日本精神保健福祉士協会の総会&全国大会が、来月の6月3~5日、沖縄で開催されます。
今回の総会では、精神保健福祉士(PSW)にとって、ひとつ大きな課題があります。
「精神保健福祉士業務指針及び業務分類」の採択をめぐる議論です。
まもなく「総会議案書」とともに、この「業務指針」案が、会員(構成員)のお手元に届けられるでしょう。
結構な分量の文章ですが、ぜひまずざっとでも、目を通して頂ければと思います。
専門職としてのPSWが、自身の業務を、どう考えるかと言うことなので…。
PSWの業務指針としては、これまでも「精神科ソーシャルワーカー業務指針」がありました。
旧指針は、任意団体であった日本精神医学ソーシャルワーカー協会時代のもので、21年前(1989年)に採択されたものです。
当時は、地域の支援機関も乏しく、PSWといえば精神病院勤務が当たり前でした。
改訂作業に着手し、新たに指針を作成しなければならなくなったのは、時代遅れの古いものになってしまったということに尽きます。
旧指針では、現在のPSWの活動領域の拡がりを、もはや包摂できなくなっています。
1997年の精神保健福祉士法制定による国家資格化により、PSWの社会的認知と活動領域は一気に拡がりました。
精神保健福祉士の国家資格登録者は現在4万人を超えています。
旧指針が前提としていた、医療機関に所属するPSWの割合は年々減少しています。
PSWの先達らが、国家資格化以前から積み上げてきた歴史的経緯を踏まえつつ、時代に即した業務指針を創り上げていく必要に、協会は迫られていた訳です。
新しい指針の作成作業は、2006年8月に設置された「業務指針提案委員会」に始まります。
委員長は聖学院大学の相川章子さんでした。
委員会は合宿など行いながら、倫理綱領をベースにPSW業務の検証作業を行いました。
おおよそ1年半にわたる議論を経て、新しい業務指針の骨格が提案されました。
全米ソーシャルワーカー協会の業務指針なども参考にされています。
本文をじっくり読むと、委員の皆さんの苦労と熱い想いが伝わってきます。
これを受けて2009年3月、新たに「業務指針作成委員会」(委員長:古屋龍太)が発足しました。
提案委員会報告をベースに据えながら、PSWの現場の実務に照らして一部構成を組み替え、業務指針として整理しました。
昨年6月の静岡大会での承認を受けてから、実質わずか8ヶ月間での、集中的な作業となりました。
十分とはとても言えませんが、タイトな日程の中で最大限の努力はしてきたつもりです。
業務指針は、常に業務の実態から導き出された、専門性の到達点を示すものです。
同時に、指針は、専門職種として目指されるべき目標と方途を示すものです。
指針はあくまでも「ガイドライン」であって「マニュアル」ではありません。
実務に即した「PSW業務マニュアル」と称するものは、今後さらに広範な実践現場の意見を踏まえながら構築されていくと思います。
この指針案に記されている内容は、今後、各地のPSWの実践を通して検証されることになります。
協会構成員の議論を経て、今後改訂されていくことを前提としている、「第1版」です。
この指針が、現時点における暫定的なまとめであることに、留意して欲しいと思います。
PSWの方には、この指針の本文中に盛り込まれた一言一句を、ぜひ吟味検討して欲しいと思います。
そして、より時代状況に即した指針の作成に、協力して欲しいと思います。
どんな小さなことでも良いから、意見を寄せて欲しいと思います。
正直言って、残念ながら、本当にまだまだ不十分な内容です。
熱い議論を経て、この指針が「第2版」「第3版」とバージョンアップしていくことを願っています。
この指針案の提出をもって、業務指針作成委員会は一旦その任を解かれます。
議論は協会全体、PSW全体に引き継がれていくこととなります。
この指針が、それぞれの現場で奮闘しているPSWにとって、文字通りなにがしかの「指針」になればと願います。
残念ながら、沖縄の大会には、委員長である僕自身は大学の公務や授業が重なり、行けそうもありません。
協会常務理事の木太直人や担当部長の伊東秀幸さんに、総会での提案と質疑討論を委ねざるを得ません。
願わくば、新しい指針案を叩き台に、ポジティブで建設的な議論が展開されることを祈ります。
沖縄大会に参加されるPSWの皆さん、どうかよろしくお願いします。