの来たらドーする、レーゾーコに余ってるみたい・・フルーツサンドの耳もよ・・・

ねえキミ、ごはんとパンとどっちが好き?
ぼくは、「ばーすでい」のクロワッサンだけど、きみは和食派のようだね
そうね、やっぱ五穀米かな、色がすこし赤っぽいのがいいわ・・・ごはんつぶでも和食の世界遺産なの? 
あれにラジウム卵かけて食ベてたわ、この家、わかんない人たちね・・・
どっちにしろ、残り物には福が!僕らには。ま、いいか、チュンチュン

お~い、今度はイチジクとクルミのパイをもみほぐしたやつだぜ、チィチィチィ
イチジクのとこネチャネチャ食べづらいけど、これって、なかなかイケルわ・・・
僕はいいや、じゃ、イチジクの木から見てるよ
おっと、カメラ撮ってるぜ、みんな近づかないで・・・

へたなカメラマンいなくなったようだな、どれ、ゆっくり食べようか、チィチィチィ
あなたたちは、地面におりちゃだめ、ラティスの上にいなさい
アイ、ママ、チィチィ、ピーチク、パーチク
アーンは? はいッ

犬はあぶなくないの?
あたしたちには興味ないみたい、ドッグフードチョロマカしても彼なんにも云わないのよ、紐もここまで届かないし・・・
あたしは冬の抜け毛ひろって、あかちゃんのふかふかベッドつくったわ・・・
それはよかったね、柴いぬのくせに芝をあらすので、人工芝にされちゃったようだなあ

さあ、顔ぐらいのでかいパン、テイクアウト、お持ち帰りね・・・パタパタパタ、フルパワーだ、それッ
ん? マヨネーズつきのこれ、モスの照り焼きチキンバーガーの残り?、 じゃフライ・スルー、タッチ&ゴー
(んなことあるわけないじゃない・・・、ヒマ人ウォッチャーめ、こっちはイッショケンメイなのよ・・・)

   

 

(ここのジジイ、きまぐれだけど、さいきんは毎朝パンとか、あまったもの小さくちぎっていっぱい撒いてくれるよ、3年経ってジジイもゲンちゃんも、ちょっとフケたわね。。。ブログの写真もすこし大きくなったみたいよ。。。

時々は、チャーハンの残りとか、おとといなんかヒジキ入ったお稲荷さん。それと、ごごみ、しどけ、コシアブラの天ぷらじゃない、やっぱ、春は山菜がいいよね、こっちは天かすみたいだけどね。でも、いつもパンばかりよりいいわ。ピッツア・マリゲリータやグラタン、スクランブルエッグなんかもいいわね、おやつにはバームクーヘンとか、ジジイ覚えといてね。なあに?きょうのこれって柏餅じゃない。それに秋保の「サイチ」のおはぎだわ、ネチネチでも食感がよろしゅうございますわね。ショーミ・キゲン大丈夫かしら?まあ、若い子は気にしすぎよ、何千年と、あたしたち、だいじょーぶだったんだから。ここのおにいちゃん、ジジイが南米チリだったかの何万年前の岩塩を自慢してたら「賞味期限切れじゃん」などと、言い放ったらしいわ。和食(?)系は、口元っていうかクチバシべとべとになっちゃうけど。そうそう、わかい子は店内っていうかお庭でお召しあがりみたいけど、顔ぐらいの大きなパンお持ち帰りのかたもいるわね。きっと、扶養家族が多いんだわさ、タイヘンね。せっかくのお持ち帰り、となりのサッカー場あたりで落としちゃったりしないでね。それより3年も経つと、あたしたち、孫の代に替っちゃったかしら??ヒヨドリさんやセキレイくんは許せるけど、超デカのカラスのやつ、あっちの屋根の上でねらてるの、こわいわ。ジジイ、追っ払ってよね。でも、ジジイ、ゲンちゃん、どっちもあてになんないなあ、ったく、もう。青葉まつりのすずめ踊り見に行くなら、こっちはほんまもん、ピョンピョンならいくらでも見せたげるわよ。 2017.5.19〜26 追記)

  

 

 

 

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする