アメリカの中高生は、勉強やアルバイトやクラブ活動それに地域のヴオランティア活動などで忙しいが、それだけに没頭するのではなく、社会性や社交性を培うためにダンスがある。中学生(八年生)でも学校によるが、ダンスはある。
下は高校が催す典型的なダンスパーティの例。
1はインフォーマルで男女がその年のテーマに沿って服装を決め、女子が男子を誘う。 2~3はフォーマルなダンス。女子から誘うこともあるが、男子から誘うことが伝統的に過半数。男女共にフォーマルな装いで、通常男子が女子を迎えにくるが、女子にはコサージ(ドレスの胸につけるのと、腕首に付けるのがある。)が渡され、男子はコサージュとともに準備したBoutonniereブート二アを上着の胸につける。両方を持ってきて、女子宅で両親や家族の見る中、二人でそれらを付け合うことが多い。出かける前に、大抵両家族がよってたかって二人の正装姿をカメラに収める。
若~い三男とデートのSadie Hawkins この年のテーマはProfession(職業)
プロムダンスへ行く前に男女はレストランで食事をするが、少し格のあるレストランを選ぶ。プロムはだいたい3時間で、7、8時頃始まることが多い。プロムの後は、各カップルが幾組か集って、仲の良いグループでその誰かの家で、ボードゲームをしたり、映画を観たり、軽い食事をしたりするのが、ここ(私の住む市)では一般的。中にはよくないことを計画するカップルもいて、酔って朝帰りもたびたび聞く。子供達は遅くとも1時2時には帰宅していた。
高校生のうちに、ステディ(デート相手がいつも決まっている)になるカップルもいるが、夫も私もそうしたことは大学以上で始めればよい、という考えだったので、子供達も同じ相手と二度とはプロムやその他のダンスに行かなかった。デート自体もうちでは16歳から、と決めていて、子供達も納得していた。特に娘達は、ひとり一回のデートをして、映画や学校のミュージカルや劇などを楽しんでいた。うちの門限は、12時と決まっていたので、それを尊重するかどうかデートの前に相手に確認していた。12時を1分過ぎるとうるさい母親がテキストしてきたから、子供達も門限は守るものだと心得ていた。
プロムは高校生活の楽しさの筆頭にあがるだろうが、参加するには、コストがある。男子がほとんど誘うから、プロムの切符代、花代(コサージュとブートニア)、タックスなど正装一式をレンタルすれば、その代金、食事代、リムジンを使えばその車代など負担する。予算$500くらいと見て、そのためにせっせと働く。新聞配達、芝刈り、子守りといろいろしている。女子は、プロム会場での写真撮影代、ヘアスタイリスト代、ドレス代などを負担するが、やはり$500くらいまでかかる。それ以上お金を出す親もいる。
息子たちはタックス一式をレンタルし、花類は私の勤める大学の園芸部がその時期割安で(でも遜色はない)売るので、それを求め、自分の車を洗車して中もきれいにして使うか、あるいは、スポーツカーやキャデラックのエスカレイドを知人から借りていた。そのお礼にSee's チョコレートの箱入りを多く使った。グループで運転手付きのリムジンを使うグループもいる。
次男のプロム#2と二女のプロム#4
娘達の場合、ドレスは私が作ったり、購入しても必ず手を加えた。既成品はロウカットで、スパゲティストラップ形式や、あるいはストラップレスなどの、肩を顕わにする物が多く、娘たちも息子たちもあまりそうしたドレスは好かない。髪は子供達のピアノとチェロの先生が、美容師の資格も持っていたので、お願いした。
ある時娘の一人が、肩も出さず、胸元がロウカットではないドレスを着てダンス会場へデートと行った。普段非常にリベラルで知られる女の子が近づいてきて、娘のドレスを褒め、淑女のようで羨ましい、と言った。娘は一瞬嫌味かと思ったが、彼女は続けて、「ストラップレスで、いまにも胸があらわになりそうな、丈の短い自分のこのドレスを恥じるわ」、と言ったそうである。
まだ十代であまりにも挑発的なドレス(芸能人が着るような)は、子供達も非常に着心地が悪いというのが本音だったのだろう。子供は意外に保守的で控えめでいたい時期もある。そうしたドレスを直してもっと十代にふさわしい物に作り変えて欲しいと親御さんたちからよく依頼された。ウェディングガウンまでも修整を依頼されたことがある。つまり私達だけが特に厳しい、というのではなかった。 芸能人の服装や一挙一動がお手本の風潮があるから、挑発的なドレスが十代向けにもたくさんある。子供も親も実はそうではないドレスを本当は願っている。
門限にしても定めていた我家だが、ある時、娘の一人が言った。「でも、おかあさん、よそでは、3時くらいまでテレビで映画を観たりして寝るのが遅いのに、何故うちはうるさいの? よそでは門限なんてあってもないのよ。」 そうきたか、と私は答えた。 「うちはヨソではないからよ。それに深夜になればなるほど、怖ろしいことがたびたび起こるものよ。門限は、貴女を守るため、と考えてちょうだい。 うちはヨソじゃないのを忘れないでね。」 とまるで「狼と七匹の子ヤギ」の母ヤギのごとく答えたら、娘は言い返しもせずに、一件落着した。
続きは明日