7月27日、衆議院厚生労働委員会に参考人招致された東京大学アイソトープ総合センター長児玉龍彦氏の動画を文字にしました。
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-626.htmlのブログにあったものを参考にさせていただきました。ありがとうございました。自分なりに手直しするだけでも大変な時間がかかりました。先のブログの方の御苦労を推測し、心から感謝致します。
動画は、
衆議院テレビ中継、またはユーチューブの
「国の原発対応に満身の怒り - 児玉龍彦 」
私は東京大学アイソトープ総合センター長の児玉ですが、3月15日に大変に驚愕いたしました。
私ども東京大学には、27か所のアイソトープセンターがあり、放射線の防護とその除染などの責任を負っております。それで、私自身は内科の医者でして、東大病院の放射線施設の除染などにずっと、数十年かかわっております。
3月15日に、まずここの図にちょっと書いてあるんですが、我々最初に、まず午前9時ごろ、東海村で5マイクロシーベルトという線量を経験しまして、それを第10条通報という、文科省に直ちに通報いたしました。その後東京で0.5マイクロシーベルトを超える線量が検出されました。これは一過性に下がりまして、次は3月21日に東京で雨が降り、0.2マイクロシーベルト等の線量が降下し、これが今日に至るまで高い線量の原因になっていると思っています。
それで、この時に枝野官房長官が「さしあたり健康にあまり問題はない」という事をおっしゃいましたが、私はその時に、実際はこれは大変な事になると思いました。なぜかというと、現行の放射線の障害防止法というのは高い線量の放射線物質が少しあるものを処理することを前提にしています。
この時は、総量はあまり問題ではなくて、個々の濃度が問題になります。ところが今回の福島原発の事故というのは、100キロメートル圏で5マイクロシーベルト、200キロメートル圏で0.5マイクロシーベルト、さらにそれを超えて足柄から静岡のお茶まで及んでいる事は、今日みなさん全てがご存じのとおりであります。
我々が放射線障害を診る時には、総量をみます。それでは、東京電力と政府は、一体今回の福島原発の総量がどれくらいであるか、はっきりした報告は全くされておりません。そこで私どもはアイソトープセンターのいろいろな知識を基に計算してみますと、まず熱量からの計算では広島原爆の29.6個分に相当するものが漏出しております。ウラン換算では20個分の物が漏出していると換算されます。
さらに恐るべきことには、これまでの知見で原爆による放射線の残存量と原発から放出されたものの放射線の残存量は、一年に至って原爆が1000分の一程度に低下するのに対して、原発からの放射線汚染物は10分の一程度にしかならない。
つまり、今回の福島原発の問題は、チェルノブイリと同様原爆数十個分に相当する量と、原爆汚染よりもずっと多量の残存物を放出したという事が、まず考える前提になります。
そうしますと、我々システム生物学というシステム論的にものを見るやり方でやっているんですが、現行の総量が少ない場合には、ある人にかかる濃度だけを見ればいいのです。しかしながら、総量が非常に膨大にありますと、これは粒子です。粒子の拡散というのは非線形という科学になりまして、我々の流体力学の計算でも最も難しいことになりますが、核燃料というのは、要するに砂粒みたいなものが合成樹脂みたいな物の中に埋め込まれております。これがメルトダウンして放出するとなると、細かい粒子が沢山放出されるようになります。そうしたものが出てまいりますと、どういうようなことが起こるかというのが、今回の稲わらの問題です。例えば、
岩手の藤原町では稲わら57000ベクレル/kg
宮城県の大崎17000ベクレル/kg
南相馬市106000ベクレル/kg
白河市97000ベクレル/kg
岩手64000ベクレル/kg
ということで、この数字というのは決して同心円上にはいかない。どこでどういうふうに落ちているかは、その時の天候、それから、その物質がたとえば水を吸い上げたかどうか。
それで、今回の場合も私、南相馬に毎週末700㎞行って、東大のアイソトープセンター、現在まで7回の除染をやっておりますが、南相馬に最初に行った時には1台のエネアイカウンターしかありません。農林省が通達を出したという3月19日には、食料も水もガソリンも尽きようとして、南相馬市長が痛切な訴えをウエブに流したのは、広く知られているところであります。そのような事態の中で通達1枚出しても、誰も見る事が出来ないし誰も知ることができません。稲わらがそのような危険な状態にあるという事は、全く農家は認識されていない。農家は飼料を外国から買って、何十万という負担を負って、さらに、牛にやる水は、実際に自分たちと同じ地下水を与えるようにその日から変えています。
そうすると、我々が見るのは、何をやらなければいけないかというと、まず、汚染地で徹底した測定が出来るようにするという事を保証しなくてはいけません。我々が5月下旬に行った時に、先ほど申し上げたように1台しか南相馬に無かったというけど、実際には米軍から20台の個人線量計が来ていました。しかし、その英文の解説書を市役所の教育委員会で解らない、我々が行って教えてあげて実際に使いだして初めて20個の測定が出来るようになっている。これが現地の状況です。
そして先程から食品検査と言われていますが、ゲルマニウムカウンターというのではなしに、今日ではもっと、イメージングベースの測定器というのが、はるかに沢山、半導体で開発されています。なぜ政府はそれを全面的に応用して、やろうとして全国に作るためにお金を使わないのか。
3か月経ってそのような事が全く行われていない事に私は満身の怒りを表明します。
第2番目です。私の専門は、小渕総理の時から内閣府の抗体医薬品の責任者でして、今日では最先端研究支援というので、30億円をかけて抗体医薬品にアイソトープを付けて癌の治療にやる、すなわち人間の体の中に、アイソトープを打ち込むという仕事が私の仕事ですから
、内部被曝問題に関して一番必死に研究しております。
そこで、内部被曝がどのように起きるかという問題を説明させていただきます。内部被曝というのの
一番大きな問題は癌です。
癌がなぜ起こるかというと、DNAの切断を行います。ただし、ご存じのとおりDNAというのは二重らせんですから、二重らせんの時は非常に安定的です。これが細胞分裂をする時は、二重らせんが一本になって、2倍になり4本になります。
この過程のところがものすごく危険です。
そのために、
妊婦の胎児、それから幼い子ども、成長期の増殖が盛んな細胞に対しては、放射線障害は非常な危険をもちます。さらに大人においても増殖が盛んな細胞、たとえば放射性物質を与えると髪の毛、それから貧血、それから腸管上皮のこれらはいずれも増殖分裂が盛んな細胞でして、そういうところが放射線障害のイロハになります。それで私どもが内部に与えた場合に具体的に起こるので知っている事例をあげます。
これは、
実際には一つの遺伝子の変異では、癌は起こりません。最初の放射線のヒットが起こった後に、もう1個の別の要因で癌の変異が起こるという事。これはドライバーミューテーションとかパッセンジャーミューテーションとか細かい事になりますが、それは参考の文献を後ろに付けてありますので、それを後で、チェルノブイリの場合やセシウムの場合をあげてありますので、それを見ていただきますが。
まず一番有名なのはアルファ線です。プルトニウムを飲んでも大丈夫という東大教授がいるというのを聞いて、私はびっくりしましたが、
アルファ線は、もっとも危険な物質であります。それはトロトラスト肝障害というので私ども肝臓医はすごくよく知っております。要するに、
内部被曝というのは先程から一般的に何ミリシーベルトという形で言われていますが、そういうものは全く意味がありません。
I-131は甲状腺に集まります。トロトラストは肝臓に集まります。セシウムは尿管上皮、膀胱に集まります。これらの
体内の集積点をみなければ全身をいくらホールボディースキャンやっても全く意味がありません。
トロトラストの場合の、このちょっと小さい数字なんで大きい方は後で見て欲しいんですが、これは実際に、トロトラストというのは造影剤でして、1890年からドイツで用いられ1930年ごろからは日本でも用いられましたが、その後20~30年経つと
肝臓がんが25%から30%に起こるという事がわかってまいりました。
最初のが出てくるまで20年というのはなぜかというと、最初にこのトロトラスト、アルファ線核種なんですが、アルファ線は近隣の細胞を傷害します。その時に一番やられるのはP53という遺伝子です。我々は今ゲノム科学というので、人の遺伝子、全部配列を知っていますが、一人の人間と別の人間は、大体300万箇所違います。ですから人間同じとしてやるような処理は今日では全く意味がありません。いわゆるパーソナライズメディスンといわれるやり方で、放射線の内部障害をみる時も、どの遺伝子がやられて、どういう風な変化が起こっているかという事をみるということが原則的な考え方として大事です。
トロトラストの場合は、
、第一段階ではP53の遺伝子がやられて、それに次ぐ第二第三の変異が起こるのが、20~30年後かかり、そこで肝臓がんや白血病が起こってくるという事が証明されております。
次にヨウ素131。これは、ヨウ素はみなさんご存じのとおり甲状腺に集まりますが、
甲状腺への集積は成長期の甲状腺形成期が最も特徴的であり小児におこります。しかしながら1991年に、最初ウクライナの学者が「甲状腺がんが多発している」というときに、日本やアメリカの研究者はネイチャーに「これは因果関係が解らない」ということを投稿しております。何故そう言ったかというと1986年以前のデータがないから、統計学的に有意だという事を言えないということです。
しかし、統計学的に有意という事がわかったのは、先程も長瀧先生からお話しがありましたが、20年後です。20年後に何が解ったかというと、86年から起こったピークが消えたために、これは過去のデータが無くても因果関係があるという事がエビデンスになった。ですから、疫学的証明というのは非常に難しくて、全部の事例が終わるまで大体証明できないです。
ですから今 我々に求められている「子どもを守る」という観点からは全く違った方法が求められます。そこで、今行われているのは、ここには国立のバイオアッセイ研究センターという化学物質の効果をみる福島昭治先生という方が、ずっとチェルノブイリの尿路系に集まる物を検討されていまして、福島先生たちがウクライナの医師と相談、集めて500例以上の、前立腺肥大の時に手術をしますと、膀胱もとれてきます。これをみまして検索したところ、
高濃度汚染地区、尿中に6ベクレル/ℓという微量ですが、その地域ではP53の変異が非常に増えていて、しかも、増殖性の前癌状態。我々からみますと、P38というMAPキナーゼとエヌエフ・カッパー・ビーというシグナルが活性化されているんですが、それによる増殖性の膀胱炎というのが必発でありまして、かなりの率に、もう上皮内のがんができているという事が報告されております。
それで
、この量に愕然といたしましたのは、福島の母親の母乳から2~13ベクレル、7名で検出されているという事が既に報告されている事であります。
次のページお願いします。我々アイソトープ総合センターでは、現在まで毎週700キロメートル、大体一回4人づつの所員を派遣しまして、南相馬市の除染に協力しております。南相馬でも起こっている事は全くそうでして、20km30kmという分け方が全然意味がなくて、その幼稚園ごとに細かく測っていかないと 全然ダメです。それで現在20kmから30km圏にバスをたてて1700人の子どもが行っていますが、実際には避難、その南相馬で中心地区は海側で学校の7割で比較的線量は低いです。ところが30キロ地点の飯館村に近い方の学校にスクールバスで毎日100万円かけて子どもが強制的に移動させられています。
このような事態は一刻も早く止めさせてください。
いま、その一番の障害になっているのは、
強制避難でないと補償しない、参議院のこの前の委員会で当時の東電の清水社長と海江田経済産業大臣がそういう答弁を行っていますが、これは分けて下さい。
補償問題、この線引きの問題と、子どもの問題は直ちに分けて下さい。
子どもを守るために全力を尽くすことをぜひお願いします。
それからもう一つは、現地でやっていますと、除染というのの、緊急避難的除染と恒久的除染をはっきり分けて考えていただきたい。緊急避難的除染を我々もかなりやっております。たとえばここの図表に出ております、この滑り台の下。滑り台の下は小さい子が手をつくところですが、
この滑り台に雨水がザーッと流れてきますと、毎回濃縮します。右側と左側とズレがあって、片側に集まっていますと、平均線量1マイクロのところだと10マイクロ以上の線量が出てきます。それで
、こういうところの除染は緊急にどんどんやらなくてはいけません。
それから、こういうさまざまな
苔が生えているような雨どいの下、これも実際に子どもが手をついたりしているところなのですが、そういうところは、例えばですね、高圧洗浄機を持って行って苔を払うと、
2μシーベルトが0.5マイクロシーベルトまでになります。だけれども
、0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しいです。
それは、
建物すべて、樹木すべて、地域すべてが汚染されていますと、空間線量として1か所だけ洗っても全体をやる事は非常に難しいです。ですから、除染を本当にやるという時に、いったいどれくらいの問題があり、どれ位のコストがかかるかという事を、イタイイタイ病の一例で挙げますと、カドミウム汚染地域、だいたい3000ヘクタールなんですが、そのうち1500ヘクタールまで現在除染の国費が8000億円投入されております。もし、この1000倍という事になれば、いったいどれほどの国費の投入が必要になるのか。
ですから私は4つの事を緊急に提案したいと思います。
第1番目に、国策として、食品、土壌、水を、日本が持っている最新鋭のイメージングなどを用いた機器を用いて、もう、半導体のイメージ化は簡単です。イメージ化にして流れ作業にしてシャットしていってやるということの最新鋭の機器を投入して
、抜本的に改善して下さい。これは今の日本の科学技術力で全く可能です。
2番目、緊急に子どもの被ばくを減少させるために新しい法律を制定して下さい。私のやっている、現在やっているのは、
すべて法律違反です。現在の障害防止法では各施設で扱える放射線量、核種等は決められています。東大の27のそのいろんなセンターを動員して現在南相馬等の支援を行っていますが、多くの施設はセシウムの使用権限なんか得ておりません。車で運搬するのも違反です。
しかしながら、
お母さんや先生たちに高線量の物を渡してくる訳にもいきませんから、今の東大の除染ではすべてのものをドラム缶に詰めて東京へ持って帰ってきております。受け入れも法律違反、全て法律違反です。
このような状態を放置しているのは国会の責任であります。
全国には、例えば国立大学のアイソトープセンターというのは、ゲルマニウムを始め最新鋭の機種を持っているところは沢山あります。そういうところが手足を縛られたままで、どうやって国民の総力を挙げて子どもが守れるのでしょうか。
これは国会の完全なる怠慢であります。
第3番目、国策として土壌汚染を除染する技術を民間の力を結集して下さい。これは、例えば東レだとかクリタだとかさまざまな化学メーカー、千代田テクノとかアトックスというような放射線除去メーカー、それから竹中工務店とか様々なところは
放射線の除染などに対してさまざまなノウハウを持っています。こういうものを結集して現地に直ちに除染研究センターを作って、実際に何10兆円という国費がかかるのを、いまだと利権がらみの公共事業になりかねない危惧を私はすごく持っております。国の財政事情を考えたらそんな余裕は一瞬もありません。
どうやって除染を本当にやるか、7万人の人が自宅を離れてさまよっている時に 国会は一体何をやっているのですか!
以上です。
以上が、児玉龍彦氏の動画を文字起こししたものです。我々福島県民の代弁者と言ってもいい内容だと思います。
4つの提案とありましたが、時間の関係か3つとなりました。
1.国策として、最新鋭の機器を投入し、食品、土壌、水を抜本的に改善する。
2.緊急に子どもの被ばくを減少させるために新しい法律を制定する。
3.国策として、土壌汚染を除染する技術を民間の力を結集し行う。
我々が願っていることです。国会議員は、フクシマを見捨てることなく、早急な対応をしてください。我々は日々被ばくをしています。子どもたちは、高放射能の中を国や県や市の「安全・安心・風評」を信じ、歩いています。地元の野菜を食べ、水を飲み、汚染された校庭で震災後もスポーツをし運動会をした子どももいます。運動会を行った後の除染?順番が違います。
現実を直視している者は、避難をしています。しかし、様々な事情により避難できない者もいます。また、国を信じる県民にも罪はありません。
現在、シルバーセンターでは、放射能問題の影響により、木の伐採や剪定及び落ち葉拾いなどの仕事を受けていないそうです。除染と言いますが、行う我々は被ばくをします。福島県は、県民に除染を行わせるために補助金を出していますが、本来これは国が行うべきものです。汚染土の運び先も定めず、何から何まで県民に委ねるという考えが理解できない。町内会やPTAが除染を行うというが、それは被ばくを意味します。それが当然という考え方に満足してはいけない。我々は、家族や子どもを守るために、仕方なくやっています。誰もこれ以上の被ばくはしたくない。
また、自然豊かな福島県では、市民の除染にも限界があります。児玉氏の言うように、国が総力をあげ取り組まなければ、除染することはできない。0.5マイクロシーベルトで納得してはいけない。以前の数値に戻す努力をしてください。最大限の努力をしてください。私は、国会議員がテレビで笑っているのを見ると腹が立ちます。