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絵じゃないかぐるーぷ
* 争い終えて
「やめてくれー」
オヅヌは、清香の手をふりほどいて、
横たわっている大魔じんと玄武の間に飛び出していった。
大魔じんは、とうとう根つきたのである。
それでも、刀を振り回す事を、止めてはいなかった。
「あぶない」と言いながらも、清香も後を追う。
「四獣神さま、私は間違っていました。
もうおやめ下さいませ」
オヅヌは、ひれ伏して玄武たちに頼んだのである。
「坊、いや、オヅヌ青年よ、ついに気がついたか」
その昔、あのタタラ丘で聞いた、
なつかしい蛇の声であった。
「お前の心は、恐ろしかった。
鬼神と化す力も持っていた。
しかし、もう大丈夫のようじゃのう。
己の愚かさと、
己の持つ悪魔に気がついた人間は、
鬼となる事あるまい。
清香と夫婦になって、仲良く暮らせ。
さらばじゃ。
では、大魔じん殿、ご苦労でありましたのう。
皆行こうか」
大魔じんは、よろけながら立ち上がり、
四獣神たちと共に、紫雲に乗って去っていった。
不思議なことに、大魔じん、四獣神たちが去った後の、
京の街は何事もなく、静かな夕暮れを迎えておりました。
オヅヌの悪の心は、すっかり萎えてしまって、
おだやかな、ほの暖かい心に、包まれていたのです。
西の夕焼けのかかる空には、
大魔じんたちの乗った紫の雲が小さくなって、
遠ざかっておりました。
その雲に向かって、手を合わせて拝んでいる、
清香の肩に、ためらいがちな、
オヅヌの暖かい手が、そっと伸びてゆきました。
おわり