松下啓一 自治・政策・まちづくり

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☆ふるさと納税⑪そこから見えてきたこと

2020-04-22 | 域外住民への関与
 まとめてみよう。ふるさと納税から、いろいろなものが見える。

 ふるさと納税を寄付を受ける自治体から見てみよう。対象は、域外の住民である。この住民を対象に寄付をどれだけ集めるかを競う政策である。地方自治体も、国と同様に、住民(人的要素)、領域(空間的要素)、支配権(地方統治権)の3要素から構成されているが、この3要素とは違う領域に入っている。この点が、そもそもの問題意識だった。地方自治の変容が見えるからである。

 泉佐野市が集めたふるさと納税は、約500億円。三浦半島の逗子市の1年の予算をはるかに超える。自治体の領域以外の住民を対象とする政策が、無視できないということである。金がない時代なので、なおさらである。

(1)他からお金を集める政策は、今後の自治経営のひとつの活路になるということである。どうすれば、他からお金を集められるか、知恵を絞るのだろう。
 ・クラウドファンディング型の寄付のようなもの
 ・自治体という看板を使って、税金控除ができる指定寄付制度のようなもの
 ・投資のようなものはできないか

(2)お金だけでなくて、ひと、モノ、情報も対象になる。
 ・産業を集める政策は、ずっとやってきた
 ・人を集める政策は、移住、定住政策でこれもやってきた。神山町などが成功例である。
 ・政策を集める仕組みも始まっている。
 これらに比べて、お金を集める方式は、直截的で、ずっとえぐい。
 これまでとの違いは、一人ひとりの住民をターゲットに、寄付を募り、移住してもらうというのが、新しいところなのだろう。

(3)ふるさと納税では、その手法があまりに無茶苦茶というのが、問題点である。これは自治体が悪いというのではなくて、そうすることを仕向ける制度が悪い。協力と助け合いを基本とするのが地方自治であるが、そこがすっ飛んでしまって、景品やお得を持ち込んでしまったということである。
 ・地方自治の原点が強力・助け合いであるという基本を常に忘れずに、制度設計することが重要であること。
 ・豪華な賞品の方向に走るのは、自治体も寄付者も合理的な行動なので、そうならないように緻密な制度設計をきちんとしなければいけないこと

(4)ブレーキ役がいなくなった。
 ・この制度が機能するには、自治体の自律が求められるが、どうしても行き過ぎになるので、これを自治体間で規律することが求められるが、それができなかったこと。困って国に泣きついた(原因をつくったのも国であるが)。地方分権なのだから、当事者間では、決められないでどうする。情けない。当事者で決める仕組みをつくらないといけない。地方間紛争調整委員会のようなものが必要である。

(5)地方が国のいうことを聞かなくなった。
 ・国は、今までのように、指針を出せば、地方は従うと考えていただろう。しかし、多くの自治体が無視し、泉佐野市は、そんな通知は、法的な拘束力がないと言って、「閉店セール」と銘打って、アマゾンの券まで売り出した。喧嘩ごしである。
 ・頭に来た国は、過去にそんな悪さをした泉佐野市を過去の行状を理由に、ふるさと納税指定団体から外した。それでおとなしくなるかと思ったら、国地方紛争委員会に訴えてきた。委員会では、国のやり方は、後出しだと言われれ、国は負けてしまった。
 ・後戻りできない国は、そのまま突き進むが、泉佐野市は、今度は、裁判に訴えた。大阪高裁はなんとか、国が勝ったが、最高裁では負けるかもしれない。
 ・今度は国は、泉佐野市の地方交付税を減らしてきた。筋が通らないように見えるが、どうなるか。
 ・国が、国地方紛争委員会の答申を無視したのも興味深い。ダメといっているのではなく、自らに理があると考えたら、これもありである。裁判になるち、不利だろうが。

(6)地方自治の原理と実際の地方自治がずれである。
 ・地方自治の3原則は、すっかり例外が多くなった。例えば、原発では、いまだに戻れない地区の住民に、その町の住民登録ができる制度もある。
 ・ヘイト言動を繰り返す、他自治体の住民の名前も公表できるようになった。条例の域外適用である。
 ・他の町に住んでいるが、思いがある人を対象に、関係人口という概念もつくられた。

(7)域外自治政策のようなものが必要であるが、今後の検討としよう。

 以上




 

 
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