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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* クイズ短歌の解読
ちうにも嫌がらせがあった。
もっとも、そのお陰でクイズ「短歌」の解読に
成功したのだが・・
ヤツラの中にも、私たちに味方する者が居るのか、
あるいは、彼等が間の抜けた悪戯をしたのかは、
よく分からない。
どちらにしろ、素晴らしい進展を見せた。
やはり、持つべきものは、親友である。
その日も、ちうはMBGランド(パチンコ店)に
出掛けていた。
普段は、役物台ばかり専門に打っているのだが、
たまたま、デジパチ台に坐ったそうだ。
役物台とは、台の真ん中あたりに飛行機の模型のような
役物が、セットされた台である。
入賞穴に球が入ると、飛行機の羽根が数回開く。
その開いた羽根を通って、大当たり穴に、球が入ると、
羽根が一定回数開閉し、うまく打てば、連続する。
デジパチ台とは、デジタル式パチンコ台の略称で、
MBG台の中にセットされたICのチップに
組み込まれたプログラムでコントロールされる
台のことである。
3~4個の数字や絵柄がディスプレイ板上に、
一定の形に並べば、大当たりとなる台である。
その折衷式の台もある。
警察の規制が厳しいので、メーカーの創意工夫が、
十分生かされない産業でもある。
そのデジパチ台で、彼がプレイしていると、
77が、揃い3桁目に7が揃ったので、
にんまりとした途端、真ん中の7の表示が、
スペースに変わったそうだ。
一瞬、ランドの陰謀なのかと思ったそうだが、
そんなことを、表面だってすると、信用を無くし、
倒産の憂き目に遭うので、そんな馬鹿な事を許す、
経営者もいないはずだ。
とすると、これはMグループの仕業に違いない。
彼は、プレイ中もずっと短歌の謎を、
考え続けていたそうだ。
その真ん中のスペースが、パッと彼の頭の中で、
ビッグバンの爆発のごとく、拡がったそうだ。
お化けになった無念さも忘れて、N先生の家に、
飛んで帰った。
お化けとは大当たりが、途中で、解除されることをいう。
「センセー、センセー」
「おう、ちう君、慌ててどうした?」
「先生、一握の意味、1文字空けたらどうでしよう?
砂の前で」
「おおっ! 一空くの砂か!」
元の短歌は、こうだ。
東海の小島の磯の白砂に
われなきぬれて
蟹とたわむる
講談社・石川啄木集「一握の砂」より
1文字空けると、次のようになる。
東海の小島の磯の白 砂に(1空くの砂)
われなきぬれて ・・
蟹とたわむる
これでは、まだ不十分だ。息の区切れも悪い。
4行書きに変えてみる。
東海の小島の磯の白
砂にわれなき
ぬれて
蟹とたわむる
こうすると、すっと解読が進んだそうだ。
東海の小島の磯の城
砂に割れ無き
塗れて
蟹とたわむる
「砂に割れ無き」は、おそらく、砂はコンクリートの、
材料なので、砂が割れないというのは、
コンクリートを、意味しているのだろう。
「塗れて」は、塗り込めての意に違いない。
コンクリートのヤツは、最近では、殺人の証拠湮滅の
片棒をかついでいる。
困ったものだ。そう言えば、万博公園のタイタイも、
コンクリート製、きっとヤツは大粒の涙を流して、
仲間の悪業を嘆くに違いない。
チーコちゃんのあの可愛い身体は、
今、コンクリート詰めにされているのに違いないのだ。
それにしても、場所は一体何処なのだ。
Mキラリーが、蟹とたわむれる・・・
残酷な奴のことだから、蟹もただでは済むまい。
奴の性格もヒントになると言っていたから、
おそらく、生きたまま、手足をもぎ、引き千切り、
引き裂くのだろう。
その線で、東海地方の地図を拡げて、小島の名前を
調べてみると、知多半島の数km先に、愛知県
幡豆郡一色町の「佐久島」が浮かんでいた。
2人は、顔を見合わせて、
「先生、ここですね」
「うん、ここしかない! 引き裂く。裂くか」
会社で、月末の締切の仕事に追われている、
私に緊急の電話が入ってきた。
「ドンちゃん、短歌、解けたぞ!」
ちうの興奮した声が、流れてきた。
しかし、私の頭は、締切の仕事で塞がっていた。
普段の日なら、早退したいのだが、
ピーク時の手抜きは許されない。
私も、どう解けたのか知りたかったのだが、
1分といえども、惜しいほど仕事が詰まっていた。
「悪い。今、全然手が離せないんだ。今日、帰りに
寄って帰るから、すまん」
彼には、会社勤めのこんな私の心境が、
わからないだろう。いや、十分すぎるほど、
知っているのかもしれない。
彼は、自由業だ。
手一本で気楽な(?)生活を送っている。
しかし、40を越えて、今だに独身だし、
老後の保証もない。
彼の将来を考えると、暗い気持になってくるのだが、
彼は、そんな事は、おくびにも出さない。
それにしても、短歌の解読が気になる。
こんな事になるんだったら、大筋だけでも、
聞いておくのだったと後悔しながら、
手は、締切の仕事を、せっせと続けている。
20年も勤めを続けていれば、こんな芸当も、
出来るようになってくるのだから、面白いものだ。
7時すぎに一段落ついたので、会社を出て、
N先生宅回りで帰ることにした。
10人足らずのセクションだが、同僚も締めに追われて、
帰る者は、少なかった。
先生宅は、同一私鉄にあるのだが、線は違っている。
わが家から電車で30分あまりの閑静な住宅街の
一角にある。
二人は、私の到着を、首を長くして待ってくれていた。
解読の行きさつと結果を、紙に整理してくれていた。
二人の誇らしげな顔を見ると、私も助かったという、
安堵感が、湧き起こってきた。
ありがたい。
さあ、これでチーコちゃんの可愛い姿を、取り戻せるぞ。
つづく