タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

洋食は和食の一種。その理由は・・・

2022年06月10日 | Weblog
5月17日の読売夕刊に、「和食難しくない!」という記事がありました。それ賛成です。極端に厳格なマナーや、一汁三菜でなくちゃ呪いは、和食を広めるには不都合です。私は和食好きですから、堅苦しく考えなくて良いという方向で賛成します。
 
 記事欄外には、和食について「明治時代以降、「洋食」に対して生まれた言葉とする。・・・カレーライスやラーメンなど、外国との「折衷料理」が含まれるとの考え方もある。」と完結に説明がありました。そこも大事な指摘だと思います。その文章を読めば読むほど、洋食も和食のカテゴリーに含まれる料理なんだと思い知らされます。なぜか。

 まず、有名な和食研究者の阿古真理先生が「「和食」って何?」の10頁で指摘しています。「そもそも和食という言葉自体、生まれたのは明治時代です。肉を煮込み油脂や乳製品を使う西洋料理と出会って、自分たちの食事を「和食」だと認識したのです。」と書いてあります。
 つまりそれまで自分たちの特徴や個性に気がつかなかったが、西洋料理(注:「洋食」ではない!)に出会って、これと違うのが和食なんだなと考えるようになったのが、和食という言葉が生まれた理由でした。

 でも、実際に欧米人に西洋料理を学べる人はごく少数でした。したがって、一部の経験者の話を、西洋料理をよく知らない日本人達が一生懸命試食してメモって、料理を作っていきました。
 よく分からない料理を見よう見まねで一生懸命創作しようとしても、うまくいかないものです。しかも昔の料理界では、新人は先輩に丁寧に指導してもらえませんでした。先輩の背中を見て調理法を「盗め」と指導されました。しかしその指導法では、今まで自分が体験した味や素材に引っ張られます。
  そうなると妄想が入る。「野菜はにんじんで代用出来るな?ソースは醤油で代用できるな?パンは柔らかいほうがいいだろう?」とあれこれ考えたあげく、次第に、欧米にはない料理ができあがりました。

 すなわち、日本式のジャガイモやにんじんゴロゴロ入ったカレー、うどんのようなスパゲティで作るナポリタン、生のキャベツ千切りにのせるので欧米人が驚く「とんかつ」、魚のカルパッチョ(イタリアでは肉料理です)、オムライス(オムレツにコメ入るんだ!?と驚かれる)、コロッケ、ドリア、ハヤシライス、あんパン、クリームパン、あんトースト、栗の香りがやさしいモンブラン、本場のサクサク感と違って日本人好みにふんわりと焼いたショートケーキ、外国人が驚く豪華なプリンアラモード・・・・。

 そして食べる方も日本人。本物の西洋料理を食べたことがある人は少なかったので「へーこれがカレーか、これがとんかつか。意外にうまいな。」となります。うまいのは道理です。だって日本人調理師が、コメ、にんじん、あんこ、栗、小麦、卵など日本に江戸以前からある素材を洋風素材と組み合わせ、和の調理法に引きずられながらゆでたり焼いたりして、日本人好みに味付けしてるからです。

 こうして成立したのが本場の西洋料理とはまた違う「洋食」です。つまり洋食は私たち日本人の映し鏡。鏡の中にいたのは普段と少し違う服に着替えた自分だったのです。鏡に映った洋服の中にある顔や心は、豊かな好奇心にあふれた繊細なまなざしと和の心だったのです。
  
 したがって、広い意味では洋食も日本人の妄想が芸術的に結晶した和食と言えるでしょう。一方、ユネスコに登録された方の和食は「伝統的でかつ消えゆく危険性があるため保全しなければならない料理」と限定されているので、狭義の和食ということになります。
 先祖の創意工夫の魂に思いをはせ、先人の文化を後世に引き継ぎたいと思っています。


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