ファウンデーションの夢
第四部
嵐の気配
第5話
嵐の気配
第四部「嵐の気配」の大枠
21 第1話 涙の黒い太陽
22 第2話 帝国辞書編纂図書館
23 第3話 ドースと孤児レイチ
24 第4話 時間霊廟
25 第5話 嵐の気配
あらすじ
ガールは、久しぶりのヒューミンとの再会に歓喜するやいなや、突如として眠気を催して、睡眠に陥ってしまう。
ガールは、催眠術に懸けられていたのだろう、気がつけば見知らぬ航宙船のなかにいる自分に気がついた。見上げれば、容姿端麗な女性が立っていた。
そして親しげにガールに話しかけてくる。
無事に任務が完了した。放射能防御シールドのカーテンに護られ、二人は荒涼とした地球の大地を踏みしめた。ガールは朧気ながらに地球の光景を眺め、また遊んで走り回るウォンダを目を円くして眺めていただけであった。もう一つの使命など忘れていたように。
ただウォンダが地面の割れ目から湧きだしている水に狂喜して、なにやら汲んでいるのは覚えていた。しかもその泉の回りにはクローバーが密集していたことも。
再生の命というものなのであろうか!
ウォンダが汲んだ水は三つに分けられ、それぞれ透明、紫、黄色のシリンダー・ペンダントに入れられ、そのうち紫のシリンダーはターミナスに避難した彼女の妹ベリスに渡してくれるようにウォンダがガールに頼んだ。
ターミナスのパークサイドで彼女を見失った。地球の大地から脇だした泉に狂喜していたウォンダの姿にオーバーラップし、「星界の涯」の意味を沈思するガールであった。
方や、ウォンダの妹のベリスは、その場所を訪れていた経緯をその日のうちに母マネルラに手紙をしたためていた。
なぜか祖母ドースが夢に現れて、不思議な一連の作法で新たに新設された公園のある場所を訪れるように指示されていた。
これは不思議な事件で、後に、ジョン・ナックの『歴史思想書』たる書籍はその図書館には存在せず、ベリスが訪れた涙の黒い太陽の像は次の日には消えていた。誰一人ターミナス人は、知らなかったということになる。
それから数十年が過ぎ、銀河帝国はハリ・セルダンの予測通り、随処に綻びが生じ、衰退の兆候が現れ始める。
ターミナスは、ファウンデーションの名が示すように名目上、トランターによる銀河帝国の辞書編纂図書館設立財団として、ひっそりとその役目を果たしていたが、ターミナスが所属するアナクレオン星区の独立運動が勃発するやいなや、ターミナスは一気にアナクレオン星区を制圧下においてしまう。
その立役者がサルヴァー・ハーディン、その人であった。彼の活躍にはもう十年の月日が必要である。
ドーニック家は、ベリスの娘、ドースの時代になっていた。あらかじめ、お断りいたしますが、ドースと言っても、ハリの奥さんと同じファーストネームのドースであるが、もう一人のドースである。
ガールの盟友ボー・アルーリンは、トランターの仲間との紐帯を強く守り続け、大いにガールを助け、ガール亡き後は、ガール家を支え続けていた。方や、アルーリンは、ターミナスの次の段階への準備を着実に進めていった。
読者には、残念ながら、その詳細については、Yi Yin の『ミーターの大冒険』のエピローグと第一部を参照してもらいたい。
ここからがその次の世代の物語である。ハリ・セルダンの孫娘ウォンダも人類の常に従って息をひきとることになる。それも、わざわざロボットのメッカ、イオス星で。
ドース二世の命名のきっかけ談が入る。アルカディアに繋がる女系には同じ名前が繰り返される発端ともなる。
レイチを養子にした経緯は、本文には入れなかったが、ドースがこの子に、精神感応能力を見いだしたことによる、ということも付け加えおくべきである。
ドース(ベリスの娘)には実の娘がいなかったのでサルヴァー・ハーディンの次女を養子に迎える。グレディアである。
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(全文『グレディア・ドーニックの日記』)
「なぜターミナスは銀河帝国の端、アナクレオン太守管区のまたさらに端に位置し、そこに10万人ほどの人々が移住させられたのであろうか?
むしろそれこそ心理歴史学者たちや、セルダンの思惑だったのだろう。100もの島からなり、やや大きな島に首都をもつ海ばかりの星。資源がなく、生きるか死ぬかの瀬戸際でしか暮らしていけない、全く換金性のない農業の星。
いや、それだからこそ、帝国には怪しまれることなく、虎視眈々と目的を一歩づつ這い上がれる環境だったに違いない。ハーディンはよくやった。本人同士は面識はなかったにしても、十分ハリの意志を継いだといえる。
ハーディンのとった方法とは、徹頭徹尾ガール・ドーニックの故郷の星シンナックスの写しと聞いている。そしてシンナックスは人類の故郷の星の小さな東に浮かぶ島ニフの人たちの移住地なのだ。
すでにアナクレオン星域が帝国から独立するないなや、間髪入れずにアナクレオン自体をターミナスが我がものにしてしまったではないか。
しかし、まだまだ侮っていられない。この混沌、無秩序、文明が退廃しつつある銀河で、どんな事態が待ち受けているか。どんな敵が現れるのか、果たしてファウンデーションはそれを克服できるのか、安心などできる訳がないのだ。
できることなら母ドースの心配は思い過ごしであってもらいたい。そして第二ファウンデーションの出る幕など、ないに越したことはない。
それにしても何かが始まりそうな予感がする。」
yatcha john s. 「嵐の気配」