『ナイチンゲールと赤いバラ』～命を吸い取った赤いバラ

オスカー・ワイルドの童話といったら最も読まれているのが『幸福な王子』でしょう。ワイルドの童話は文章に修飾が多く、子どもが読むと言うよりも大人が楽しめるような物語が多いように思われます。その中でも『ナイチンゲールとバラの花』はあまり小さい子どもに読ませるのはどうかな？と思わせる物語です。

貧乏な学生が思いを寄せてる女性から「赤いバラを持ってきたらダンスの相手をしえあげる」と言われましたが、庭には赤いバラはおろかバラは1本も咲いていません。悲嘆にくれていると、それを聞いていたナイチンゲールが眠っていたバラの樹を起こし花を咲かせてくれと頼みます。それには、ナイチンゲールの胸に刺を挿して胸の血を薔薇に吸わせなければなりません。

ナイチンゲールの命と引き換えに咲いた真っ赤なバラ。学生は嬉しくなってバラを持って彼女のところへ行きますが、彼女は相手にもしてくれず、失望した学生はバラの花を通りに投げ捨ててしまいます。

ナイチンゲールは毎晩恋の歌を歌いながらも本当の恋を知りません。命がけの恋に憧れていました。しかし現実はたとえ命をかけたとしても報われずに終わってしまうこともあるのだと、なんともやりきれない気持ちにさせられる話です。それでもワイルドの醸し出す世界は幻想的で美しく魅了させられてしまいます。

	幸福な王子―ワイルド童話全集 (新潮文庫)
	クリエーター情報なし
	新潮社