大変びっくりしました。ひょんなことから、1986年に東京都老人総合研究所疫学研究室長の松崎俊久先生が書いた小冊子「すこやか長寿の食事学」を入手しました。この冊子、あまりにも面白すぎて、しかも、おそらくもうほとんどの人の手には入らないものと思いますので、一部をかいつまんで皆様にご紹介します。
まず、エクアドルのビルカバンバ地方は長寿だ、という説については、調査対象者が全員年齢を偽っていたそうです(おやおや)。
次は「グルジア(現在のジョージア)周辺の人々は長寿だ」という説。この説が元になって隣国も含み「コーカサス地方の人は長寿だ。」と言われるようになったのですが、松崎先生が、旧ソ連時代にグルジア共和国の研究所に行って副所長のダラキシビリ博士に確認したところ、グルジアの90歳以上のお年寄りの約半数は年齢を偽っていて、110歳や120歳という話はおとぎ話にすぎない、と答えたのだそうです。
いまだに「コーカサス地方は長寿だ」という説がありますが、実は前世紀にすでに、作り話と判明していたんですね。
また、松崎先生によると、「山梨県の棡原村は長寿村」という話は、単純なデータの読み間違いだったそうです。ちなみに、棡原村は1970年代後半に「逆さ仏説」でも有名になったのですが、それは何かというと、「棡原では、伝統的粗食で育ったお年寄りは長生きしているけど、欧米化した食事で育った中年世代が早死にしてる。」という、当時流行した俗説のことです。沖縄の逆さ仏説が統計の誤読であることは、過去にこのブログで2回に分けてご紹介しましたので、よかったら読んでくださいね。
棡原村がなぜ長寿村と錯覚されたかというと、「長寿率」という数値が高いためでした。長寿率とは、分母にその村の全人口、分子は70歳以上のお年寄りの数、と計算をすることです。でも、長寿率は、長生きの指数ではなくて、若者の流出の指数だったのです。村に学校や仕事場がなくて、若者が流出すると、高齢者だらけだから「長寿率」がアップする訳です。
そこで、より精度の高い方法で松崎先生が1977年の統計データを分析しなおしたところ、棡原村の長寿者の割合は全国平均とほぼ同じだったのです。逆さ仏説の前提となる「棡原の高齢者は長寿」という説そのものが間違いだったのでした。
伝統食を食べれば長寿になるかどうかの話はさておいて、雑誌等で紹介された棡原の伝統食の、じゃがいもの煮物「せいだのたまじ」や麦のおかゆ「おばく」はおいしそうでした。ですが、おいしそうに見えるのは飽食の現代人の視点からのこと。「男の隠れ家」2009年7月号の47ページによると、棡原村は山間部でお米がとれないので、麦、アワ、キビ、芋類を主食にしていたのです。お米が主食でない伝統文化というのも、和食の一ジャンルとして大切に将来に伝えたいものです。
夢と幻想の長寿村。ひとときのまぼろしに酔いに、ふらりと旅行してみたいものです
まず、エクアドルのビルカバンバ地方は長寿だ、という説については、調査対象者が全員年齢を偽っていたそうです(おやおや)。
次は「グルジア(現在のジョージア)周辺の人々は長寿だ」という説。この説が元になって隣国も含み「コーカサス地方の人は長寿だ。」と言われるようになったのですが、松崎先生が、旧ソ連時代にグルジア共和国の研究所に行って副所長のダラキシビリ博士に確認したところ、グルジアの90歳以上のお年寄りの約半数は年齢を偽っていて、110歳や120歳という話はおとぎ話にすぎない、と答えたのだそうです。
いまだに「コーカサス地方は長寿だ」という説がありますが、実は前世紀にすでに、作り話と判明していたんですね。
また、松崎先生によると、「山梨県の棡原村は長寿村」という話は、単純なデータの読み間違いだったそうです。ちなみに、棡原村は1970年代後半に「逆さ仏説」でも有名になったのですが、それは何かというと、「棡原では、伝統的粗食で育ったお年寄りは長生きしているけど、欧米化した食事で育った中年世代が早死にしてる。」という、当時流行した俗説のことです。沖縄の逆さ仏説が統計の誤読であることは、過去にこのブログで2回に分けてご紹介しましたので、よかったら読んでくださいね。
棡原村がなぜ長寿村と錯覚されたかというと、「長寿率」という数値が高いためでした。長寿率とは、分母にその村の全人口、分子は70歳以上のお年寄りの数、と計算をすることです。でも、長寿率は、長生きの指数ではなくて、若者の流出の指数だったのです。村に学校や仕事場がなくて、若者が流出すると、高齢者だらけだから「長寿率」がアップする訳です。
そこで、より精度の高い方法で松崎先生が1977年の統計データを分析しなおしたところ、棡原村の長寿者の割合は全国平均とほぼ同じだったのです。逆さ仏説の前提となる「棡原の高齢者は長寿」という説そのものが間違いだったのでした。
伝統食を食べれば長寿になるかどうかの話はさておいて、雑誌等で紹介された棡原の伝統食の、じゃがいもの煮物「せいだのたまじ」や麦のおかゆ「おばく」はおいしそうでした。ですが、おいしそうに見えるのは飽食の現代人の視点からのこと。「男の隠れ家」2009年7月号の47ページによると、棡原村は山間部でお米がとれないので、麦、アワ、キビ、芋類を主食にしていたのです。お米が主食でない伝統文化というのも、和食の一ジャンルとして大切に将来に伝えたいものです。
夢と幻想の長寿村。ひとときのまぼろしに酔いに、ふらりと旅行してみたいものです