人生をひらく東洋思想からの伝言

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第14回「生の始めに暗く死の終わりに冥し」(弘法大師「秘蔵宝鑰」より)

2021年12月09日 | 日記

【人生をひらく東洋思想からの伝言】 

第14回 

「生(しょう)の始めに暗(くら)く、死の終わりに冥(くら)し」

(弘法大師 「秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)」より)

 

なんのために我々は生きているのでしょうか?

その問いに明確に答えられる人は、あまり多くはないかもしれません。

何世紀にひとりという優れた才能をもって生まれた弘法大師空海は、

「秘蔵宝鑰」という本のなかで、人間の生と死について考察されています。

 

「秘蔵宝鑰」というのは、「秘密の蔵を開ける宝の鍵」という意味ですから、

きっと弘法大師も、その宝の鍵で人生の秘密の扉を開かれたに違いありません。

 

弘法大師空海は、非常に重要なことを述べるときや感動したときには、

ことばを重ねるのが癖のようです。冒頭のことばは、全文をきちんと引用すると、

「生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥し」

というものです。なぜ、四回も「生まれ」ということばを繰り返し、

また「死に」ということばを繰り返しているのでしょうか?

 

何度も我々は生まれて、何度も死を経験しているのにも関わらず、

その本当の意味を知らずに、繰り返してしまうのが我々人の常かもしれません。

 

古くから「親族のなかより一人出家せば、九族天に昇る」ということばがあるように、

その意味をしっかり知り、この世で実践して生きることで、

その人の一族と過去四代にさかのぼる四族、未来四代にわたる四族、

あわせて九族が天界に昇ることができる、ということを伝えたかったのでしょうか。

 

私自身、五十代になり、死を意識するようになり、

生きることの意味もより考えるようになってきました。

本来、もともと生も死もなかったような夢のような気持ちになった時に、

本質が見えてくるかもしれません。そんなことを意識しながら、

これからの人生を振り返り、向き合っていきたいと思います。

 

参考文献 『弘法大師 空海のことば 』(大栗道榮著 すずき出版)

 

      


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