Four Season Colors

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読書のよもやま(2023.06.19)

2023-06-19 | 雑文
「恐竜まみれ 発掘現場は今日も命がけ」小
林快次(新潮文庫)

恐竜の化石発掘を職業として行う、北海道大
学総合博物館教授による、日本と海外での恐
竜化石発掘記。

世間一般のイメージとは異なり、アカデミッ
クな恐竜発掘現場は、地味で過酷だけど楽し
いぞということを紹介している作品。

なのだが、自分は子供の頃に特段恐竜に強い
興味を持つことがなく、その知識(と言わな
いが)は所詮ジュラシックパーク。

近年、随分研究が進んでいるようであるこの
分野が全く分からず、本書に出てくる恐竜の
名前も種類もほとんどがはじめてのもの。

であるから、正直なところ恐竜化石という点
においては、面白さが十分伝わっているとは
言えない。

それでもこの本を面白く読めたのは、フィー
ルドワークに冒険の要素がふんだんにあるか
ら。

冒頭のエピソードにある、アラスカでのグリ
ズリーとの遭遇にはじまり、ゴビ砂漠という
冒険そのものの過酷な自然環境。

そして、単純に地理的には未知ではないが、
著者の現場は化石発掘という点において未知
なる空白を埋め続けている。

本作の中でも、そうした未知への冒険性に触
れられており、その本質は、極地冒険家であ
る角幡唯介のそれと重なる部分がある。

つまり、化石発掘という題材を主題においた
冒険モノのノンフィクションといっても大げ
さではない。

そこに大学の先生という文章を書く能力も一
定保障されているとなれば、それはつまらな
いものになるわけがない。

恐竜化石にすでに詳しいような人であれば、
ちょっと物足りないと思われる、どちらかと
いえば初心者入門向けは間違いがない。

ただ、本書は単に化石発掘の初歩を気軽に学
ぶ以上の面白さが確実にある。

内容の難しさは皆無であるし、300ページ
もない分量なので、テーマも併せて若い世代
におススメ。