『恋人はシティーハンター』
ジャンプ作品において冴羽獠は、ディープな女性ファン達を最も多く惹き付けた主人公の一人と言って良いだろう。
証拠物件としては、ジャンプコミックス巻末のファンレターを見てほしい。
この度の“美女”・冬野葉子は、そんな女性ファンを投影したような人物。
都会のヒーロー・シティーハンターに一目会おうと夢抱くジャーナリスト。
葉子(と自分)の安全を守るため、正体を隠してトラブルシューティングに勤しむ獠は、まるで変身ヒーローのよう。
獠自身、正体を明かすべきか揺れるが、主に葉子の正常化バイアスが強すぎるせいで、成り行きはこじれるばかり。
このエピソードは他の回より一層、動的なギャグシーンと、静的なシリアスシーンとの乖離が激しい。
こちら読者としては、ドタバタとした騒動に大笑いすると同時に、『CH』世界は本来一般人とは相容れない“死”が隣にある場なのだと再確認させられる。
最終的には葉子も、獠たちの本意を受け入れ、“彼”を自分の心の中だけに秘めると決める。
憧れを捨てた彼女は、代わりに理解を得たのである。
それでは。また次回。