パエ-リャ

木製カトラリ-

縦糸の張り方 - part 3

2015-01-18 10:46:32 | Weblog
私の最終的な目標は高齢者が苦労しないで織りを楽しめる手助けをすることだ。高齢者には糸を結びつけるような単純な作業も難しいことがあるからだ。

伝統的な織りの世界はガラパゴス的だ。例えば用語がそうだ。綜絖、一体何の事だか直ぐに分かる人は少ないだろう。私はそれを羽根板と呼び換えている。男巻き、女巻き、これも判りやすいように糸巻き、布巻きと言い換えている。その他にも「筬」等という用語がある。なんだか覚えてもいない。それに、整経、これは用語だけでなく、私の織り機の場合、その必要性すらなくしてしまった。整経も大変な作業だからだ。

さて、

織り機と織りを考える場合、縦糸の張り方と、もう一つは横糸を張る場合のいわば運用の問題があるが、運用の問題は経験値に連動するので深くは追及しない。

縦糸がちゃんと張れれば後は運用の問題と言っても過言ではないからだ。なので、主にパ-ト1で示した伝統的な方法の問題点を再度考えてみる。

1. 縦糸を張り終えるのに時間がかかる
2. それぞれの縦糸の張力が同一にならない
3. 4本ずつ結んだ房ごとの張力の調節は出来ない事ではないが手間がかかる上、一つの房を構成する個別の1本1本の縦糸の張力の調節が不可能な事
4. 4本でひと房単位での結びは縦糸の平行性を損ねている

私の織り機はこれらの諸問題を大幅に解決するものだ。以下、個別に画像を見せながら解説する。

まず、パ-ト2で考察したように、巻き取りを考えると縦糸はそれぞれ独立して張られる必要があるが、そのためには両端を結ぶ作業が縦糸の本数の2倍必要になる。60本の経糸で作業する場合、120回の結び作業をすると言う事で、パ-ト1で見たように伝統的な結び方は特殊なやり方なので、尚更手間がかかる。

私の場合、結びと言うものは糸の端にル-プを作る以外は行わない。画像を見て欲しい。

このようなル-プを縦糸の本数だけ作って、糸巻き側のペグに引っ掛けるだけだ。反対側の端はル-プすら作らないで作業を進めて行き、最後に押さえ金具で押さえるだけだ。その押さえ金具を最終的にしっかりと閉める前に、個別の縦糸のゆるみを引っ張って直すだけになる。大変な時間の節約になるだけでなく、個別の張力調整を可能にするので、出来上がった布が部分的に弛んでいるような事が起きない。

糸巻き側の糸端の処理の最終場面は次の画像に示されている。縦糸の端がペグから外れない様に押さえ金具で留めてある。金具の両端に2本のネジで締め付けるだけで、木ネジではなくビスを使って、ロ-ラ-内部に固定した鬼目ナットに固定する仕掛けなのでねじ止めの場所も決まっている。

この画像では木製のペグを使っているが、最終的には真鍮の丸頭クギを使う事になる。コストと加工の手間、それに糸張り時の扱いやすさを考慮しての話だ。

で、布巻側の処理だが、糸を羽根板に通す必要があるので、少しづつ、以下の画像の様に縦糸を大雑把に振り分けて行う。羽根板を通す事で糸の順序も次の画像にあるように自動的に整理されるが、
それでもよく見ると隣通しの縦糸が交差していたりするのでクシを使って整える必要はあるが、簡単な作業だ。次の画像では既に布巻側にも押さえ金具が取り付けられていて、整理が済んでない部分が垂れ下がった状態を示している。
この画像の押さえ金具と羽根板との間の縦糸は既に全て平行に整理されている。この後の作業は糸巻き側で糸を巻きこむことだ。そのために布巻側の押さえ金具は緩く閉められている。垂れ下がった部分にクシを入れたりしながら少しづつ巻き上げて行くと、次の2枚の連続画像の様になる。


この時点で個別の縦糸を引っ張ると、緩い場合は縦糸が手前に出て来る。そして止まってしまう。60本を引っ張るのは簡単だ。数分で出来るので、最後に金具を締めて完了だ。

そして、羽根板を中立の位置から上か下に動かせば、次の画像のように綺麗な開口部が形成される。もし、1本でも糸の弛みがあれば、このような綺麗な三角形の開口部は形成されない。

個別の縦糸の張力を調整出来る事、そして、いちいち端を結ばないで全部一緒に固定出来る事、これは素晴らしい仕組みで、自画自賛している。実機では布巻側にも30本の真鍮の丸頭クギを打ち付けて縦糸の整理を更に楽にする予定だ。

次の画像は横糸を張り始める準備として、木の平たい板を開始位置にセットした所だ。なくても構わないが、差し込んでおくと最初の数回の横糸通しの時に便利だ。次の画像はそれを横から見たものだ。その次の画像は最初の横糸がシャトルで三角形を通り抜けた直後を示している。右端の短い横糸の出っ張り部分は折り返して縦糸の間にしまい込んでしまえば、そのうちに見えなくなる。

数回横糸を通したのが次の画像、そして更に織り進んだのが最後の画像だ。

クシや補助的に使う細板などが見えるが、本質的に重要な小道具ではない。運用上の注意点は勿論あるが、それらはマニュアルに記載されるので、ここでは触れない。私の織り機の改良は続けられるが、基本的な考え方は既に述べた通りで、あくまでも介護施設などにいる高齢者が手軽に楽しめる趣味を提供するものだ。