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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
* ついに、チーコちゃんの身体を発見する
二人と別れ、会社のパソコンを拝借して、
「縄通」ネットに、
「
関係者の皆様へ
ぽんぽこぽん。
オッさんより
」
と書き込みをした。あの狸の歌をもじったものだ。
「皆、出て来い来い来い」を意味する、
緊急呼び出し用の言葉だ。
2度とは使えない。
結果の行動を見て、敵に悟られるからである。
こんな特殊用語の連絡役は、コロがしてくれている。
空飛ぶ能力を、フルに発揮して、耳打ちで、教えて回る。
今回は、チーコちゃんの兄貴の忍者狸のコガ坊が、
考え出したものだ。
集まる場所は、決まっていた。
大正区の向かいにある、
住之江区の南港のはずれの空き地である。
私は、6時すぎに会社を出て、N先生達と、
ゆっくりと食事をした。
11時が現地集合時間である。
難波の古本屋のハシゴをし、
ちょうどいい時間になったので、3人でタクシーに乗った。
空き地には、皆揃っていた。
タイタイが、尽力したのだろう。
全員、タイタイに乗りこみ出発する。
中は、窮屈で息苦しかった。
いや、そう狭くはないのだが、定員が多すぎるのだ。
特に、大柄のドンガラッキーは、恐縮してしまっている。
N先生やちうは、初対面の者も多いので、
たちまち、ハチの巣を突いたような、騒音が湧き起こった。
何にしろ、ススキの穂、杉の木の切り枝、信楽焼き、
小岩、鏡、犬、バイク、ゴキブリ、人間と、
入り乱れての、瞬間旅行である。
サヤカの翻訳機能は、200%の働きを、してくれていた。
数分で、堤防に着いた。
全員で降りて、堤防の壊れかけた部分を捜す。
皆で手分けして、捜したので、簡単に見つかった。
暗く静まりかえった少し離れた倉庫の横では、
数台の車のヘッドライトが、不気味に、
チカッチカッと光っていた。
私たちを監視しているのだろう。
タイタイが、よっこらしょと、歩いて近づいてゆくと、
蜘蛛の子を散らすように、逃げ去ってしまった。
恐らく、Mグループに違いない。
しかし、それ以上は、何も仕掛けてはこなかった。
ドンガラッキーが、潜水艇に化けて、
ネオンをキラリと映すドス黒い海の中に、
チーコちゃんを詰めたコンクリート塊を、
捜しに潜ってゆく。
皆は固唾を飲んで、防波堤の上から覗きこんでいる。
1秒1秒が、長く長く感じられる。
1分ほど経って、ガラッキーが、上がって来た。
皆の歓声が上がる。
{汚ったねーなあ。大阪湾て、どこもこんなのか?}
シラーッ。
沈黙が半回転した。
彼は、息継ぎに、浮かび上がってきたのだった。
大きく息を2~3回して、再び潜っていった。
10回ほど潜って、ついにチーコちゃん・コンクリを、
発見して来た。
海藻や貝がら、おまけにヘドロまでくっついていた。
猿石のわんとわんわんが、
丁寧に、コンクリを剥がしてゆく。
タイタイは、複雑な気持なのだろう。
後を向いたままだった。
同じコンクリート製の仲間が、いくら悪いヤツとはいえ、
一片一片壊されてゆくのを、正視できないのだろう。
甲賀狸のコガ坊と伊賀の狸のイガチッチは、
傍に座り込んで、心配そうに、覗き込んでいた。
赤い靴が見えてきた。
チーコちゃんの姿が、だんだんと現われてくる。
ゴキブリのゴキオーラのヤツが、
私に、ウィンクを送ってきた。
意味ありげな視線。
私は、心を見透かされたようで、気恥ずかしかったが、
夜の闇が、顔色を隠してくれていた。
ゴキオーラのヤツは、わが妻Oさんの大ファンである。
チーコちゃんの姿は、今日初めて見る。
そのチーコちゃんが、Oさんにそっくり。
これは、いくら鈍感なヤツでも、
何かあると、気がついただろう。
それもそのはず。
私が、Oさんの5~6才の時の写真を見せて、
チーコちゃんに頼んで、化けて貰っているのだった。
だから、一緒に住んでいる、
タイタイや兄貴のコガ坊に負けず劣らず、
私も、チーコちゃんの事が、
気掛かりでならなかったのだ。
しかし、根が単純なゴキオーラのヤツは、
私の隠し子だとでもと、思っているに違いない。
帰りに、ゆっくり説明してやることにしよう。
ちうも、気がついたはずだが、何も言わなかった。
それにしても、Mキラリーと大差ない、この幼児性。
40越えても、持っている。
しかし、私は、奴のように、直接手を出したりはしない。
時々、会いに行って一緒に遊んでもらうだけで、
もう十分、気は済むのだ。
奴との大きな違いは、そこにある。
チーコちゃんの身体は、皆の協力のお陰で、
取り戻すことは出来た。
あとは、魂を取り返す事が残っているだけであった。
チーコちゃんの身体は、タイタイのお腹の中で、
コガ坊とイガチッチが守ることになった。
一応の決着がついたので、
あたりには、安堵の空気が漂っていた。
つづく