ｃｏｐｙｒｉｇｈｔ （ｃ）ち ふ
絵じゃないかおじさんぐるーぷ
＊ 川渡りチェック
皆の無事な姿を見て安心した。
ただ、ゴキオーラだけが、肩で息をし、
水にぬれているのが、気にかかった。
彼は、水が大嫌いなはずなのだが・・・
まず正規のルートの３人のチェックから始まった。
もちろん、全然問題なかった。
次々と審査が進み、空から来た、
タイタイとゴキオーラと天トレが、問題にされた。
ゴキオーラと天トレは、他力と自力の違いが、
分かってもらえたのだが、自力となると、
今度はタイタイとゴキオーラが、
同じようなものではないかと指摘された。
ゴキオーラの必死の言い逃れが始まった。
「わし、３．５億歳なの」
ヤツの口ぐせだ。
「わし、川に何度も落ちたの」
やっぱり、１ｋｍは無理だったのだろう。
「それで、必死で飛んだんだ」
・・・・・・・・・・・
「飛んだから、タイタイと同じだが、初めは投げられたの」
・・・・・・・・・・・
「目が回ったの」
相変わらず、のんびりしたしゃべり方だ。
鬼チェッカーも、このしゃべりには、
きっと閉口するに違いない。
「だから、タイタイとは、違うんだよ」
「くどくど言うな。似たようなものだ」
「いや、違うよ」
「どこが？ はっきり違いを言え！」
・・・・・・・・・・・
「初めは、投げられたの。これは、他力」
・・・・・・・・・・・
「あれっ、自力？
他力だと、天トレと同じになるし。
あれっ？」
・・・・・・・・・・・
「わし、３．５億歳なの」
何言っているのか、こちらまで分からなくなってきた。
途切れとぎれに、一人ごとを言っている。
これは、まずいな。
「途中、川に落ちたの。必死で飛んだ。
また落ちた。
それで、また飛んだ。
そして、落ちて・・・」
よく聞けば、自力と他力のミックス渡りだ。
「ええっ、もう、うるさい！ 合格！」
お情け合格だ。ホッとした。
次に、バカーンの渡り方の説明になった。
彼は、高さを５００ｍにまで伸ばし、
そのまま倒れこみ、川の中ほどで１回転して、
こちら側についたのだ。
これも合格だった。
ドン・ガラッキーとギロ板は、歩いて渡ったのだが、
水の上と川底なので、これまたギリギリの所でＯＫだった。
最後に、私とサヤカが問題になった。
サヤカは走ったのだが、歩くと走るとでは、
似たようなものだ。
その走った道も問題になった。
それを口に出して、よいものかどうか分からなかった。
例の緑鬼から、教えて貰った鬼専用の道だ。
通るなとは、書いてなかった。
まさか鬼以外の者が、そんなところを通ることなど、
想定もしてなかったのだろう。
私は、嘘をついても、すぐバレるだろうと思ったので、
正直に、反転境を通ったと答えた。
鬼チェッカーの顔つきがさっと変わった。
どうも、鬼以外の者を通すと、彼の責任に関わるようだ。
サヤカは、スレスレ合格ということになった。
その代わり、私は不合格になってしまった。
お互い、秘密を持つ者同士、変な了解が生じてしまった。
彼も責任問題になるので、反転境のことには、
ふれたがらないし、私も緑鬼のことは言わない。
これは、嘘ではない。
聞かれないから、答える必要がないのだ。
私は、メインの橋を、トボトボと歩いて引き返した。
情けない！
皆は、心配そうに見送ってくれたが、
タイタイは、あの大きな目でウィンク送りをしてくれた。
一人で、再テストを受けるようなものだ。
心細いが、何とかなるだろう。
私は、元の橋のたもとまでたどりついた。
意地の悪そうな青鬼が、ニヤニヤと、待ち受けていた。
「オッさん、頑張れや」
ヤツの心にもない励ましを無視する。
何の展望も持ちえていない者に対して、
こういう物言いをする連中は多い。
ヤツもその一人なのだろう。
渡れるものなら、渡ってみろと素直に言えば、
まだ可愛いのだが、心が１／３回転ほど、
捻れているのだろう。
私は、とっておきの考えで難なく渡ってやった。
さっきまでの行為は、私なりの演技だったのだ。
鬼の鼻を明かしてやりたかったから、
まずは、己自身を欺いた。
今回の旅での最大のポーズでもあったのだ。
青鬼の意地の悪い顔の表情を、
ちらっと盗み見しながら、その場を後にした。
ヤツも、きっとその時の、
私の意地悪そうな顔つきに、気がついたろう。
意地悪のお返し勝ちだ。
でも、私の気は済んだが、私が、ヤツに与えた
意地悪の心玉は、ヤツの心の中で大きく膨らんで、
次の誰かに、倍にも３倍にもなって、
八つ当りをするだろうと思うと、責任を感じる。
これは青鬼の心の問題だ。
ヤツが変わらない限りは、どうしようもないことだ。
私は、渡り方を、引き返す途中の橋脚の裏側に、
油性のマジックで、書きつけておいた。
青鬼に見つからないように、こちら側からいうと、
右側の３番目の橋脚の裏にあたる所に書き込んだ。
実は、引き返す時に、川渡りの案は出来上がっていたのだ。
この橋は、一方通行なので、私のように、
運悪く引き返しを命じられる者は、皆無だろうと思う。
（もし、皆様の中に興味がある人がいれば、
見ていって下さい。川の渡り方に関心がある方は、
色々と、考えてみて下さい。
考え方の訓練になって面白いですよ。
３５０ぐらいは、あるそうですよ。
ドン作）
「タイタイ、みなさんありがとう」
私は、無事に川を渡れて、
また、皆に合流することが出来た。
つづく