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ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる?
2017年04月07日 10時10分(弁護士ドットコムニュース)弁護士ドットコムインターネット
ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる?
ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる? 写真はイメージ
ドイツ政府が、フェイクニュースがインターネットで拡散するのを防止するため、SNSなどの交流サイト運営者に対して、違法な内容を削除しなければ最大で60億円近い罰金を科す法律の制定を目指すことになったと、NHKなどが報じている。
ドイツ政府が閣議決定した法案では、問題のある内容が掲載された場合、利用者からの通報を受け付ける仕組みを整えるよう、運営会社に義務付け、明らかに違法な内容は24時間以内に削除するよう求めているという。違反した場合に最大5000万ユーロ(60億円)の罰金が科される。
フェイクニュースは日本でも問題になっているが、日本でも同様の議論が起きる可能性はあるのか。現行の法制度はどうなっているのか。清水陽平弁護士に聞いた。
●流した本人の責任追及は現行法でも可能
まず前提として、現行の法律上、フェイクニュースだからという理由だけで処罰されたり責任追及されたりすることはありません。
ただ、フェイクニュースの中身は様々であり、一概に責任追及がされないというものではなく、責任追及がされるケースも想定できます。たとえば、フェイクニュースが誰かの名誉や信用を毀損したり、業務を妨害したり、株式相場に影響を及ぼすための風説の流布をしたような場合です。
このようなものについては、現行法でも対応ができることになります。しかし、この責任が追及されるのは、あくまでフェイクニュースを流した本人(あるいは拡散した人)です。
フェイクニュースの問題点は、SNSを通じてどんどん拡散し、デマが信じられてしまうという点にあり、ドイツ政府が閣議決定した法案は、SNSの運営会社などに責任追及をし得るもので、フェイクニュースの問題点を正面から捉えるものといえます。
●プロバイダ責任制限法の仕組み
では、日本で運営会社の責任について、法制度がどうなっているのかを説明しましょう。プロバイダ責任制限法3条1項は、情報発信の拠点となっている媒体(コンテンツプロバイダといいます。この記事に出てくる「SNSなどの運営会社」も含まれます)について、原則として情報発信について賠償責任を負わないことを定めています。
これは、色々な人が好き勝手に情報発信をする中で、全ての情報を監視して問題ある情報発信を見つけて削除するべきという義務を課すことは、あまりに過大な要求だからです。
そこで、情報流通によって他人の権利が侵害されていることを知ったときや、知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときにのみ責任を負うこととしています。
そして、常時監視することは困難なので、権利者からの権利侵害の申告があった場合に対応すればよいこととされています。なお、これは民事の場合であり、刑事の場合(たとえば児童ポルノが公開されているといった場合)は、事実上常時監視義務があるかのような判断がされています。
●そもそも権利侵害がないと手続きに乗せることができない
ここで重要なのは、権利侵害の申告ができるのは、あくまで権利を侵害された者に限られるという点、削除が義務づけられているわけではないという点です。
フェイクニュースは、面白半分のデマというケースだったり、架空の企業や人についてのものであったりと、必ずしも誰かの権利を侵害するものとは限らないので、そもそも権利侵害すらないというケースもあります。したがって、このような場合は権利侵害の申告ができず、プロバイダ責任制限法3条1項の定める手続きに乗せることができません。
また、仮に権利侵害があると申告したとしても、コンテンツプロバイダが侵害の有無についての判断をすることができ、侵害がないと判断すれば基本的には責任を問われません(判例上、かなり重い要件を課されています)。
●日本で同様の制度が導入されるのかは疑問
ドイツ政府が閣議決定した法案では、「利用者からの通報を受け付ける仕組みを整える」必要があり、権利者でなくても通報できる仕組みを整える義務を課し、かつ、運営会社に明らかに違法な内容は24時間以内に削除するよう求め、違反した場合に罰金を設けるということなので、プロバイダ責任制限法をさらに進めたような内容になっていると言えます。
ただ、日本においてこのような制度が導入されるかというと疑問があります。日本の場合、プラットフォーマーたる運営会社に責任を問うとすると、たとえば、SNSの運営会社だけではなく、検索エンジン事業者なども対象になるはずで、影響がかなり大きいものになると想定されるためです。
そのため、日本でフェイクニュース対策をするとすれば、法制度での導入というよりは、ガイドラインの整備といったソフトローでの対応をしていくのではないかと思われます。
ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる?
2017年04月07日 10時10分(弁護士ドットコムニュース)弁護士ドットコムインターネット
ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる?
ドイツでフェイクニュースに「最大60億円」の罰金法案、日本でも同様の議論は起きる? 写真はイメージ
ドイツ政府が、フェイクニュースがインターネットで拡散するのを防止するため、SNSなどの交流サイト運営者に対して、違法な内容を削除しなければ最大で60億円近い罰金を科す法律の制定を目指すことになったと、NHKなどが報じている。
ドイツ政府が閣議決定した法案では、問題のある内容が掲載された場合、利用者からの通報を受け付ける仕組みを整えるよう、運営会社に義務付け、明らかに違法な内容は24時間以内に削除するよう求めているという。違反した場合に最大5000万ユーロ(60億円)の罰金が科される。
フェイクニュースは日本でも問題になっているが、日本でも同様の議論が起きる可能性はあるのか。現行の法制度はどうなっているのか。清水陽平弁護士に聞いた。
●流した本人の責任追及は現行法でも可能
まず前提として、現行の法律上、フェイクニュースだからという理由だけで処罰されたり責任追及されたりすることはありません。
ただ、フェイクニュースの中身は様々であり、一概に責任追及がされないというものではなく、責任追及がされるケースも想定できます。たとえば、フェイクニュースが誰かの名誉や信用を毀損したり、業務を妨害したり、株式相場に影響を及ぼすための風説の流布をしたような場合です。
このようなものについては、現行法でも対応ができることになります。しかし、この責任が追及されるのは、あくまでフェイクニュースを流した本人(あるいは拡散した人)です。
フェイクニュースの問題点は、SNSを通じてどんどん拡散し、デマが信じられてしまうという点にあり、ドイツ政府が閣議決定した法案は、SNSの運営会社などに責任追及をし得るもので、フェイクニュースの問題点を正面から捉えるものといえます。
●プロバイダ責任制限法の仕組み
では、日本で運営会社の責任について、法制度がどうなっているのかを説明しましょう。プロバイダ責任制限法3条1項は、情報発信の拠点となっている媒体(コンテンツプロバイダといいます。この記事に出てくる「SNSなどの運営会社」も含まれます)について、原則として情報発信について賠償責任を負わないことを定めています。
これは、色々な人が好き勝手に情報発信をする中で、全ての情報を監視して問題ある情報発信を見つけて削除するべきという義務を課すことは、あまりに過大な要求だからです。
そこで、情報流通によって他人の権利が侵害されていることを知ったときや、知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるときにのみ責任を負うこととしています。
そして、常時監視することは困難なので、権利者からの権利侵害の申告があった場合に対応すればよいこととされています。なお、これは民事の場合であり、刑事の場合(たとえば児童ポルノが公開されているといった場合)は、事実上常時監視義務があるかのような判断がされています。
●そもそも権利侵害がないと手続きに乗せることができない
ここで重要なのは、権利侵害の申告ができるのは、あくまで権利を侵害された者に限られるという点、削除が義務づけられているわけではないという点です。
フェイクニュースは、面白半分のデマというケースだったり、架空の企業や人についてのものであったりと、必ずしも誰かの権利を侵害するものとは限らないので、そもそも権利侵害すらないというケースもあります。したがって、このような場合は権利侵害の申告ができず、プロバイダ責任制限法3条1項の定める手続きに乗せることができません。
また、仮に権利侵害があると申告したとしても、コンテンツプロバイダが侵害の有無についての判断をすることができ、侵害がないと判断すれば基本的には責任を問われません(判例上、かなり重い要件を課されています)。
●日本で同様の制度が導入されるのかは疑問
ドイツ政府が閣議決定した法案では、「利用者からの通報を受け付ける仕組みを整える」必要があり、権利者でなくても通報できる仕組みを整える義務を課し、かつ、運営会社に明らかに違法な内容は24時間以内に削除するよう求め、違反した場合に罰金を設けるということなので、プロバイダ責任制限法をさらに進めたような内容になっていると言えます。
ただ、日本においてこのような制度が導入されるかというと疑問があります。日本の場合、プラットフォーマーたる運営会社に責任を問うとすると、たとえば、SNSの運営会社だけではなく、検索エンジン事業者なども対象になるはずで、影響がかなり大きいものになると想定されるためです。
そのため、日本でフェイクニュース対策をするとすれば、法制度での導入というよりは、ガイドラインの整備といったソフトローでの対応をしていくのではないかと思われます。
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