ファウンデーションの夢
第三部
ウォンダとガールの地球探訪
第5話
ウォンダ・セルダン
あらすじ
セルダンの裁判が始まる前の年、つまり銀河暦12066年、ダニール・オリヴォーは、ガール・ドーニックをシンナックスから招き寄せるため、かつハリ・セルダンの「心理歴史学」と2つのファウンデーションを補強するため、人類の最古の故郷星「地球」への探索の旅に出る。
漸くダニールは、天の川銀河の半球過ぎに、それらしき海洋惑星を見つけた。
ダニールは、以前にしたようにヒューミンと名前を変えてシンナックス大学に何食わぬ顔で入り込み、ガール・ドーニックを待ち構えていた。
ガールは、どうしたわけか、彼が見いだしたことがらをとめどもなくヒューミンに話しはじめた。ダニールは、ガール・ドーニックの非凡な閃きを強く受けとめて、ロボットでありながら絶句する。
ダニールのこの探索からファウンデーションの新たな叙事詩がはじまろうとしていた。ハリ・セルダンの故郷を目指したのは、ロボットにない人間の潜在能力に彼の第零法則を挑戦させたかったためであった。そこから何かが生まれそうな予感を抱いて!
ガールは、ダニールの指示通り、ダニールの多額のクレジット・バッグを抱えて、トランターに着いた。まではよかったが、ハリ・セルダンに会うやいなや、当のハリ共々裁判のために留置所に入れられてしまった。
ハリの未来予測は、将来500年以内に92・5パーセントの確率でトランター銀河帝国が滅亡するというものだった。
そこへ、弁護人としてハリ・セルダンから遣わされたロース・アヴァキャムが、ハリ・セルダンの代わりにガールにこの件に至った経緯を語る。
ガールはしばらくして釈放され、ハリ・セルダンからあらためて心理歴史学とファウンデーションについての計画を打ち明けられる。
それからもう一つの任務についても。
ハリが、ガールにモーヴ建設の要件を語り、宰相デマーゼルの秘密を漏らそうとした瞬間、背後からヒューミン(デマーゼル)が突如現れ、ハリを制した。
話しは、それより約半世紀前のハリの逃避行において行った出来事の回想に触れなければならない。
ハリは学会出席のために故郷ヘリコンからトランターに来たのであったが、なぜか意に反してトランター中を駆け巡らなければならなくなった。
逃避行の末、それまで不確かだった推測が、完璧に正しかったことを知った。何ものかが、ハリの逃避行を企てた、ということ。何ものかが、ハリに目指す「心理歴史学」の中心原理を考案させるように誘導している、ということ。ハリの目指す「心理歴史学」を担う新たな組織、それを維持する施設を、より堅固にするのに、何を乗り越えなければならないか、をY 市の反乱事件で示されたように思った。
その背後の人物、それはチェッター・ヒューミンであり、ロボット・ダニール・オリヴォーであり、宰相エトー・デマーゼルだったということ。そしてドース・ヴェナビリも彼のお膳立てによるものだと。
申し訳ないが、その後のハリに纏わる出来事は、いずれの機会に譲らさせてもらいます。
話しをまた50年後の元の状態に戻す。
ヒューミンは、何食わぬ顔で現れ、ハリに禍福の入り混じりあったニュースを伝えた。
15
「こともあろうに祖父レイチは、またもやワイ市で、運命の出会いを経験した。相手はマネルラ、レイチばかりでなくハリをも救った、私の祖母である。綺麗なブロンドであった。茶目っ気があり、いつも曾祖母のドースとやりあってたと聞く。
ついこの前、母ベリスの形見を整理していたら、叔母ウォンダの8歳の時の写真を見つけた。ハリが精神感応の能力に気づき、彼女は終日プライム・レイディアントに興じていたという。
ずっと気になっていた彼女の手に握られていた四つの花びらの意味。黄色とクローバーの花の意味がまだわからない。」(ガール・ドーニックの生涯・ドース・ドーニックの日記』)
ヒューミン ハリ、君にとっては残念な知らせを持ってきた。サンタンニの騒乱のことだ。
ハリ ヒューミン(ダニール・オリヴォー)、もうそれ以上、言わないでくれ。わかってる。レイチのことだというぐらいは! 君は私にとっての死神なのか。もう残ってるのは、ウォンダだけだ。その、ウォンダも、最近では、同じ感応者のステッティンと行動を共にしている。
ヒューミン もう一つの方は、いい知らせだ。 行方不明だった第七アーカディア号はサリプに着いていた。それからアナクレオンで無事に暮らしている。これから、私は彼女たちをターミナスに連れて行く。
それでよろしいな?ハリ。
yatcha john s.