さよならは別れの言葉じゃなくて
再び逢うための遠い約束
薬師丸ひろ子嬢が「セーラー服と機関銃」として歌い、
作曲した来生たかお氏が「夢の途中」として歌った曲の
出だしの歌詞です。
名言(名歌詞!?)ではないでしょうか。
友人が先日歯医者さんに行きました。何年ぶりかに歯石をとろうと思いついたのです。
自宅の1階を診察室にした個人病院でしたから
玄関を入るとすぐ待合室。
そこに足を踏み入れるやいなや、受付のお姉さんから
「こんにちわ!」
と声をかけられ、友人は戸惑ったそうです。
「あ、ども、こんにち・・・むにゃむにゃ」
考えてみたら、歯医者さんには子どもも来るしお年寄りも来るし、
“痛くて大っ嫌いな歯医者にきてしまったぁ~”
というような不安とも諦めともつかぬ思いを払拭するためにも
明るいお出迎えは必要なのかもしれません。
その友人によると、受付のお姉さんは、治療を終えて帰る患者さんに対しても
「さようなら!」
と声をかけるんだそうです。
あら何ともいい話じゃない、と私が云うと友人は
「とんでもない!」と云います。
理由をきくと、友人にとって「さようなら」ということばを交わし合う日常がないんだと。
「さようなら」は、子どものころ「先生さよなら、みなさんさよなら」と云って以来、
そこに置いてきたんだと。
いまは別れるときは「じゃ、ど~も」とか「おつかれ~」くらいしか云わないと。
改めて、しかも病院の受付という初対面の方から親しげに
「さようなら」なんて云われるとドギマギしてどうすりゃいいんだと。
私は大爆笑しましたが、友人は大まじめ。
治療をしている間も、診察室の向こうから患者さんに「さようなら」と声をかける
受付の方の声がきこえてきて、
自分にも帰るときに「さようなら」と声をかけてくるんだろうか、
そうしたら自分はどう返せばいいんだろうか、
「さようなら」なんて絶対にいえやしない、
困った困った、どうしよう・・・
とずっと考えていて、おかげで歯石除去の痛みはほとんど感じなかったそうです(^^)
で、結局どうだったの?
と私がたずねると、やはり帰り際に声をかけられたそうです。
「さようなら」
で、何て云ったの?
ときくと、やはりどうしても「さようなら」とは返せず、
「あ、ども、むにゃむにゃ」
と云ってしまったそうです。
ちなみに友人は男性。男の人には云いにくいことばなのかもしれないですね、「さようなら」。
女性には「じゃあね、さよなら」なんて、そんなに抵抗ないと思いますが。
でも改めて考えてみると、意外に「さようなら」ということばは
最近あまり使ってないことにも気づきます。
「さようなら」の語源は、「左様ならば」です。
それならばと、柔らかくお暇するきっかけのことばだと思えます。
そうゆう風に考えると、また冒頭の歌詞が鮮やかに頭に浮かんでくるのです。
さよならは別れの言葉じゃなくて
再び逢うまでの遠い約束
作詞は来生えつこ氏。すばらしい。