さて、いちばん詳しい石油の情報はどこにあるのかというと
どうもアメリカ、とりわけ確実なデータがありそうなのは国務省の「地質調査局」のようです。
その理由は何といってもエネルギー資源をいちばん欲しがっている国ですし
世界の石油の4分の1にあたる26%がアメリカ一国で消費されているからに他なりません。
(最新データでは中国等の伸びが著しいため、米国の比率は下がっているかも)
【様々な説の要点】
米国地質調査局の報告書(2000年)
(1) これまでアメリカ国外で生産された石油は5390億バレル、国内で生産された石油は
およそこの3分の1だから合計すると約7000億バレルほどを世界が採掘して来たことになり
すでにアメリカ国内の残りはわずかになった。
(2) 確認埋蔵量と未発見埋蔵量を合わせると2兆1200億バレルと見積もることができ
仮に世界の年間消費量を現状の270億バレルとすると枯渇年数は78年となる。
(3) 天然ガスの埋蔵量も、石油換算でほぼ同じ程度と見積もることができる。
(4) 石油の埋蔵量は、アフリカ大陸・アメリカ大陸の大西洋岸
それから中東で見積もり量が増えている。
しかしメキシコや中国については減っている。
*1バレルは約159リットル(ドラム缶に八分目まで石油を入れた程度)
上記勤務の地質学者M氏
(1) 石油の需要が生産量を上回ってしまう〈大反転〉が
やがて起きるのは不可避であり
その時期は2003年から2020年までの間と思われる。
(2) 〈大反転〉の後は、売り手市場となって価格が上昇する。
(3) 新規に発見される石油の量は時とともに次第に少なくなっている。
技術の改良や油田の発見で増える量は限られている。
*いつ石油が枯渇するかについて述べていない。
*〈大反転〉という考え方がネットのあちこちに大量に引用され有名になった。
米国研究者G氏
(1) 石油は生物の遺骸が変成したものではない。
石油の中にふくまれる生物の生存を示す物質は後から混入したものである。
(2) 太古から地中深くに古細菌に属する生物が生息してきた。
この生物は地中の炭化水素をエネルギー源としていた。
(3) 地上の生物より多くの生物が地中深くに生きている可能性が高い。
(4) 石油は太古から地中深く存在していた炭化水素が岩石の隙間を通って上がってきたものである。
(5) 数々の証拠から考えて、地下深くにはまだまだ大量の炭化水素が眠っている。
*「石油は化石燃料ではない」とする説。地下深くに見られる炭化水素が生物起源ではなく
太古からマントルや地殻に存在しているとすれば、量が非常に大きなものとなり
これまで書いてきた可採年数の話がばかばかしくなるほどの莫大な量の可能性もある。
もしもこの説が正しく、しかも地下数キロという深いところの採掘が可能であれば
石油などの炭化水素資源は、理論の上で今後まだまだ利用できることになる。
日本の試算(米国の数字を基にしている)
02年11月26日に石油鉱業連盟が可採年数と枯渇年数を発表しました。
(1)確認埋蔵量に基づく可採年数は33年、そのほかに今後の推移で17年分は確保できるので
その分を入れると可採年数は約50年となる。また、究極の枯渇年数は79年。
*東大のA氏は「この予測は結構悲観的なものに属する。
それは、石油がいくらでもあるという話しを書くと
石油の価格が下がるからだと言われている」と述べています。
【採掘できるかどうか、は仮定に過ぎない】
石油の可採年数(採掘可能年数)を求める時には
埋蔵量の全体が採掘可能なのかどうかを見きわめなければならず
単純に確認埋蔵量を現在の生産量で割ればいいことにはなりません。
G氏の言うように、もしも石油(含む:天然ガス・メタンハイドレートなど炭化水素)が
海底や地中深くにきわめて豊富に存在しているとしても、問題はその採掘方法ということになります
これまで石油は生物起源だという考えから、ほとんど採掘は堆積層で行われてきたものが
この説では火成岩層にまで及ぶからです。
【石油が燃えると二酸化炭素が出る】
これまでの化学工業の歴史を見ればわかるように
石油を原料とすれば無数の人工合成物質を作ることができます。
ただ、それが人体や生態系にどのような影響を与えるかが
すべて分かっているわけではない、否、それどころかわからない物質のほうが遥かに多く
大きな影響を及ぼす物質が次々に増える可能性が大きいし、現にそうなりつつあります。
また、燃やすことによって様々な分解生成物が大気中にまき散らされてきました。
石油消費量の半分以上は交通機関によるもののため
自動車の排ガスが都市の大気汚染の大きな原因となっていますし
二酸化炭素の排出量が莫大であることから
地球温暖化の最大の原因とされていることはご存じの通りです。
また、空気中の二酸化炭素濃度が高くなると、人間は危険な状態に置かれます。
濃度が 3~4% を超えると頭痛・めまい・吐き気などをもよおし
7% を超えると数分で意識を失います。
この状態が継続すると、麻酔作用による呼吸中枢の抑制のため
呼吸が停止し死に至ります(二酸化炭素中毒)。
一方、植物にとってはなくてはならないもので
光合成によって酸素と有機化合物が生まれ、その有機物が動物の起源となりました。