PSW研究室

専門職大学院の教員をしてる精神保健福祉士のブログ

福祉士等現況調査に見る数字

2010年12月14日 19時23分06秒 | PSWのお仕事
前に記事で取り上げた厚生労働省の調査ですが、見たことない人も結構いるようなので。
ちょっと古いですけど、その概要を一応示しておきます。
2008年12月25日に公表された「介護福祉士等現況把握調査」のことです。
社会福祉士、介護福祉士、精神保健福祉士の資格保有者を対象とした調査です。
福祉・介護分野で就労していない「潜在的有資格者」の状況把握を目的としています。

資格の登録機関である社会福祉振興・試験センターが、行ったものです。
30万8583人を対象に実施され、有効回答数は、18万6379人(有効回答率60.4%)。
この種の調査としては、最大規模のものです。
社会福祉振興・試験センターのホームページで、全文を見られます。

調査回答者は、
社会福祉士2万6624人(14.3%)、
介護福祉士15万2564人(81.9%)、
精神保健福祉士7191人(3.9%)。
PSWは母数そのものが少ないですから、しようがないですね。

男女別では、
男性2万9706人、
女性14万5809人。
この業界、やはり圧倒的に女性の割合が高いです。

回答者が就労している分野としては、
「福祉・介護分野」14万2980人(約77%)、
「福祉・介護以外の分野」1万5800人(約9%)、
「未就労」2万 7599人(約15%)で、
資格を持ちながら働いていない「潜在的有資格者」は4万3399人(約23%)でした。

福祉・介護分野で就労している有資格者の雇用形態を見ると、
「正規職員」の割合は社会福祉士84.7%、
精神保健福祉士83.2%、
介護福祉士65.5%でした。
介護福祉士は、パート勤務等の非正規雇用が多いんですね。

正規職員の平均給与額は、
社会福祉士24万9389円、
精神保健祉士24万7120円、
介護福祉士20万715円、となっています。
よく「福祉職は給料低くて、食っていけない」と言われていますが。
他の業種の給与調査と比較すると、決して低くはないんですよね。
ましてや「不況に強い福祉」、他業種ほどに一気に給与ダウンということは無いはずです。
この調査が実施されたのは、リーマンショックの直後、9~10月ですけど。
何と比較するかによるでしょうけど。

平均賞与額は、
社会福祉士78万1420円、
精神保健福祉士77万8141円、
介護祉士は49万767円でした。
介護福祉士では「賞与なし」が25.8%を占めています。
でも、介護を別とすると、ボーナスも他業種に比べて決して遜色ない気がしますが。

毎年度の定期昇給では、
社会福祉士の63.8%、
精神保健福祉の57.3%、
介護福祉士の50.6%、が昇給しています。

「昇給している」と回答した人の直近の平均昇給額は、
社会福祉士1万667円、
精神保健福祉士1万1852円、
介護福祉士8966円、でした。
PSWが一番昇給額が高いんですか?
へぇ~~?超意外って感じですね。

福祉・介護分野での転職回数を見ると、「1回~2回」と回答したのが、
社会福祉士56%、
精神保健福祉士54.4%、
介護福祉士47.0%、でした。
まるで転職しないで、ずっと一カ所でって人、確かに少ないですよね。
みんな、やりたいことや、より良い職場を求めて移るんでしょうね。

仕事上の不満や悩みについては、三福祉士いずれも「給与・諸手当が低い」が最も高く、
社会福祉士と精神保健福祉士ではそれぞれ40%強、介護福祉士では60%弱を占めています。

福祉・介護以外の分野では、どこで働いているのかというと、
「病院・診療所」で働いていると答えた人の割合が三福祉士とも最も高く、
社会福祉士38.6%、
精神保福祉士49.3%、
介護福祉士 25.4%、となっています。
やはり、PSWはまだ半数が医療機関で勤めているのですね。
それでも、随分減りました。
僕が働き始めた頃は、まだPSWの8割方が精神病院の勤務者でしたから。

「公務員(福祉以外)」と回答したのは、
社会福祉士が12%、
精神保健福祉士が31.1%に上っています。
結構、PSWで福祉分野以外の公務員になる人って、多いんですね。
まだ役所等では一般職採用で、福祉専門職配置が進んでいないということでしょうけど。
なお、介護福祉士については「サービス業」が15%を占めています。

福祉・介護分野の仕事を辞めた理由として「給与等の労働条件が悪いため」を挙げた人は、
社会福祉士25.5%、
精神保健福祉士20.5%、
介護福祉士32.2%、でした。

また、今後、福祉・介護分野へ復帰する上で改善してほしいこととして、
最も多かったのは「資格に見合った給与水準に引き上げる」です。
社会福祉士の64.8%、
精神保健福祉士の56.2%、
介護福祉士の62.4%、に上ります。

はて?PSWの比率が低いのは、なぜでしょう?
PSWは安価な賃金に慣れてしまっているからでしょうか?(笑)
ストレスフルな職場で、「給与等の労働条件」以外の離職理由が多いんですね。

現在就労していない有資格者の状況を見ると、
現在働いていない理由として最も多かったが「出産・子育てのため」です。
社会福祉士の46.7%、
精神保健祉士の31.2%、
介護福祉士の 38.1%、にのぼります。
やはり女性の多い職場だからとも言えますが。
でも、女性が多いから仕方ないっていうのは、やはりヘンですよね?

一方で「腰痛等、体調を崩しているため」の割合は、介護福祉士で13%に上っています。
体調を崩したという選択肢の、腰痛「等」が気になります。
有料老人ホームを複数運営する法人の理事長は「メンタルが多いよね~」と言ってました。
休職者のほとんどが、うつ等の精神疾患だそうです。
「不器用なくらい生真面目な人が多いんだよね」と言ってました。

福祉・介護分野への復帰の意向を見ると、全体の約5割が復帰したいと回答しています。
でも、一方で、社会福祉士の約2割、介護福祉士と精神保健福祉士の約3割が「戻りたくない」と答えています。
3割というのは、相当高い、深刻な数字だと思います。
二度とあんな仕事したくない、ってことですよね?
それだけ、現場の仕事に馴染めなかった、イヤな想いをしたということですよね。
まさか、精神と介護だけ、ストレス耐性の低い人が多いってことでもないでしょうし。

ただ、この種の統計調査って、やっぱり無理があります。
そもそも、ネガティブな問題点を把握するという組み立てになっているし。
仕事のやりがいとか、福祉への想いとか、ポジティブな側面、拾ってないですよね。
ストレングス視点の現況調査を、国がやってくれないかな~なんて…。
…ムリか?…そういう発想は、絶対に国に無いですね…(^_^;)


※画像は、東北新幹線の「マックスやまびこ」ですが。
 何が、MAXなんでしょう?(?_?)
 2階建てで、もう容量一杯ってことですかね?