女房は食物を前にしてたまに「食べられるかな?」と私に訊きます。
普通はこれが「まだ大丈夫(腐っていない)?」の意味なのですが
最近では私の作った野菜に対して尋ねますので
これは「口にして大丈夫?」という意味合いなのでしょう。
昨日1株収穫したカリフラワーでもそう訊かれました。
“腐っているかどうか”の判断をすることには我々世代はある程度の自信があります。
戦後の幼少時代に腐敗臭がするまでは捨てずに口にしていたので
その臭いと味を知っているからです。
特に高級品であった肉や魚で判断が微妙な時は、飼い猫のタケ(代々そう呼ばれた)に与えてみて
鼻を近づけた結果食べそうなら取り上げて自分で食べてしまったものです。
彼等は保身のため腐ったものは食べないからと言う理由で
祖母も親もそうしていたからです。
時代は変わり、今やこの判断を自分ですることはまず無く
他人の決めた消費期限や賞味期限に従ってこれが過ぎたモノは基本的には廃棄してしまうのですが
冷蔵庫の中の料理の残りものなどは私の出番になります。
もはや、私の判断能力も“更新”されることなくオボツカナイものになっているのかもしれませんが
それでも、「三つ子の魂、百まで」の言葉通り、腐りかけているものは鼻と舌でまだまだ判るつもりです。
ただ、その頃身に着いた食べ物の臭いをつい嗅いでしまう悪癖が残ってしまっていますので
その行動を見られて気分を害されないように普段は気を付けてはいますが…。
参考までですが、子供が甘い食物が好きな理由は
甘い物に毒がないことを本能的に知っているからで、歳をとって苦味が好きになるのは
逆にその能力が衰えるから、と何処かで読んだことがあります。
また、舌の先っぽの方で苦味と酢っぱ味、奥で甘味を感じる人間の作りも同じ理由だそうです。
ところが一方、自分で作った野菜が売られているものと姿、形、色が少し違う場合
何の問題もなく食べられるのかどうかについては、正直なところ分からないのです。
小さかったり変形したりしていても
「まだ作り方が下手だから」と思って平気で食べてはいますが
そもそも原因が病気の場合、これを食べて腹痛を起こすなんてことはあるのでしょうか?
また、農薬を使っていないので収穫した野菜に青虫やナメクジがよく付いていますが
気付かずに調理して一緒に食べてしまった場合も何か不都合があるのでしょうか?
そんな話は聞いたことがありませんし、毒キノコや毒草と違い特に問題ないとは思うのですが
念のため、次の野菜作り講座の時に質問して見ようかなあ。
昨年秋のカリフラワーは鶏卵並の大きさにしかならず
ここまで大きくなったものを収穫するのは生まれて初めてのことです。
売り物に比べて表面が凸凹で、その上やけに紫色がかっていました。
「食べられるかな?」と訊かれてもなんとも答えられず
茹でたら紫色は消えて味も普通のカリフラワーでしたので、マヨネーズで美味しく頂いてしまいましたが
夫婦ともども、一日経った今のところ体調に異変はありません。
江戸時代、殿様は温かい物を食べたことがなかったと言われています。
理由は、毒味係がまず試食し、しばらく様子を視て
異常がないことを確認した上で御前に出すのでどれも冷めてしまったのだとか。
まさか毒味に一日はあり得ませんから、このカリフラワーは全く問題なしとの結論と相成りました。