なんとかMacの古いOSを起動させることが出来ました。そしてようやく以前紹介した日野日出志「ホラー自選集」のCD-ROMを読むことが出来ました。このディスクには全部で18話収録されています。その第1話がデビュー作の「つめたい汗」です。
この作品は16ページの短編で、しかもホラー漫画ではなく、時代劇のような舞台設定です。絵柄は一見ギャグ漫画のようで、後の日野日出志の人物造形とはやや異なりますが、シルエットを多用したり緩急のあるコマ運びだったりする表現力は既に完成しているように思われます。
夏、暑さにイライラし始めていた浪人はそれを自覚し、落ち着くように自分に言い聞かせます。そして村の茶屋に入ってスイカを注文します。茶屋の中にはたくさんの村人がスイカを待って座っていました。浪人は外に面した暑い席に座っており、太鼓を叩いている宗教か何かの行列が進んでいくのをぼんやりと眺めています。
このページでは話が全く進んでおらず、暑さと待ち時間の長さが強調されていて浪人のイライラを見事に表しています。まるで映画を見ているようでもあります。4コマ目に上空(太陽?)からの視点がありますが、この作品では同様の視点が多く見られます。その後の日野作品にはあまり見られない技法ですが、このあたりも映画を意識したものかもしれません。
その後、浪人は店のおばあさんに文句を言ったり、ぶつかってスイカを台無しにした村の子供達に怒りを募らせたりしますが、涼しい席に陣取って昼寝をしている村人に怒りの矛先を向けます。浪人が村人を起こそうとしてゆすったところ、浪人は顔面に放屁を浴びてしまうのです。ここでちょっとコミカルな展開になるかと思いきや、怒りが爆発した浪人は問答の末にその村人を斬ってしまいます。それを見ていた通りすがりの武士が浪人を許すことが出来ず、二人は決闘することになります。
ここでも暑さと間の表現が前面に出ており、暑さと冷静さが対照されています。他人事のような蝉の「ミーンミーン」の鳴き声も、逆に緊張感を高めています。
そして武士に斬られた浪人が現実から逃避するようなセリフを吐きます。そしてこれまでの出来事が全て夏の暑さに融かされてしまったかのように、感慨のない結末を迎えます。実時間にしておよそ30分に満たないであろう出来事のお話です。
絵柄こそ漫画的ですが、視点や間などは熟考されているという印象です。そして暑さで浪人が狂気に走るという展開は、その後の日野日出志作品の原型となったに違いありません。日野日出志ファンならぜひ読みたいデビュー作です。
日野日出志作品紹介のインデックス
この作品は16ページの短編で、しかもホラー漫画ではなく、時代劇のような舞台設定です。絵柄は一見ギャグ漫画のようで、後の日野日出志の人物造形とはやや異なりますが、シルエットを多用したり緩急のあるコマ運びだったりする表現力は既に完成しているように思われます。
夏、暑さにイライラし始めていた浪人はそれを自覚し、落ち着くように自分に言い聞かせます。そして村の茶屋に入ってスイカを注文します。茶屋の中にはたくさんの村人がスイカを待って座っていました。浪人は外に面した暑い席に座っており、太鼓を叩いている宗教か何かの行列が進んでいくのをぼんやりと眺めています。
このページでは話が全く進んでおらず、暑さと待ち時間の長さが強調されていて浪人のイライラを見事に表しています。まるで映画を見ているようでもあります。4コマ目に上空(太陽?)からの視点がありますが、この作品では同様の視点が多く見られます。その後の日野作品にはあまり見られない技法ですが、このあたりも映画を意識したものかもしれません。
その後、浪人は店のおばあさんに文句を言ったり、ぶつかってスイカを台無しにした村の子供達に怒りを募らせたりしますが、涼しい席に陣取って昼寝をしている村人に怒りの矛先を向けます。浪人が村人を起こそうとしてゆすったところ、浪人は顔面に放屁を浴びてしまうのです。ここでちょっとコミカルな展開になるかと思いきや、怒りが爆発した浪人は問答の末にその村人を斬ってしまいます。それを見ていた通りすがりの武士が浪人を許すことが出来ず、二人は決闘することになります。
ここでも暑さと間の表現が前面に出ており、暑さと冷静さが対照されています。他人事のような蝉の「ミーンミーン」の鳴き声も、逆に緊張感を高めています。
そして武士に斬られた浪人が現実から逃避するようなセリフを吐きます。そしてこれまでの出来事が全て夏の暑さに融かされてしまったかのように、感慨のない結末を迎えます。実時間にしておよそ30分に満たないであろう出来事のお話です。
絵柄こそ漫画的ですが、視点や間などは熟考されているという印象です。そして暑さで浪人が狂気に走るという展開は、その後の日野日出志作品の原型となったに違いありません。日野日出志ファンならぜひ読みたいデビュー作です。
日野日出志作品紹介のインデックス
この作品ですでに見られるシルエットは、人物の動き(あるいは静止した時間)が感じられると同時に、心の中の焦りのようなものも表していて、確かに非常に不安定な画面になりますね。読み終わっても気分がすっきりしないという点においても、ホラーへの方向性を示していたように感じます。