県立高校や教育委員会など、退職するまで県の教育に携わってきた中野さんはかつてから興味のあった寺子屋の研究に励み、「教育が義務付けられていなかった封建時代になぜ多くの子どもたちが寺子屋で学ぼうとしたのか。寺子屋師匠の教育を知ることによって、教育の現代的な課題に対応する糸口を見出せるのではないか」と、取材など10年を費やして本書を発刊した。
近江商人発祥の地の一つでもある「五個荘地区」は、江戸時代期、全国同様に寺子屋教育が盛んに行われ、商人として成功を遂げた卒業生たちは、商売で得た利益を地域に寄進するなど大いに社会貢献を行った。
本書では、五個荘地区に10校あった寺子屋のうち、五個荘川並の寺子屋師匠・川島俊蔵に焦点を当て、多数の史料をもとに、レベルの高かった五個荘地区の寺子屋教育と、「三方よし」の精神を大切にした近江商人の魂との関係に迫っている。
「近江商人の魂を育てた寺子屋―川島俊蔵の教えに学ぶ―」(法藏館(京都市)発行)
46判全192ページ。2千円(税別)。
購入は書店に問い合わせるか、中野さん(TEL 0748―48―3159)まで。