タミアのおもしろ日記

食文化・食育のお役立ちの話題、トンデモ食育、都市伝説、フードファディズムなどを分析して解説します!(^.^)

和食と砂糖と「爆笑!クールジャパン」。

2016年08月22日 | Weblog
日独ハーフのサンドラ・へフェリンさん原作の、コミックエッセイ「爆笑!クールジャパン」を読みました。日本文化が海外で変容していく様を笑いのオブラートにくるみながら描いていて、面白く興味深い本で、お勧めです。

タミアは和食に興味があるので、特に次の3つのエピソードには関心を持ちました。
第一に、「多くの外国人は緑茶に砂糖を入れて飲む。サンドラさんは、緑茶に砂糖を入れるのは間違いだし健康に悪いと思うので、日本式の正しい飲み方を知って欲しいと思っている」というエピソードです。また、「イギリスの料理番組で、味噌汁の作り方を紹介していたら、最後に鍋にスプーン一さじの砂糖を入れていた。」「カナダ人に、『日本人って何にでも砂糖を入れるんでしょう?』と言われた。」との話にも強い関心を抱きました。

この本全体が、海外における日本文化の変容について考えさせられる内容でとても面白いのですが、中でも上記の3点については、タミアはこう考えるのです。すなわち、緑茶に砂糖を入れてもいいと思いますし、味噌汁の隠し味に砂糖を入れると美味しくなるのは事実ですし、外国の人から「日本人は何にでも砂糖を入れる」と信じられてしまうのも理由があってのことだから、笑顔で「確かにそうですね~。」と答えてもいいのではないか、と。以下、その理由を記します。

まず、最初のエピソードについてですが、「お茶には何かを加える」というのがここ数百年の多くの国の共通理解です。欧州を例にすると、1609年に平戸を出たオランダ船によって、最初のお茶がアムステルダムに到着し、以降、オランダからイギリス、そしてヨーロッパ各地にお茶が広まり、特にイギリスで愛飲されるようになり、その過程で砂糖とミルクを入れるようになりました。そして、やがてヨーロッパでは緑茶から紅茶に切り替わっていきます。アジアでも蒙古の人達は山羊のミルクを入れて飲んでいました。(以上、論文「お茶と砂糖とお菓子」角山榮先生、「砂糖の文化誌」八坂書房収録を参考にしました。)それ以外にも、国によって、お茶に塩やバターや、あるいはナツメグなどのスパイスを入れる地域もあります。
サンドラさんも指摘している通り、現在海外では、砂糖入りやオレンジジュース入りなどのペットボトル緑茶が普通に売られています。で、ここはサンドラさんが知っているかどうかは不明なのですが、実は、現地に進出した日本メーカー自らが、現地の人達の好みを調査した結果として、砂糖や果汁入りの緑茶を販売したケースもあるのです。

もしも「日本人もお茶の中に砂糖を入れるのでしょう?」と外国の人に聞かれたら、それは否定するべきところですが、海外の人が砂糖入り緑茶を好むことについては、批判は出来ないことと思います。ナポリタン(実は日本人が創作した「なんちゃってイタリア料理」です。)をイタリア人は批判しませんし、味噌ラーメンを中国人は批判しません。

ちなみに、サンドラさんはお茶に砂糖を入れることを「健康に悪いだろ-!」と心配していますが、普通に食事して運動している人ならば、お茶にティースプーン1杯程度砂糖を入れるのならば健康を害することはありませんので、サンドラさんには安心して欲しいと思いました。

それに角山先生の論文に話を戻すと、日本の茶道でも、砂糖たっぷりのお菓子を食べて、口の中に甘みが残っている段階でお茶を飲み、口の中で混ぜ合わせているとの指摘。結局、日本でも口の中で海外と同じことが起こっているのです。

さて、2番目の、味噌汁に砂糖を入れるという話ですが、日本の高級料亭でも隠し味として味噌汁に少量の砂糖を入れると聞いたことがあります。もっともこれは耳学問なので、そのことについては100%の自信をもっては断言できないのですが、その代わり次の話は断言できます。美味しくてリピーター続出のA社のインスタント味噌汁の定番商品の中には、隠し味に砂糖を入れているものもあるんです。原材料表示にしっかり「砂糖」と書いてありましたから間違い有りません。もちろん、とても美味しいです。
というわけで、日本人の間で人気のメーカーでさえ味噌汁に砂糖を入れるのですから、イギリスの番組が間違いとは言いがたいでしょう。そのTV番組の料理監修者が、日本の高級料亭か味噌汁メーカーから「隠し味は砂糖なんですよ!」と教わった可能性も考えられます。

最後に3つめの「日本人は何にでも砂糖を入れる」という指摘、実はこれは事実です。
例えば豆料理に砂糖を入れる国は日本などアジアの一部地域であり、世界から見ると少数派です。ヨーロッパや南北アメリカ大陸、アフリカ、オセアニアなどでは豆は、塩味、クリーム味、唐辛子味、カレー味などしょっぱい系で調理します。一方日本では大豆(黒豆を含む。)やインゲン豆やエンドウ豆などを砂糖で煮豆にしますし、甘納豆も作りますし、小豆からあんこ、ようかん、まんじゅう、最中、鯛焼きなど様々な和菓子を作ります。

かれこれ20年ほど前にこんなテレビ番組があったのを覚えています。日本人レポーターがアメリカで大勢の人にあんパンを紹介したところ、「しょっぱい系しかあり得ないと思っていた豆にまさか砂糖を入れるなんて。」とさんざん驚かれて気持ち悪がられてしまった、という内容です。それぐらい、豆に砂糖を入れるのはショッキングなのです。

砂糖を入れるのは豆料理だけの話ではありません。昭和の頃の伝統的な和食を思い起こしてください。照り焼きや焼き鳥などのたれ、めんつゆ、魚の煮物、野菜の煮物、かまぼこ、すき焼き、酢の物(キュウリの三杯酢やなますや菊花かぶなど)、漬け物(たくあん、福神漬け、奈良漬け、らっきょう付け、壺付け、ガリ、一部の梅漬けなど。)、卵焼き、田作り、きんとん、栗の甘露煮、昆布巻き、田楽みそ、ざらめせんべいにかりんとうにカルメ焼きなどのお菓子・・・と、挙げると驚くほど多様な食品に砂糖が欠かせないのです。砂糖をふんだんに使うのが伝統的な和食の特徴だと言っていいほどです。
こういう状況ですから、海外の人からは「日本人て何にでも砂糖を入れるんだねえ。」と思われてしまっても仕方有りません。

「健康に良い」とお題目のように唱えられている和食ですが、昭和の頃の伝統的な和食は大量の砂糖なしには成立しません。ということは、砂糖は健康に良いのかな?いやいや、それとも和食が身体に良いという話は嘘?・・・さて、皆さんはどっちだと思いますか。

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