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絵じゃないかおじさんぐるーぷ
5時過ぎに、同僚にちょっと気を使って、
会社を出て、家へと急いだ。
Oさんの内職は、まだ終わってないはずなので、
弁当を一人分買って帰る。
安月給で、住宅ローンを3,000万円も抱え、
3人も子供の居るわが家の家計には、
妻のOさんの内職は、欠かせないのである。
「縄通」ネットに、
GO! GO!! GO!!!
と、決行の合図の書き込みをする。
現地集合になっているのだ。
Oさんに、
「明日は休みだから、薬師寺で月を見てくる」と言って、
コロを乗せ、サヤカに跨がる。
「気楽でいいね!!」
Oさんからの、またもキツーイ、一発!
心に、グッサリ!
途中、コロの為に、好物の
犬多食フライドチキンを買ってやる。
香久山、石舞台、芋峠から、国道169号、
370号を通って、東吉野村に到着。
時間は、8時すぎ。
まだまだ、早かった。
そこで弁当を食べる。
コロも旨そうに食べている。
(皮とホネを取らせて、
身だけを要求する、
何とも手間のかかること)
人通りは全然ない。
仕事帰りの車が、時おり通ってゆくのみ。
9月の夜、それも山中の川原。
冷え冷えとしている。
川を流れる水の音、虫の泣き声が、静かさを倍加する。
準備は万全だろうか?
時間が迫ってくるに連れて、気になってくる。
ススキの穂は、たくさんあるので、オイデオイデの、
参加は、大丈夫のようだ。
しまった!
手鏡を、持ってくるの忘れた。
こんな山の中では、深夜営業のスーパーもないだろう。
どうしょう。
とにかく、走って捜すことにしょうと、
サヤカに近づいた。
その時、サヤカのバックミラーに気がついた。
ああ、助かった。
あまり、身近すぎて、気がつかなかったのだった。
ヤッタールは、鏡を右回りM回、左回りN回、
また右回りX回磨くとやってくる。
私は、バックミラーを磨いて、
サヤカのガソリンの給油口を開け、話かけてみた。
{ヤッタールはん、来てくれたかい?}
{今晩わ、オッさん。家からずっとここに要るよ。
オッさんのワープロの画面も鏡の一種だろ。
ちゃーんと、わかっているんだから。
それに、オッさん、手鏡のことなど、
頭の片隅にも、無かっただろ?}
{おおきに。すんまへんなあ}
ヤツも、私が、よく忘れ物するのを知っている。
鏡は、家のなかのあちらこちらにあり、
その前で、
Oさんによく、
{また忘れ物してる!}って、叱られているのを、
見ているに違いない。
何ともブザマ。
しかし、意識して忘れてはいないのだから、
人間的には、救われるか?
エッ、余計にたちが悪いって?!
誰ですか、そんなこと言う人は!
私の準備は、何とか整った。
後は、タイタイの到着を待つばかりだ。
タイタイが、出張中は、コガ坊の妹・チーコちゃんが、
タイタイに、化けている。
チーコちゃんは、エキスポランドが、
面白くて仕方ないらしい。
甲賀にいるよりも、いいという。
私が、数週間前、今日の為にコガ坊に頼んで、
先に連れていったのだ。
ずっと、暮らしたいとも言っていた。
二人は、共存共栄の仲のようだ。
タイタイにしてみれば、チーコちゃんに頼めば、
息抜きに夜遊びが出来るし、チーコちゃんは、
タイタイに守られて、エキスポランドで、
自由に遊び回れるので、願ってもない、
組み合わせとなった。
そういう関係もあったのかと、感心してみていたのだ。
そのうちに、タイタイがやってきた。
さあ、始まるぞと闘志が湧いてくる。
コロをタイタイに乗りこませる。
明日香で、猿石のわんとわんわん、
唐招提寺で、センティからレンタルする顔と手、
信楽で、信楽焼きのドン・ガラッキーとその子分、
伊賀で忍者狸のイガチッチ、
甲賀で、これも忍者狸のコガ坊を乗せ、
関東にあるT拘置所まで行って、Mを連れてくるのだ。
タイタイ、頼むぞ!!
コロ、頼むぞ!!
みんな、頼むぞ!!!
コロの指図に従い、ドン・ガラッキーと子分が、
ゴキブリに化けてMの独房にゆく。
子分が、Mに化け、
Mをガラッキーが、ゴキブリに変えて、連れ出し、
タイタイに乗せ、
ここに引っ張ってくるのだ。
ゴキブリ変えは、わが家に住む流家の守り神、
当年とって、自称3・5億歳のゴキブリのゴキオーラを
見ていて、思いついた。
待ちどおしかった。
時間が長く長く感じられた。
私たちと、ドン・ガラッキーやオイデオイデたちとの、
打ち合せは、出来ていた。
ついに、タイタイが帰ってきた。
コロが降りる。
ゴキブリ・ガラッキーが、豚寝入りした、
Mゴキブリを掴んでいる。
私は、踏みつぶしてやろうかと思ったが、
感情に任せて、そんなことをすると、元も子も無くなる。
ぐっと、怒りを押さえこむ。
シナリオ実行、スタート!
つづく