■■9月から東近江市の学生と市民クラウドファンディングで資金募る■■
電気機関車の国産化が始まった約100年前の姿を伝え、産業遺産としても貴重な電気機関車で、老朽化に伴う解体の危機にある「ED31形」を近江鉄道から引き取り、東近江市のまちづくりに活用しようと、びわこ学院大学・短大部の学生や市民の有志が資金集めのためクラウドファンディングを近日中にスタートさせる。
写真:ED31形、平成9年(1997)3月=鉄道ライターの辻良樹さん提供のもの
電気機関車「ED31形」は大正12年(1923年)、芝浦製作所・石川島造船所で計6両製造された。全長11・5メートル、重さ40トン。レトロで重厚感のある外観が、鉄道ファンから人気を集める。
近江鉄道のED31形は、伊那電気鉄道(長野県)、西武鉄道を経て、昭和35年(1960年)に近江鉄道に入り、現在の東近江市の米や野菜などの産物を輸送する貨物列車、現役引退後はイベント列車として平成初期まで活躍した。
■一昨年12月、「老朽化で維持は限界と判断し、解体されることになった」と新聞報道されると、東近江市の市民から「ED31形は貴重な近代化の遺産のひとつであり、地域活性化に活用すべき」との声が上がった。
■近江鉄道の車庫(彦根市)で保存されていた5両のうち、3両は昨冬解体。残る2両のうち1両(4号機)の保存・活用を目指して結成された市民グループは、「近江鉄道ED314保存活用プロジェクト」で、メンバーは地元のびわこ学院大学・短期大学部の学生を中心に市内の有志ら約20人。学生が中心になって昨年1月から計画を検討し、同社との交渉を重ねてきた。
■東近江市へ輸送した車両は、市内の酒蔵メーカー敷地に設置し、まちづくりに活用する。
■実現の壁は、電気機関車の輸送にかかる経費だ。
クラウドファンディングのReadyfor(レディーフォー)で、輸送・設置費用などで必要な500万円を目標に、9月下旬~11月下旬の2カ月間、資金を募る。返礼品は、東近江市の特産品を中心に用意している。
■プロジェクト代表のパン・ジュインびわこ学院大学教授は「近江鉄道は120年以上の歴史を有する国内最古級の鉄道であり、近江商人たちが尽力して敷設した。長年にわたり沿線の発展に寄与した電気機関車には、先人たちの思いが込められているだけではなく、貴重な日本の産業遺産としての大きな価値がある。これらを次世代へと継承していくために、価値観を共有できる全国の人々に応援を求めていきたい。きっと近江商人たちの物語とともに観光資源としても地域活性化に貢献する」と、支援を求めている。
■問い合わせ: 代表のパン教授(TEL 0748―22―3388=びわこ学院大・短大)
<以上、滋賀報知新聞より>