こもれび

悩み多き毎日。ストレス多き人生。でも、前向きに生きていきたい。だから、自然体で・・・

水月さま

2007年07月01日 | Weblog

北鎌倉駅のすぐ側に東慶寺があります。四季折々の花で人々に愛されていますが、ここに知る人ぞ知る「水月観音菩薩像」が安置されています。

水辺に座して、水面に映る月を眺める姿を表しているところから水月観音様と呼ばれていて、そのお姿の前に座るだけでなぜか心が安らぐような気がします。

実際、水月様は過去600年にわたり、このお寺に駆け込んできた女たちの苦悩を包み込んできたのです。そう、東慶寺は開山以来、明治6年に寺法が裁判所に引き継がれ、女性も離婚の申し立てができるようになるまで、「駆け込み寺」として多くの女たちを受け入れてきたのです。

その昔、「三行り半」さえ突きつければ、夫は妻を簡単に離縁できました。でも、妻の方はたとえ虐待されていても夫から離縁状をもらわない限り、死ぬ以外に別れる道はありませんでした。そんな時代、「駆け込み寺」は女たちにとって最後の救いだったのです。

現在は、この東慶寺境内で結婚式をするカップルもあるそうで、時代はずいぶんと変わりましたが、DV法ができるなど、今でも夫からの暴力に苦しんでいる女性は少なくないようです。お寺の方の話では、かつての駆け込み寺の名残で、今でも悩みを抱えた女性たちが時折このお寺にやってくるそうですが、寺法が無い以上、今は、シェルターを紹介するしか助けてあげる方法がないということでした。

時代は変わっても、女性の涙の原因は引き継がれてしまっているようで切ない思いをしました。皆が、水月様のように穏やかで柔和な気持ちで生きていけるようにと祈らずにはいられません。

紫陽花が見事な色合いを見せてくれている中、小林秀雄、西田幾多郎、和辻哲郎などそうそうたる人々がひっそりと眠る墓苑には、初夏の風が気持ちよく吹き渡っていました。

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