
ジェルジー・リゲティ:
・コンティヌウム
・ハンガリアン・ロック
・カプリッチョ 第1番
・インヴェンション
・カプリッチョ 第2番
バレル・オルガン:ピエール・シャリアル
・100台のメトロノームのための「ポエム・サンフォニック」
メトロノーム:フランソワーズ・テリュー
・ムジカ・リチェルカータ
バレル・オルガン:ピエール・シャリアル
・ピアノのための練習曲より
・コンティヌウム 2台のプレイヤー・ピアノへの編曲
プレイヤー・ピアノ:ユルゲン・ホッカー
SONY: SRCR 2155
このところドイツ・オーストリア系の重めのディスクが続いていたので、今回は別の路線。ハンガリーのジェルジー・リゲティによる自動演奏楽器のための作品集です。
以前のリゲティ作品の紹介ではトーンクラスターの技法を主に紹介しましたが、ほかにも特徴があります。ここでジャケット写真をみてみましょう。このアインシュタインを思わせるおじさんがリゲティで、もともとはまさに物理学を志していたそうです。そのためか、作品には数理的な要素が強く感じられるような気がします。このディスクで全て自動楽器による演奏で、そのメカニカルな特徴がより強調されたと言えるでしょう。
とはいえ、実は一曲を除いて本来は人間が演奏するための作品で、その自動楽器バージョンでの収録。けれども、いずれもこんな曲を人間が一人で演奏できるのか?ってくらいの難曲だと思われます。
まずはこのディスクと同じ音源であろうバレル・オルガン(自動オルガン)バージョンの『ハンガリアン・ロック』の動画をどうぞ。
もうほとんどテクノかつプログレッシブでカッコイイ! パズルゲームみたいな音楽です。速い9/8拍子で普通にリズムを追うだけでも大変なのに、複雑な旋律とハーモニーを伴っていて聴き取るだけでも大変です。終盤は一変してシンプルで透き通った和音進行となり、以前紹介した『ルクス・エテルナ』を思わせます。
他の収録曲もこのような作品で、人間ではとても正確にはできないようなリズムを、粒がそろったまま聴く事ができるという興味深いディスクです。11曲からなる『ムジカ・リチェルカータ』(「探求された音楽」のような意味)もジョークが効いていて、機械がひねりの利いた音楽をまさに機械的に奏でるのがユーモラス。『ピアノのための練習曲』からは6曲を抜粋。それらのタイトルは「目眩」「悪魔の階段」「無限柱」などで、そう思って聴くとCGで作られたそんな光景が見えてくるよう。
リゲティとしてはこれら作品を正確に演奏する事を求めていたのか、あるいは演奏者の好みのフレージングやクセを(むしろ)強調して欲しかったのかはわかりません。ただ、どちらの演奏もこれら作品の魅力である事は間違いないでしょう(ただしまともに演奏できれば)。
こちらは『ハンガリアン・ロック』ハープシコードでの手動演奏バージョン。演奏は台湾の打楽器奏者Ying-Hsueh Chen。技術的に凄いのはもちろんですが、なかなかの熱演で聴き入ってしまいます。
『ムジカ・リチェルカータ』7曲目の手動演奏。右手の歌うようなワルツに対して、左手のアルペジオは拍子とは関係なく進行。一種のポリリズムと言えますが、むしろ左手は雰囲気のような効果。シンプルな楽譜面ですが、手動での演奏は困難を極めそう。
もう一曲、このディスクで唯一の人間による演奏を想定されていない『ポエム・サンフォニック』は100台のメトロノームによって演奏されるという、何を言っているのかわからない作品も収録されています。メトロノームはリズムを取るための機械であって、楽器ではありません。この曲ではそれを100台も使って一斉に動かし、それぞれが固有のリズムを取ってグチャグチャの騒音を鳴らします。ところが中盤になると振り子の勢いがなくなったメトロノームは止まり、リズムの断片のようなものが聴こえてきます。そして終盤では生き残った数個のメトロノームが明確なリズムを刻み、やがて全て止まる、という驚きの仕掛けを持っています。動画もいくつかあるようなので、興味のある方は探してみてください。
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