好事家の世迷言。

調べたがり屋の生存報告。シティーハンターとADV全般の話題が主。※只今、家族の介護問題が発生中です。あしからず。

絶望の郷。

2012-01-30 | 物語全般
『1984年』(byジョージ・オーウェル)、読了。

世間で大ヒットを飛ばした村上春樹氏の『1Q84』……の、(タイトルの)元ネタ。
タイトルこそ「1984年」だが、この作品は1949年に出版されているので、
本質としては未来小説に当たる。
もしも現代でリメイクしたら、「2084年」くらい先の世界になるんじゃなかろうか。

内容はズバリ、いわゆるデストピア(ユートピアの逆)。
「オセアニア」「ユーラシア」「イースタシア」の三つに分断された世界は
どこも、完全に思想統制された独裁国家。
人々は常に戦争状態に駆り立てられ、品不足に苦しみ続けている。
どこかのあの国を思わせるような、そうでないような。

そんな世界に疑問を抱く主人公は、出会った恋人と共に、反政府活動に密かに挑む。
敢えてオチをバラしてしまうが、主人公は結局、政府に屈服する事になる。
この点だけを挙げれば、コレはバッドエンドの話だろう。

けれど。心の底から説得され、洗脳された主人公の最後の様子は、
むしろ晴れやかにさえ見えるから、何とも不思議だ。
そう思ってしまうのは、主人公の住む世界と、この私たちの世界とに、
どことなく近い物を感じるからかもしれない。

街のどこに行っても監視カメラが付いて回る事。
表現の規制によって昔ながらの語彙は減らされつつある事。
マスコミの偏向報道は決して否定できない事。
世界中での戦争が全て無くなる事はないだろう事。
まさしく今のこの国と同じじゃないかと。

書かれた時代が時代のため、出てくる機械などの描写は流石に古いが、
いろいろ考えさせられた一冊だった。
付録として書かれた「ニュースピーク(新語法)の諸原理」も結構面白かったです。
英語研究懐かしかった。

それでは。また次回。

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