9 ハニスさん、まだ驚くのは早すぎますよ。ある時、アルカディアはそのガール・ドーニックの著書「ハリ・セルダンの生涯」の中になにやら無造作に書かれていた暗号を拾い出して、彼女の持っていた紫色のシリンダーペンダントを重ね合わせた時がありました。
そしたら、なにやら謎めいた方程式「セクション33A2D17」という文字が浮かび上がって来たのです。アルカディアはそれを「ウォンダ関数」と名付けました。
アルカディアの顔の前に突然、ホノグラフが現れて、紫の一点が輝き出しました。それから、回りの青い空間が徐々に輝く紫に侵食され、それからその紫の中から、赤い粒々が現れたと思ったら、それらが結び付き、紫の中心部が赤いコブのようになって行ったのです。
この現象が起きてから、アルカディアは、それがハリやウォンダ、そしてユーゴが大事にしていた「極素輻射体」と同じ原理の動きだと確信していたみたいです。
後々、僕に何度もこの現象の意味を説明してくれました。
方程式「セクション33A2D17」はトランターです。その逆関数が「線の端」を意味するターミナス。
赤い粒々は、第二銀河帝国の誕生。
そして、ここターミナスから、今度は、大ブラックホールの先のトランターまで一直線を引いて、それをさらに先に伸ばし、銀河の反対側辺りに目当ての故郷の星があるとふんだのです。
そればかりではありません。
セルダン理論の根本は「自ら変移する」こと。
この銀河の端の向こう十九万九千光年先には、紫に輝く小マゼラン星雲があるではありませんか!
yactha john s. 『ミーターの大冒険』エピローグ 9「 そして 紫の星雲?」
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