くもり のち あめ

うしろ向き、うしろ向き、たまに、まえ向き。

中島らも・著『今夜、すべてのバーで』

2007-07-12 12:41:42 | 読書


アルコール中毒になってしまった作者の実体験を
基に書かれた小説で、『砂の女』のときと違って
この作品はスラスラと読み終わってしまった。

厳しい現実世界にシラフで立ち向かえなくなるということ、
もしも自分がお酒にめっぽう強かったら有り得たかもしれない。

お酒の弱い私でも『飲まなきゃやってられねぇ~よぉ~』
などとぼやくことがあるのだから。

どうせ死ぬなら大好きな酒を飲むだけ飲んで死にたい。
それでいい。
何がいけない?

私も仕事や色々なことで疲れてくると弱音を吐いてしまう。
ボロボロになって、少しお酒を飲んだだけでクラクラになって、
あぁ、このまま眠って目を覚まさなかったら楽だろうなぁ、
なんてことを考えてしまったこともある。

『あたしは、自分とおんなじ人たち、
 生きようとしてても運悪く死んでしまう人たちの中で生きたいの。
 生きる意志を杖にして歩いていく人たちの流れの中にいて、
 そんな人たちのためだけに泣いたり笑ったりしたいの』

そんな主人公に対して身近な人が放った言葉。

人間はたくさんの人たちと関わりあって生きている。

もしかしたら自分の命は自分だけのものではないのかもしれない。

強いところなんてほとんどなくて、
もうそれこそ弱いところだらけかもしれないけれど、
それでも生きなきゃいけないんだ。

辛いことだらけでも、きっと良いこともある。

乾杯。

明日は金曜日。