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ケイト・グリーナウェイのイラストのひとつ
ある方のブログで見事に咲き誇る立葵のお写真を拝見した。それを見て、昔母がどこに住んでも必ず立葵を庭の塀間際に植えて咲かせていたのを思い出す。それは初夏の頃から真夏を経て初秋を感ずる頃まで咲いていた。庭を立体的にするかのように、ピンと背を伸ばして空へ高く育つ立葵は、まるい赤や白やピンクやらの美しい花をたくさんつける。それを目にし始めると、朝食ももどかし気に終えて、小学生だった弟と私は、麦わら帽子をかぶり、手には捕虫網と虫かご、足にはズック靴あるいは長靴を履いて(途中で計画変更をして、オタマジャクシを捕獲するやしれないのでーそんな時に備えてポケットには畳んだビニール袋があった)、近くの野山へ飛び出した。母が持たせてくれた水筒の麦茶を飲むことも忘れて、今日は絶対に兜虫とアゲハ蝶、などと二人で話しながら、涼しい午前中を過ごした。弟と二人でファーブルに夢中だった時代であった。そして横浜といえどもまだまだ森が続き、水田があった。
美しい立葵は、夏も盛んになると、蜘蛛が花と花を結ぶかのように、たくさん糸をかけ、蜘蛛の巣だらけになってくる。ちょうど咲き誇るカンナに、たくさんカマキリが居座るように。カンナにはカマキリ、立葵には蜘蛛、というのが、塩と胡椒、のようなペアだと思っていた。
捕虫網と虫かごの時代から長い年月が過ぎ、母となった私は、子供にはハンドメイドのエアルーム的作品を作りたく、長女がまだ三か月ほどの頃から毎週一晩のスモッキング刺繍と小児用のエアルーム(Heirloom=家族の伝統となるような、何代にもわたって家族にあるもの)衣類を作るクラスを取った。その時間は夫が娘を見て、私はプロフットボール選手(シンシナティ・ベンガルズ)の奥さんが教えるそのクラスを毎週楽しみにした。そのクラスのおかげでその後かなりたくさんの(つまり子供五人分の)伝統的な子供服を作ることができた。
その折出会った本が、英国のエリカ・ウィルソン女史の本であった。1980年代初頭は、こうした伝統的な子供服を見直すことがちょっとしたブームで、私にとってエリカ・ウィルソンやキテイ・ベントン(確か米国人)は師匠のようなものだった。そのエリカ・ウィルソンの著書のひとつ、Erica Wilson's children's worldに好きな画家ケイト・グリーナウェイをモチーフにした子供服のデザインがいくつか載っていた。その作品のひとつに、サンボンネット少女と立葵の絵図がある。
ケイト・グリーナウェイを手芸や子供服に使うエリカ・ウィルソンのアイデア
サンボンネットの少女の後ろに咲くのが、アップリケと刺繍の施された立葵
1983年出版されたエリカ・ウィルソンのErica Wilson's children's world
よく使った形跡があるのがお分かりかも。
サンボンネット少女と立葵は衣服というよりもブランケットに使うデザインだが、今これを再び見て、刺繍糸とアップリケ布を取り出して製作し始めたいと思う。こんな可愛らしい立葵には、蜘蛛の糸を絡みつかせたくはないものだ。このモチーフを使ったブランケットを孫娘たちに作りたい昨今である。